77 / 865
第77話
データを纏め、作戦を立案したプレイヤーは一見、完璧にデザインされた悪辣なエネミーではあるが、無敵の存在ではないので撃破自体は可能。 次回こそ我々の結束で乗り越え、運営の鼻を明かしてやろうではないかと綴っていた。
大人数を擁しているユニオンは特に対策に力を入れており、この巨大エネミーを何としても仕留めてやろうと大金を投じて準備を行ったのだ。
「よし、射程内に捉えた。 貴重なものだから外れてくれるなよ……」
ソルジャータイプの両肩に乗っている四角い発射機構からミサイルが飛び出す。
ミサイルはカタツムリ型エネミーに到達する前に爆発。
その結果だけを見るなら失敗に見えるかもしれない。 だが、これで良かった。
その爆発は破壊ではなく光を周囲に撒き散らし、それに触れた一部のエネミーがコントロールを失って墜落していく。 そして最も大きな効果はカタツムリの周囲を覆っていたエネルギー兵器を無効化するフィールドが消滅していた事だ。
「っしゃあ! フィールド消えたぞ。 今の内に撃ちまくれ!」
「全弾持って行けやこのくそったれがぁぁぁ!」
「撃って撃って撃ちまくれ!」
「大サービスだ。 腹いっぱいになるまで食え! 食ってくたばれ!」
EMPミサイル。
発射後、設定した位置で自爆して周囲に電子機器を破壊する電磁波を撒き散らす兵器だ。
トルーパーにも割と効果があるので短い期間ではあるが、対戦でも多用されていた。
早々に廃れたのは対EMP用のコーティング素材が安価で販売されていたからだ。
要は性能的に微妙と使う者がいない武装だった。 だが、多種多様な防御機構を無効化するにはこれしかないといった結論を出したプレイヤーは多い。 一応、効果が出なかった時はEMPアンカーといった直接打ち込んで内部から電磁波で焼くといった手段も用意されていたので意地でもこの作戦を成功させようと彼等は準備していたのだ。
トルーパーは全機、対EMP用のコーティングを施しているので何の問題もない。
効果範囲に居た蟻型エネミーは完全停止して墜落、カタツムリは機能停止にこそ至っていないが、エネルギー兵器を無効化するフィールドを始め衝撃波を放つ為の装置も沈黙。 完全に動く的と化していた。
こうなれば巨大エネミーは大きいだけの的になり下がる。
「いやぁ、EMP効くかどうかかなり怪しかったが、まさかここまで効果があるとは思わなかったぜ」
「表面の発射機構は内部に繋がっているだろうから、最悪あれだけでも無効化できれば御の字って考えだったみたいだ」
そう、効かなかった場合も踏まえ、様々なパターンが想定されていた。
第一段階。 コーティングされていた場合、効果がない可能性が高いミサイルで有効かの判断を行う。
効果がなかった場合、剥き出しになっている発射機構が無効化できるかどうかで次以降の流れが変わる。
エネルギー兵器を無効化するフィールドを止められたのならそのまま集中砲火で撃破。
元々、Bランクが参戦している状態を想定していたので、出現が前倒しになった事でややイレギュラーは発生したが概ね予定通りといえる。 仮に通らなかった場合は直接取りついてアンカーを打ち込んで内部から焼くといった犠牲を前提とした無謀な行為が必要となっていた。
先は長い以上、人員の損耗は可能な限り避けたいのでミサイルが通用してくれと祈っている者は多い。
結果としてスムーズに事が運んだので彼らは内心でほっと胸を撫で下ろしながら各々、手持ちの武器を景気よく使用してカタツムリ型エネミーを文字通りハチの巣にしていく。
特にエネルギー兵器はわざわざ無効化するだけあって特に効果が高かった。
高出力のものは貫通すらしている。 最初のミサイルで周囲のエネミーも軒並み沈黙しており、範囲外にいた増援が助けに入るまでに間があったのも大きな追い風となっていた。
