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第70話
ここからが勝負だ。
ヨシナリは突撃銃のマガジンを交換しながら間合いを取った後に構える。
ここまではイメージ通り。 ふわわ打倒の鍵は彼女の長所を可能な限り殺す事にある。
近接に特化したスペシャリスト。 それがヨシナリのふわわに対する評価だ。
裏を返せば彼女にはそれしかない。 つまり彼女と同じ土俵にさえ上がらなければ脅威度は三割から四割は落ちる。 そうなればヨシナリにも充分に勝ちの目はあった。
自らの武器に視線を落とす。
エネルギー、実体弾対応の突撃銃。 名称は多目的突撃銃『アノマリー』。
突撃銃と銘打っているが銃身の延長機能が付いているので狙撃銃としても扱える汎用性の高い武器だ。
色々盛り込んでいるお陰でかなり高かったが、ふわわをぶちのめせるなら安い買い物だと思っていたので気にならない。 センサーも視界がゼロでも動体、熱源反応を探れる高感度の物を詰んでいるので、居場所も完全に捉えている。 クレイモアでバラバラになってくれていれば楽だったが、彼女はそんな甘い相手ではない。
だから、囮を使った狙撃、ビル爆破を撒き餌に自身の位置を捕捉させ、キルゾーンに誘い込んだ。
クレイモア、粉塵、突撃銃の斉射と三段構えの罠を張った。
これはこの勝負におけるヨシナリが立てた策の集大成といえる。
――これで終わりだ!
フルオートに変えて全弾をばら撒く。 この距離で外しようがない。
ヨシナリが放った無数の弾丸がふわわの機体をバラバラに――しなかった。
「――は?」
本来なら銃弾が機体を食い破る音が聞こえるはずなのにヨシナリの機体のセンサーが拾ったのはキンキンと金属が何かを弾く音だった。 粉塵が切り裂かれ音の正体が現れる。
当然ながらふわわの機体だ。 クレイモアを躱しきれなかったのかあちこちに被弾の跡があり、特に頭部は大きく抉れており、センサー類の大半が死んでいる事が窺える。
加えて普段に比べて動きが遅いのは足にも被弾しているからだろう。
それでもヨシナリの虚を完全に付いた動きは彼の知覚を大きく上回った。
ふわわは片手に柄で連結したブレードを持っており、手首を回転させる事で銃弾を叩き落としたのだ。
そして銃撃の発射地点から彼の位置を割り出した。
――ざけんな!
以前に敗北した時も狙撃を切り払われるといった神業を見せられて呆然としたが、流石に二度目となると耐性が付く。 即座に立て直し、弾丸をばら撒きながらエネルギーを充填。
この武器最大の利点は撃ち分けができる他、実体弾を使用している間にエネルギーの充填を行える事でエネルギー兵器の欠点でもある再発射の隙を消せることにある。
代償に冷却装置を内蔵しているので無駄に大きくなっており、取り回しにやや難があったが些細な事だ。 このギリギリの勝負の際で思考を止めて棒立ちになった奴から負ける。
何故ならそいつは勝負を投げて結果を静観する事を意識、無意識の違いこそあれ選んだからだ。
前回戦ったあの時、ヨシナリは僅かな時間とは言え、静観を選んだからこそ敗北した。
そう、あの瞬間に自分は勝負を投げたのだ。 思い返すと自分で自分を殴りたくなる。
俺はこのゲームを真剣にやって楽しんでいると自負していた。 その事実は彼のプライドを随分と傷つけていたのだ。 だから、彼はふわわとの再戦にこだわり、意地でも叩きのめす事で失ったプライドを取り戻し、同時に腑抜けた自分を殺して新しいステージに進める。
そんな事を考えていた。 だから――
――ここで負ける訳にはいかない。
通常弾の斬弾がゼロ。 エネルギー弾はチャージは間に合わない。
ヨシナリは諦めてアノマリーを投げ捨てると予備にと残していた腰にマウントしていた短機関銃を抜くが、まだ撃たない。 焦ってばら撒いても弾かれて終わる。
タイミングを見極めろ。 ふわわの機体は足をやられていて十全に長所である機動力を活かせない。
動きのクオリティは数割落ちている。 見切れるはずだ。
今の自身の機体、装備、そして何より仲間として彼女の動きを見て来た俺なら絶対に見切れる。
間合いに入った瞬間、ふわわはどうするか? 彼女は事、近接戦においては非常に合理的だ。
最短で急所を狙ってくる。
初期に首や手足を狙ってきていたのはそれが人体にとっての急所だったからだ。
彼女の近接スキルはこのゲーム用に最適化が進み、トルーパーを即座に機能停止させる事に特化しつつあった。 加えてセンサー系の破損により、視野も狭窄、機動性も落ちた現状では武器の持ち代えはない。 銃弾を弾いたブレードでフィニッシュまで持って行く。
プラス、彼女は長物をあまり好まない。
合理的であればある程に不確定な要素を嫌う。 つまり、可能な限り慣れた得物で仕留めに行く。
間合いに入る直前に彼女はブレードの連結を外す。 ほら来た。
一撃目。 左肩からの袈裟に両断。 スラスターを噴かして後退して躱す。
二撃目。 右脇腹を斜め下から両断。 踏み込みが甘い。
逆に踏み込んで左腕でふわわの機体の右腕を掴んで止める。
次、左のブレードを手の中で回転させての斬撃だが、ヨシナリの方が一手早い。
突き刺すように銃口を胴体に押し付け、トリガーを引く。
「俺の勝ちだぁ!」
勝利を確信しての宣言。
事実、次の瞬間に銃口から吐き出された銃弾はふわわの機体を食い破り一撃で破壊するだろう。 ほぼゼロ距離なので重装甲の機体であろうとも間違いなく大破する。
やった。 勝った、これが新生した俺の幕開けだ!
