Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第75話

 死力を尽くせばクリア自体は可能な難易度。
 前回と敵の出現タイミングが違う。
 この二点を踏まえれば見えてくるものがある。 

 恐らくは察しの良い者は気付いているだろうが止める事は出来ず、ましてやこの規模の戦闘を調整・・するなどは物理的に不可能と言っていい。
 
 「つまりどういう事だ?」
 「さっきの繰り返しになるが、要はこのイベント戦って敵の撃破数か味方、基地の損耗率辺りで進行する仕組みなんだよ」

 マルメルの質問にヨシナリは自身の考えを口にする。
 ややあって理解が広がったのか、なるほどと頷いていた。

 「だったら例のカタツムリも早めに出てくるって事か?」
 「俺はそう思っている」
 
 マルメルもヨシナリの言葉になるほどと納得していた。
 ユニオン機能の実装により、低ランクのプレイヤーでも高性能な装備を持ち込めることにより難易度は一気に低下している。 それにより前回、前々回に比べ戦況は優勢のまま推移していた。
 
 敵の出現タイミングの変化による混乱こそあったが、充分に許容できる範囲だ。
 つまり、このままいけば何の問題もなく勝利できる。 誰もがそう確信していた。
 ただ、この運営の悪辣さをある程度理解している者からすればこの状況は不気味以外の何物でもなかったのだ。 恐らく連中はこのまま素直に勝たせてくれない。

 ――何らかの仕込みをしているはずだと。


 彼らの予想――いや、予感は正しかった。
 その証拠に彼らの戦っている戦場の裏では様々な情報が飛び交い、集積されている。
 プレイヤー達に運営と呼ばれているシステムは冷徹に、そして機械的に戦況から判断を行いタスクを実行するかを決定する。 

 PhaseⅠ:『Type:machine gun bee』『Type:bombing moth』
 『Type:assault beetle』『Type:assault stag beetle』投入(実行済)
 Ⅰ-Ⅰ一定数撃破で戦闘能力を上方修正(実行済)
 Ⅰ-Ⅱ一定数撃破で戦闘能力を上方修正Ⅱ(実行済)
 Ⅰ-Ⅲ一定数撃破で上位機種『Type:machine gun beeⅡ』『Type:assault beetleⅡ』投入(未実行)
 Ⅰ-Ⅳ一定数撃破で上位機種『Type:missile moth』『Type:assault stag beetleⅡ』投入(未実行)
 Ⅰ-Ⅴ一定数撃破で戦闘能力を上方修正Ⅲ(未実行)

 PhaseⅠ終了に伴い未実行のタスクは破棄。 PhaseⅡへ移行。
 
 PhaseⅡ:『Type:transfer moth』『Type:cutting mantis』投入(実行済)
 Ⅱ-Ⅰ累計撃破数が一定、または時間経過で『Type:sniping hermit crab』投入(実行済)
 Ⅱ-Ⅱ累計撃破数が一定、または時間経過で『Type:breakthrough caterpillar』投入(実行済)
 Ⅱ-Ⅲ累計撃破数が一定、または時間経過でPhaseⅢへ移行(実行済)
 Ⅱ-Ⅳ累計撃破数が一定で戦闘能力を上方修正Ⅲ(未実行)
 Ⅱ-Ⅴ累計撃破数が一定で戦闘能力を上方修正Ⅳ(未実行)

 PhaseⅠ-Ⅲ以降が未実行によりⅡ-Ⅳ以降は破棄。 PhaseⅢへ移行。

 PhaseⅢ:『Type:soldier ant』投入(実行済)
 Ⅲ-Ⅰ累計撃破数が一定、または時間経過で出現頻度増加(実行済)
 Ⅲ-Ⅱ累計撃破数が一定、または時間経過で出現頻度増加(実行済)
 Ⅲ-Ⅲ累計撃破数が一定、または時間経過で『Type:soldier antⅡ』投入(実行中)
 Ⅲ-Ⅳ累計撃破数が一定で戦闘能力を上方修正Ⅴ(未実行)
 Ⅲ-Ⅴ累計撃破数が一定で戦闘能力を上方修正Ⅵ(未実行)

 システムは実行中のタスクを完了させ、プレイヤー達に新たな苦難を与えるべく戦場を書き換える。

 
 「クソ、出てくるのちょっと早すぎやしないか!?」
 
 前線で戦っているプレイヤーの一人が明らかに早い上位の蟻型エネミーの出現に思わずそう愚痴をこぼす。
 
 「言うなって、恐らくユニオン機能の実装で難易度を上げたか、俺達が優勢に進めた事で何かしらのスイッチを踏んだってところだろうよ」
 「Cランクが来るまでもう少しだ。 俺達だけでも十分やれるってところを見せてやろうぜ」
 「上等、こっちにはキマイラタイプがいるんだ。 早々、簡単にやられてたまるかよ!」
 「槍持ちに気を付けろ。 ガトリング持ちは防壁の上にいる連中が処理してくれるから腹括って白兵戦だ!」

 前倒しで機種変換を行っただけにDランクプレイヤー達の操るキマイラタイプはやや動きが悪かったが、それでも高い機動性と加速力は敵の蟻型エネミーに充分対抗できていた。
 槍による突進攻撃をギリギリの所で躱し、変形しながら背後に回って一撃。

 無理に胴体を狙わずに羽や推進装置を破壊するだけで勝手に墜落するので、急所に当てさえすれば撃破は容易だ。 それでもソルジャータイプでは機動性や旋回性能に差が出るので、目に見えて撃破され始めていた。 前線の者達は下がってしまうと基地への侵入と防壁を守っている者達が狙われるので、意地でも踏みとどまって敵を食い止めなければならない。

 特に防壁を守っている者達がやられると地上から侵攻してくる敵が抑えられなくなる。
 現在、損耗率は三割以下に抑えられている状況なのだ。 意地でも守り抜いてやろう。
 そんな気持ちで彼等は厳しい戦いに身を投じ、死力を尽くして前線で戦い続ける。

 「クッソ、槍持ちの相手きっついなぁ」
 「マジで速いから捉えきれねぇ」

 突撃銃を連射しているプレイヤー達が舌打ちしながらそんな話をする。
 
 「そこまで複雑な挙動はしねぇから、行動を先読みするんだよ」
 「は? そんなんできたら苦労しねぇよ」
 
 プレイヤーの一人は見てろよと敵の只中に突っ込む。
 獲物と捉えたのか蟻型のエネミーが槍を手に突撃。 

 「連中が狙うのは急所であるコックピット部分だ。 だから、こうやって引き付けて――」

 槍がトルーパーを貫く瞬間、片腕に装備されたエネルギー式のシールドでいなし、ダガーを突き立てる。 蟻型エネミーはあっさりと爆散。 成功したプレイヤーは得意げに鼻を鳴らす。

 「どうよ。 俺が対蟻野郎用に編み出したカウンターは」

 彼の動きは見事に敵の挙動を読んでのもので、対処としては完璧に近い。

 ――一対一であったなら。

 次の瞬間、ガトリング砲の集中砲火を浴びてそのプレイヤーは即死した。
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