Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第57話

 マルメルのシールドが敵の銃弾を弾き、戦場を切り裂くように突っ込む。
 
 「っしゃぁ抜けた!」

 それにより密集して弾幕を張っていた敵が僅かな時間無防備となる。
 できた隙を見逃さず、ヨシナリは狙撃銃で一機の胴体を撃ち抜いて撃破。
 トルーパーは急所が胴体なので頭を狙っても即死は狙えない。 昔やったゲームの癖でついついヘッドショットを狙ってしまうが、気を付けないと駄目だなと自身に言い聞かせる。

 そうこうしている内にマルメルが崩れた敵をハチの巣にし、最後に残った一機はふわわが細切れにしていた。 エネルギーブレードは随分と気に入ったようで嬉々として敵機を切り刻む。
 敵機の全滅で戦闘が終了し、リザルトと報酬が表示される。 

 『あぁ、クッソやられたやられた。 戦闘おつかれっした! またよろしく』
 「こちらこそどうもでした! またよろしく!」 

 敵のリーダーが挨拶してきたのでヨシナリは挨拶を返してホームへと戻る。
 
 「いやぁ、今のは良かったんじゃないか?」
 「そやね。 マルメル君、ナイス囮!」
 
 先に戻っていたマルメルとふわわがさっきの戦闘の感想戦をしていた。
 ここ最近は来るイベントに備えて連携強化の為にユニオン戦をメインで行っており、終わった後は全員でリプレイ映像を見直してあれこれ言い合っている。

 今回は三対三でフィールドは廃墟の市街地。
 敵は三機とも突撃銃をメインで大楯や散弾銃を装備しており、中~近距離戦仕様だった。
 市街地である事を最大限に利用し、常に遮蔽物へと身を隠して堅実な戦いをしている。

 散って各個撃破は狙わず、固まってお互いを守り合う点もヨシナリとしては好感の持てるチームだった。 ただ、それ故に崩すのはそう難しくない相手でもある。
 やり方はシンプルでマルメルが両肩のシールドを全開にして突撃。 気を引きつつ射線から敵の位置の把握と意識を集めつつ、狙撃しやすい場所へと誘導。

 釣りだされた機体をヨシナリが狙撃で仕留め、撃破された事によって発生した動揺の間隙を突く形で隠れていたふわわが強襲。 最後に反転したマルメルが締めるといった流れだった。
 ヨシナリ達、星座盤は戦闘における得意分野がしっかりと別れているのでこういった役割分担がやり易い事も大きいが現在十戦十勝と負けなしなのは素直に凄いと思える戦績だ。

 相手との相性が良かった事もあるが、ヨシナリはそろそろ来るだろうなと思っていた。
 世の中、勝ちすぎると目立ってしまうのが常だ。 
 それが何を意味するのか? 答えは彼の元に来たメール受信の通知にあった。

 内容はユニオン戦のお誘いだ。 相手は――ランクⅢユニオン『栄光《グローリー》』
 Ⅲが現在の最高ランクだ。 昇格には一定以上の勝利数と資産が必要なので、一つ上げるだけでも結構な手間暇がかかる。 少なくともヨシナリ達のような少数ユニオンではまず到達できない領域だった。

 内容は模擬戦のお誘いだ。 どうも『栄光』は他所と積極的に模擬戦、ユニオン戦を行って有力なプレイヤーの情報を集めつつ、集団戦のノウハウを得ようとしている様だ。
 ランクⅢまで行くだけあって人員も千に届こうとしている。 広く募集しているので入るのが簡単な事もあって次々と人が入ってくるようだ。 加えてリーダーがAランクと言うのも大きい。

 強者はそれだけで人を集めやすい。 集めるだけで維持するのには別の資質が必要ではあるが、この人数を維持できている時点でそちらに関しても問題はないだろう。 
 文面の最後には受けてくれるなら謝礼を用意するとの事。 

 ――ふーむ。

 ヨシナリはどうしたものかと考える。 
 
 「――と、いう話が来たんだけどどうする?」

 こういうのは一人で決めると後で揉める元になるので、さっさと開示して意見を求めるのが成功だ。
 報連相は何処の世界でも重要。 

 「ふーん? ウチは時間が合うならいいよ」
 「受けるだけで何かくれるんだろ? 模擬戦だし失うものがないならいいんじゃないか?」

 尋ねてみるとふわわもマルメルもあっさりとそう答えた。
 可視化されたウインドウを眺めながらマルメルはうーんと首を捻る。

 「にしても上位ユニオン様がウチみたいな弱小にわざわざ報酬付きで声をかけるとは何を考えているのやら……」
 「そこそこ勝ってきてるし、生意気だから分からせようとしてるんじゃない?」
 「マジかよ。 俺達実力差を見せつけられちゃうのかぁ」

 特に難色を示すという事はないようなので受けても問題はなさそうだ。
 ヨシナリとしても同ランク帯ではなく格上との戦闘経験は積んでおきたいので、失う物がないのなら胸を借りるつもりで挑むのもいいだろうと思っていた。

 「取り合えず、受ける方向でいい感じ?」

 ヨシナリが確認の為にそう尋ねるとマルメルもふわわも特に異論はないようだ。
 
 「いやぁ、トップクラスのユニオンと戦るのは初めてだから燃えるねぇ。 ウチとしてはちょっと期待しちゃうなぁ」
 「俺としては鼻っ柱圧し折って気持ちよくなりたいから勝ちに行きたいな」

 理由はどうあれやる気になっているなら断る理由はない。
 ヨシナリはそのまま受けると返事を送り、模擬戦を行う流れとなったが――

 「……フットワーク軽いな」

 送ったら即座に返事が返ってきた。 とにかく早い。
 そして内容も可能であれば今すぐとこちらも早かった。

 「――って返ってきたけどどうする?」
 「はや。 今からかよ」
 「いいんじゃない? ちょうどウチらも手が空いてるしいっちょやってやりますか!」

 僅か数回の遣り取りで会う事になったヨシナリ達は上位ユニオン『栄光』のホームへと足を運ぶ事となった。 



 「ふわぁ、しゅごい」
 「流石は上位ユニオン。 金持ってるなぁ」

 二人の反応も当然でヨシナリ達が移動した先は巨大なエントランス。
 イメージとしては商業ビルが近いだろう。 上を見上げれば吹き抜けになっている高い天井と移動しているエレベーターらしきものが見え、あちこちを無数のアバターが行き来している。

 自分達の一室しかないホームを思い出して少しだけ悲しい気持ちになった。
 
 ――機体の新調が終わったら窓ぐらいつけよう。

 せめて多少は景観を良くしよう。 
 そんな事を考えながら受付に呼ばれた事を伝えると大型のエレベーターで最上階へと向かうように促された。
 
 「何か社長室とかありそうな雰囲気だな」
 「あっはっは、ウチら面接にでもいくみたいやね~」

 そんな和やかな会話をしながらエレベーターは最上階へと辿り着いた。
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