瞬間、ふわわの機体の胴体部分の一部が展開。 無数の穴が見える。
違う。 穴ではない。 これは発射機構――
「クソ、そんなのアリかよ――」
正体を悟ったヨシナリは思わず理不尽を嘆く。
無数の銃弾がふわわの機体を貫いたと同時にふわわの機体から飛び出したニードルがヨシナリの機体を貫いた。 ヨシナリ、ふわわの両機体は耐久の限界を超えたダメージを受けて同時に爆散。
「え? これどうなった? どっちが勝ったんだ??」
見ていたマルメルは慌ててリザルトを確認する。
そこに表示されていたのはドロー。 つまり引き分けだった。
振り返ると消耗しきったヨシナリと上機嫌なふわわのアバターが戻ってくる。
「いやぁ、ギリギリやったわぁ。 ヨシナリ君やるなぁ!」
「はは、そりゃどうも。 あれだけやってドローかよ……マジかぁ……」
アバター越しでも彼が死力を尽くした事は明らかでふらふらと力なく椅子に座った。
ヨシナリは突撃銃のマガジンを交換しながら間合いを取った後に構える。
ここまではイメージ通り。 ふわわ打倒の鍵は彼女の長所を可能な限り殺す事にある。
近接に特化したスペシャリスト。 それがヨシナリのふわわに対する評価だ。
裏を返せば彼女にはそれしかない。 つまり彼女と同じ土俵にさえ上がらなければ脅威度は三割から四割は落ちる。 そうなればヨシナリにも充分に勝ちの目はあった。
自らの武器に視線を落とす。
エネルギー、実体弾対応の突撃銃。 名称は多目的突撃銃『アノマリー』。
突撃銃と銘打っているが銃身の延長機能が付いているので狙撃銃としても扱える汎用性の高い武器だ。
色々盛り込んでいるお陰でかなり高かったが、ふわわをぶちのめせるなら安い買い物だと思っていたので気にならない。 センサーも視界がゼロでも動体、熱源反応を探れる高感度の物を詰んでいるので、居場所も完全に捉えている。 クレイモアでバラバラになってくれていれば楽だったが、彼女はそんな甘い相手ではない。
だから、囮を使った狙撃、ビル爆破を撒き餌に自身の位置を捕捉させ、キルゾーンに誘い込んだ。
クレイモア、粉塵、突撃銃の斉射と三段構えの罠を張った。
これはこの勝負におけるヨシナリが立てた策の集大成といえる。
――これで終わりだ!
フルオートに変えて全弾をばら撒く。 この距離で外しようがない。
ヨシナリが放った無数の弾丸がふわわの機体をバラバラに――しなかった。
「――は?」
本来なら銃弾が機体を食い破る音が聞こえるはずなのにヨシナリの機体のセンサーが拾ったのはキンキンと金属が何かを弾く音だった。 粉塵が切り裂かれ音の正体が現れる。
当然ながらふわわの機体だ。 クレイモアを躱しきれなかったのかあちこちに被弾の跡があり、特に頭部は大きく抉れており、センサー類の大半が死んでいる事が窺える。
加えて普段に比べて動きが遅いのは足にも被弾しているからだろう。
それでもヨシナリの虚を完全に付いた動きは彼の知覚を大きく上回った。
ふわわは片手に柄で連結したブレードを持っており、手首を回転させる事で銃弾を叩き落としたのだ。
そして銃撃の発射地点から彼の位置を割り出した。
――ざけんな!