Cランクプレイヤー達の猛攻に前回、前々回と基地を壊滅に追いやった巨大エネミーは全身に深い傷を刻まれていく。 やがて内部に深刻な損傷を与えたのかあちこちから煙が上がる。
「よし、よしよしよし。 行ける! こりゃBランク以上の連中が来る前に片が付くな!」
「こいつらさえ仕留めりゃ後は消化試合だ。 一番おいしい所は俺達がいただきだ」
「完全に仕留めるまで油断するな。 俺はこいつがくたばった瞬間に勝利の雄叫びを上げる予定だ」
カタツムリ型エネミーは完全に沈黙し、無防備な姿を晒している。
このままいけば間違いなく勝利できるだろう。 基地が壊滅した直接的な要因はこの巨大エネミーなのだ。 それさえ排除すれば脅威は蟻型エネミーのみとなるので被害を受けたとしても壊滅までは至らないだろう。
だからこそ彼等は勝利を確信していたのだが――
――おかしい。
基地からでも見える半壊したカタツムリ型エネミーを見てヨシナリが思った事だ。
気づかなかったとはいえ、ここまで分かり易い弱点を用意している事に違和感を感じたからだ。
隣のマルメルはいけ、やっちまえと応援しているが、ヨシナリはこれは撃破して大丈夫なのだろうかと少しだけ不安を感じていたのだ。
もちろん根拠はある。 前回と違い、今回は戦力を整え、対策もしっかりと練って参加したプレイヤーが多かっただけあって非常に優勢に事が進んでいた。
その代償なのか敵の出現タイミングが前倒しになっている。 最大の敵であるカタツムリ型エネミーがここまで派手にやられている姿を見れば充分に許容範囲内のイレギュラーといえた。
だからなんだ? 別にいいじゃないか。 前回、前々回と基地が壊滅した原因を処理するんだ。
あいつ等さえいなくなれば後は消化試合で時間まで雑魚を狩り続けるだけでいい。
どこに不安を感じる必要がある? その通りだ。
俺は何に対して不安を――ヨシナリの思考は視線の先で爆散したカタツムリ型エネミーを見て着地した。
「――あ、ヤバい」
思わずそんな言葉が口から漏れた。 前倒し。
そう前倒しになっているだけなのだ。 このイベントは時間経過だけで推移するわけじゃない。
恐らくは撃破数などプレイヤーが特定の条件を突破した場合に次のギミックが動く仕組みなのだ。
つまり、カタツムリ型エネミーがボスではなかった場合、撃破してしまうと――イベントが進んでしまう。
大人数を擁しているユニオンは特に対策に力を入れており、この巨大エネミーを何としても仕留めてやろうと大金を投じて準備を行ったのだ。
「よし、射程内に捉えた。 貴重なものだから外れてくれるなよ……」
ソルジャータイプの両肩に乗っている四角い発射機構からミサイルが飛び出す。
ミサイルはカタツムリ型エネミーに到達する前に爆発。
その結果だけを見るなら失敗に見えるかもしれない。 だが、これで良かった。
その爆発は破壊ではなく光を周囲に撒き散らし、それに触れた一部のエネミーがコントロールを失って墜落していく。 そして最も大きな効果はカタツムリの周囲を覆っていたエネルギー兵器を無効化するフィールドが消滅していた事だ。
「っしゃあ! フィールド消えたぞ。 今の内に撃ちまくれ!」
「全弾持って行けやこのくそったれがぁぁぁ!」
「撃って撃って撃ちまくれ!」
「大サービスだ。 腹いっぱいになるまで食え! 食ってくたばれ!」
EMPミサイル。
発射後、設定した位置で自爆して周囲に電子機器を破壊する電磁波を撒き散らす兵器だ。
トルーパーにも割と効果があるので短い期間ではあるが、対戦でも多用されていた。
早々に廃れたのは対EMP用のコーティング素材が安価で販売されていたからだ。
