Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第73話

 前回、前々回に培ったノウハウもそうだが、ユニオン機能の実装はかなり大きい。
 下位のプレイヤーに武器やパーツを融通できる仕組みは戦力の底上げに繋がり損害を大きく減らす事に寄与している。 事実、ヨシナリの見た感じ、損耗は前回の一、二割程度に抑えられているように見えた。

 レーダーでプレイヤーの数を見ればそれは一目瞭然でとにかく味方の数が多い。
 
 「やってるねぇ」
 「ちらっと見たけど集団として纏まってきてたね」

 合流したマルメルとふわわは前回とは違う基地の様子に少しだけ驚いていた。
 
 「結構、いい装備持ち込んでるところを見るとユニオン機能をしっかりと活かしてる奴が多いな」
 「ウチやられた後、そのまま抜けたからよく分からないんだけど、そんなに違うん?」
 「前回はこの時点で半数以上が脱落してましたね」
 「はー、かなりしんどかったんやね」
  
 大きいユニオンは何かしら対策を講じているだろうとは思っていたが、ここまでやるとは思っていなかった。
 
 「セントリーガンとか結構、いい値段するだろうにあれだけ用意するとか本気で勝ちに行ってるな」
 「そりゃそうだろうよ。 負けたら次のイベントがこれの復刻に決まるだろうからな。 上位のプレイヤーほど勝ちたいと思ってるんじゃないか?」

 明らかにIやHランクの下級プレイヤーですらエネルギーライフルなど手に入らないはずの装備を揃えている点からも大きな支援を受けている事は明らかだった。

 「そういえばエネルギー系の武器使ってるⅠ型居るけどあれどうやってるんだ?」
 「後でちょっと調べたんだけど変換器って代物があってな。 手の平に仕込むパーツなんだけどそれを噛ませるとエネルギー系の兵装使えるけどクッソ高いから低ランク帯だとまず手に入らない」

 元々、互換性がない機体に無理矢理使わせるので威力も出ないのではっきり言って普通にやっているプレイヤーには買う価値がない代物だ。
 何故ならそれが買えるだけの資産があるならⅡ型に換装した方が早い。

 「ユニオン機能様々だな」

 変換器もそうだがセントリーガンもかなり高額な装備だ。
 持ち込み制限のある代物で一人一基までしか持てない上、設置から起動に時間がかかる、可動範囲が限られているので死角が多いと弱点だらけの代物で対戦ではまず使わなれない。 そんな装備を惜しみなく投入している点からも力の入れ具合が分かる。
  
 「まぁ、他所は他所、ウチはウチだ。 ヨシナリ、俺達は予定通りでいいんだな」
 「あぁ、取り合えず、蟻が来るまでは遠くでチクチク削っとくさ」
 「ウチはしばらく暇かぁ……」
 「心配しなくても後になればそんな事を言ってられなくなりますよ」

 三人は比較的、安全そうで狙撃に向いている場所へと移動する。
 
 「そういや、エネルギーライフルばっかりでランチャーやキャノンはないんだな」
 「アレは燃費が悪すぎるからⅠ型じゃ賄えない」
 「あぁ、なるほど。 ライフルならカートリッジ交換で使えるからか」
 
 特に大出力の武装は背中に大きなジェネレーターやコンデンサーを積まなければならない上、本体にも相応の負担がかかる。 加えて重量も凄まじいのでパンツァータイプでの使用が推奨されるような代物を無理に初心者に持たせてもあまり意味がないと考えた結果だろう。

 それでも適正ランク以上の装備はかなりの効果を上げている。
 防壁を破壊しようと向かってくるエネミーの群れは弾幕によって寄せ付けず、空中のエネミー――特に輸送機や爆撃機は比較的当てやすいので次々と光に射抜かれ、炎を上げながら墜落していく。

 恐らく、当てやすい個体だけを狙えとでも言われているのかもしれない。
 ビルの屋上に陣取っている者達は執拗に蛾のエネミーを狙い続けており、基地に近づけていなかった。
 