以前に敗北した時も狙撃を切り払われるといった神業を見せられて呆然としたが、流石に二度目となると耐性が付く。 即座に立て直し、弾丸をばら撒きながらエネルギーを充填。
この武器最大の利点は撃ち分けができる他、実体弾を使用している間にエネルギーの充填を行える事でエネルギー兵器の欠点でもある再発射の隙を消せることにある。
代償に冷却装置を内蔵しているので無駄に大きくなっており、取り回しにやや難があったが些細な事だ。 このギリギリの勝負の際で思考を止めて棒立ちになった奴から負ける。
何故ならそいつは勝負を投げて結果を静観する事を意識、無意識の違いこそあれ選んだからだ。
前回戦ったあの時、ヨシナリは僅かな時間とは言え、静観を選んだからこそ敗北した。
そう、あの瞬間に自分は勝負を投げたのだ。 思い返すと自分で自分を殴りたくなる。
俺はこのゲームを真剣にやって楽しんでいると自負していた。 その事実は彼のプライドを随分と傷つけていたのだ。 だから、彼はふわわとの再戦にこだわり、意地でも叩きのめす事で失ったプライドを取り戻し、同時に腑抜けた自分を殺して新しいステージに進める。
そんな事を考えていた。 だから――
――ここで負ける訳にはいかない。
通常弾の斬弾がゼロ。 エネルギー弾はチャージは間に合わない。
ヨシナリは諦めてアノマリーを投げ捨てると予備にと残していた腰にマウントしていた短機関銃を抜くが、まだ撃たない。 焦ってばら撒いても弾かれて終わる。
タイミングを見極めろ。 ふわわの機体は足をやられていて十全に長所である機動力を活かせない。
動きのクオリティは数割落ちている。 見切れるはずだ。
今の自身の機体、装備、そして何より仲間として彼女の動きを見て来た俺なら絶対に見切れる。
間合いに入った瞬間、ふわわはどうするか? 彼女は事、近接戦においては非常に合理的だ。
最短で急所を狙ってくる。
初期に首や手足を狙ってきていたのはそれが人体にとっての急所だったからだ。
彼女の近接スキルはこのゲーム用に最適化が進み、トルーパーを即座に機能停止させる事に特化しつつあった。 加えてセンサー系の破損により、視野も狭窄、機動性も落ちた現状では武器の持ち代えはない。 銃弾を弾いたブレードでフィニッシュまで持って行く。
プラス、彼女は長物をあまり好まない。
合理的であればある程に不確定な要素を嫌う。 つまり、可能な限り慣れた得物で仕留めに行く。
間合いに入る直前に彼女はブレードの連結を外す。 ほら来た。
一撃目。 左肩からの袈裟に両断。 スラスターを噴かして後退して躱す。
二撃目。 右脇腹を斜め下から両断。 踏み込みが甘い。
逆に踏み込んで左腕でふわわの機体の右腕を掴んで止める。
次、左のブレードを手の中で回転させての斬撃だが、ヨシナリの方が一手早い。
突き刺すように銃口を胴体に押し付け、トリガーを引く。
「俺の勝ちだぁ!」
勝利を確信しての宣言。
事実、次の瞬間に銃口から吐き出された銃弾はふわわの機体を食い破り一撃で破壊するだろう。 ほぼゼロ距離なので重装甲の機体であろうとも間違いなく大破する。
やった。 勝った、これが新生した俺の幕開けだ!
瞬間、ふわわの機体の胴体部分の一部が展開。 無数の穴が見える。
違う。 穴ではない。 これは発射機構――
「クソ、そんなのアリかよ――」
正体を悟ったヨシナリは思わず理不尽を嘆く。
無数の銃弾がふわわの機体を貫いたと同時にふわわの機体から飛び出したニードルがヨシナリの機体を貫いた。 ヨシナリ、ふわわの両機体は耐久の限界を超えたダメージを受けて同時に爆散。
「え? これどうなった? どっちが勝ったんだ??」
見ていたマルメルは慌ててリザルトを確認する。
そこに表示されていたのはドロー。 つまり引き分けだった。
振り返ると消耗しきったヨシナリと上機嫌なふわわのアバターが戻ってくる。
「いやぁ、ギリギリやったわぁ。 ヨシナリ君やるなぁ!」
「はは、そりゃどうも。 あれだけやってドローかよ……マジかぁ……」
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