Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第50話

 マルメルにハチの巣にされあっさりと沈んだレラナイトを見てヨシナリはほっと胸を撫で下ろした。 
 レラナイトの取りそうな行動に関しては数パターン考えており、その内の一つが当たっていた事もあってその安堵は強い。

 ヨシナリのレラナイトという人物への分析は概ね当たっていた。
 可能な限り苦労せずに上に登りたい。 支配欲が強く、無意識に他人を下につけたがる。
 他人を見下す事に強い執着。 それに伴って下に見ている相手に対しての寛容性に乏しい。

 自己を高めたいというよりは自己を大きく見せて一目置かれたいといった自己顕示欲が強い傾向にある。
 それが前回の態度、会話でヨシナリが抱いたレラナイトの人物像だ。
 後はそこからどういった行動を取るのかを逆算すればいい。

 後は他のメンバーの装備との兼ね合いだ。 
 レラナイトは一人だけソルジャーⅡ型なので、機動力に偏ったビルドであった場合は足の遅い味方が多いなら高い確率で単独行動を取る。 そうでない場合はアクセサリーのように手下を引き連れていただろう。
 
 理由は単純で前者であるならスペック差で味方が随伴できないのでかえって邪魔になるからだ。
 後者であるならそうでもないだろうが、可能性は低いとヨシナリは考えていた。
 他人を添え物扱いしているような男が見下している相手と肩を並べて戦うなんて真似はまずしないからだ。

 加えて自分を大きく見せたがる性格を加味すればレラナイトの取る行動は「部下に探索させ自分は一人で目立つ位置での高みの見物」だ。 ふわわを見つければ真っ先に仕留めに行っただろうが、ヨシナリ達に関して――特にマルメルを見下していたので警戒しておらず、仕掛けるならふわわに意識を向けさせた上での奇襲が最も勝率の高い手だった。 

 他にもいくつかパターンを考えてはいたのだが、可能性が最も高い動きが的中したので変なアドリブは必要なかったようだ。 ステルス装備のふわわに戦場の攪乱と囮を任せ、敵を集結させたタイミングで孤立したレラナイトを二人で奇襲。 最初の挙動でレラナイトの技量はそこまで高くないと判断し、狙撃で仕掛けて動きを誘導。 後は逃げた先で待ち受けていたマルメルがとどめを刺すといった流れだ。

 スペックは上だが対弾性能はⅠ型とそう変わらないので自分達の携行武器でも充分に仕留められる。
 上手く行き過ぎて怖いぐらいだったが、相手の馬鹿さ加減に救われた部分も大きいので運もあった。
 次はここまで上手く行かないだろうなと内心で気持ちを引き締める。 

 それにまだ戦いは終わっていない。 
 一番厄介な相手を始末したが、烏合の衆とはいえ数はまだまだ残っているので油断は禁物だ。
 
 「マルメル。 ふわわさんの所に行くぞ」
 「おぅ、今行く」

 マルメルはレラナイトの機体の残骸から持っていたエネルギーライフルを引きはがしている所だった。
 
 「それ使えるのか?」
 「マガジン式だったし行ける――あー、ダメだ。 互換性がないってエラー吐いてる」
 「一応、Ⅱ型の専用装備みたいだし無理っぽいな」

 武器にも互換性ってあるんだなと思いながら予定通り、ビルの隙間を縫うように移動。
 少し離れた所で派手に撃ちまくっている機体がいるらしく銃声が途切れない。
 
 「やられてないのは一発で分かるな」
 「あぁ、足止めを指示してたんだけど、あの様子じゃ積極的に狩りに行ってるな」

 元々、ふわわにスカウトが集中していたのは彼女の突出した実力が注目を集めていたからだ。
 実際、レラナイトもヨシナリ達をそこまでの脅威と考えておらず、ふわわのおこぼれで勝っているチーム。 認識としてはそんな所だろう。 それ故にあっさりと脱落したのは皮肉な話ではあったが。

 戦闘の起こっているであろう場所に近づくにつれてあちこちに最小のダメージで撃破されたトルーパーの残骸が転がっている。 

 「二、三、四、五、六。 うわ、もう六機もやられてるぞ」

 最初の奇襲で既に六機撃破しているのだ。 合計で一ダース撃破している事になる。
 流石にここまでやるとは思っていなかったのでヨシナリも絶句していた。
 確かに彼女にはアドバイスをしておいたが――

 「いや、あの人マジで化け物かよ」
 「本人の前で言うなよ。 気にしてるかもしれないからな」

 マルメルを窘めつつ大破した機体を見ると頭部に横一文字の切り傷。
 初手で視界を潰されて胸部――コックピット部分にダガーが突き刺さっている。
 他の機体も似たような物で膝裏を切られて機動力を封じられた上で急所を一突きにされていた機体、特に損傷はなくコックピット部分をブレードで貫かれてビルに縫い留められている機体とやられ方を見れば瞬殺されたのは疑いようがない。 

 加えて武器の損耗を抑える為か撃破された機体に付いている鞘――要はダガーなどを納めるケースが空になっている。 恐らく、撃破した敵が近接武器を持っていた場合は奪って利用していたのだろう。
 改めてとんでもない強さだとヨシナリはふわわの強さに震えた。

 「これ、もう終わるんじゃないか」
  
 マルメルのいう通り、あちこちに転がっている残骸とさっき撃破したレラナイトを合わせればもう十三機撃破している事になる。 敵はほぼ全滅しているとみていい。
 
 「感じから残りはランク高めの連中だけか」
 「だろうな」

 見た感じ、数を減らす事を優先して仕留めやすい機体から順番に狙ったといった印象だった。
 
 『クソクソ! レラナイトの野郎! 何が囲めば楽勝だ! ふざけんな! あんなのアリか――』

 少し離れたビルの陰から突撃銃を乱射しながら飛び出した機体があった。
 パイロットは混乱しているのか焦燥をありありと浮かべながら敵がいるであろう方向へと撃ちまくっているが次の瞬間、頭部に飛んできたダガーが突き刺さり機体が大きく仰け反る。

 「あー……」
 
 マルメルがそう呟いたと同時に今度はブレードが飛んできて胴体を貫通。
 敵機体はそのまま昆虫の標本か何かのように近くのビルに縫い留められた。
 コックピット部分を貫かれているので即死だ。 

 ヨシナリはそっと近くのビルに登って周囲を確認すると残りの一機がふわわの機体と対峙している姿が見えた。 ふわわの機体は無傷で両手にダガーを持っている。
 対する相手は大型拳銃を撃とうとしていたが、もう撃ち尽くしたのかガチガチと無慈悲な金属音しか聞こえない。 覚悟を決めたのか敵機は拳銃を投げ捨てるとダガーを抜いて突撃。

 それで終わりだった。 
 ふわわの機体は敵の攻撃をあっさりと掻い潜り、その胴体に深々とダガーを突き立てる。
 敵機はビクリと大きく痙攣し、力を失ってそのままだらりと崩れ落ちた。
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