 「ヒュー、見たかよ。 また一機撃墜だ! 前回はいいとこなしだったが装備がありゃ楽勝だな」
 「まったくだ。 ユニオン機能最高だな。 流石に今回は勝っただろ」

 あまりにも前回と違いすぎる戦況にそんな気の抜けた事を口にするプレイヤーも多かった。
 ヨシナリは二人を連れて比較的、背の低い建物の屋上へ。 狙撃銃を構えて射撃を開始。
 マルメル、ふわわはその護衛。 近寄ってくるエネミーの対処のみを行う。

 この様子だとそこまで頑張る必要がないので、本番に備えて消耗を抑えるべきだと判断したからだ。
 前回だとこの時点で制空権が抑えられていた状態だったが、今回の空は綺麗なものだった。
 大型の輸送機、爆撃機が基地に近づけないので蜂型のエネミーしか寄ってこない。
 
 その為、かなり余裕をもって対処できるので、基地には僅かな被害しか出ていないのだ。
 ヨシナリ達が参戦した事によって更に余裕が出来ており、戦場にはやや弛緩した空気すら漂っていた。
 
 「前回と比べりゃすっげー楽だな。 もうぼちぼちEランクの連中が入ってくるぞ」

 マルメルがそう呟くと同時にタイマーがゼロになってEランクプレイヤー達が参戦。
 パンツァータイプや高出力なエネルギー兵器を装備した機体の参戦によって火力が数段増し、敵の勢いは更に殺されていく。

 圧倒的。 そう言っても過言ではないほどに優勢だった。
 あまりにも余裕なので一部のプレイヤーは堂々とハンガーに機体を預けてメンテナンスを行っている。
 
 「まぁ、ここまではな」

 ヨシナリは蜂を撃ち落としながらそう呟いた。
 ここまでは装備の質とユニオン機能によってプレイヤー間の連携が強化された事で優勢に進められている。 ただ、問題はこの後だ。

 あの蟻とカタツムリ。 
 このイベントにおいて特に凶悪なあの二種類のエネミーは今の戦力でも撃破は容易ではないだろう。
 裏を返せばその二種が出現するまではこのまま優勢に事が進むだろう。

 撃ち漏らしが基地に入ってくる事も少なく、ヨシナリ以外はほとんどやる事がない状態で、ふわわに至っては露骨に暇そうにしていた。
 
 「ま、このまま終わってくれりゃ最高なんだが、そうもいかないのがこのゲームだよな」
 「まったくだ」

 Dランクプレイヤーの参戦が始まり、同時に敵の動きにも変化があった。
 ヨシナリが最大望遠で前線の方を見ると蜂に混ざって黒い特徴的な個体が向かってきているのが見える。 どうやらお出ましのようだ。

 「マルメル、ふわわさん。 そろそろ出番みたいだ」
 「流石に突っ立ってるのも飽きたし、蟻共に前の借りを返させてもらうぜ」
 「ウチも待ちくたびれたよー。 ここからは好きにしていいんだよね?」
 「はい、ただ――」
 「何かあった時はお互いに助けに入れるように離れすぎない。 ちゃーんと分かってるよー」

 ふわわはじゃあウチはこれでと早々にビルの屋上から飛び降りると街の外縁へと向かっていった。

 「あれ大丈夫か?」
 「まぁ、あの人の事だ。 簡単には落ちないだろ」
 「さて、俺達は前と同じ感じで行きますか。 今回は最後まで残りたいものだな」
 「あぁ、頑張ろうぜ」

 
 前線は上位のエネミー出現に多少は揺らいだが、情報の共有が済んでいる状態なのでそれも僅か。 
 やる事は変わらないと決められた役目に従って無心で敵を屠り続ける。
 上位のプレイヤー達は前回より、遥かに動きやすくなった戦場を縦横無尽飛び回るが一部の者は微かな違和感を感じていた。
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