要は性能的に微妙と使う者がいない武装だった。 だが、多種多様な防御機構を無効化するにはこれしかないといった結論を出したプレイヤーは多い。 一応、効果が出なかった時はEMPアンカーといった直接打ち込んで内部から電磁波で焼くといった手段も用意されていたので意地でもこの作戦を成功させようと彼等は準備していたのだ。
トルーパーは全機、対EMP用のコーティングを施しているので何の問題もない。
効果範囲に居た蟻型エネミーは完全停止して墜落、カタツムリは機能停止にこそ至っていないが、エネルギー兵器を無効化するフィールドを始め衝撃波を放つ為の装置も沈黙。 完全に動く的と化していた。
こうなれば巨大エネミーは大きいだけの的になり下がる。
「いやぁ、EMP効くかどうかかなり怪しかったが、まさかここまで効果があるとは思わなかったぜ」
「表面の発射機構は内部に繋がっているだろうから、最悪あれだけでも無効化できれば御の字って考えだったみたいだ」
そう、効かなかった場合も踏まえ、様々なパターンが想定されていた。
第一段階。 コーティングされていた場合、効果がない可能性が高いミサイルで有効かの判断を行う。
効果がなかった場合、剥き出しになっている発射機構が無効化できるかどうかで次以降の流れが変わる。
エネルギー兵器を無効化するフィールドを止められたのならそのまま集中砲火で撃破。
元々、Bランクが参戦している状態を想定していたので、出現が前倒しになった事でややイレギュラーは発生したが概ね予定通りといえる。 仮に通らなかった場合は直接取りついてアンカーを打ち込んで内部から焼くといった犠牲を前提とした無謀な行為が必要となっていた。
先は長い以上、人員の損耗は可能な限り避けたいのでミサイルが通用してくれと祈っている者は多い。
結果としてスムーズに事が運んだので彼らは内心でほっと胸を撫で下ろしながら各々、手持ちの武器を景気よく使用してカタツムリ型エネミーを文字通りハチの巣にしていく。
特にエネルギー兵器はわざわざ無効化するだけあって特に効果が高かった。
高出力のものは貫通すらしている。 最初のミサイルで周囲のエネミーも軒並み沈黙しており、範囲外にいた増援が助けに入るまでに間があったのも大きな追い風となっていた。
Cランクプレイヤー達の猛攻に前回、前々回と基地を壊滅に追いやった巨大エネミーは全身に深い傷を刻まれていく。 やがて内部に深刻な損傷を与えたのかあちこちから煙が上がる。
「よし、よしよしよし。 行ける! こりゃBランク以上の連中が来る前に片が付くな!」
「こいつらさえ仕留めりゃ後は消化試合だ。 一番おいしい所は俺達がいただきだ」
「完全に仕留めるまで油断するな。 俺はこいつがくたばった瞬間に勝利の雄叫びを上げる予定だ」
カタツムリ型エネミーは完全に沈黙し、無防備な姿を晒している。
このままいけば間違いなく勝利できるだろう。 基地が壊滅した直接的な要因はこの巨大エネミーなのだ。 それさえ排除すれば脅威は蟻型エネミーのみとなるので被害を受けたとしても壊滅までは至らないだろう。
だからこそ彼等は勝利を確信していたのだが――
――おかしい。
基地からでも見える半壊したカタツムリ型エネミーを見てヨシナリが思った事だ。
気づかなかったとはいえ、ここまで分かり易い弱点を用意している事に違和感を感じたからだ。
隣のマルメルはいけ、やっちまえと応援しているが、ヨシナリはこれは撃破して大丈夫なのだろうかと少しだけ不安を感じていたのだ。
もちろん根拠はある。 前回と違い、今回は戦力を整え、対策もしっかりと練って参加したプレイヤーが多かっただけあって非常に優勢に事が進んでいた。
その代償なのか敵の出現タイミングが前倒しになっている。 最大の敵であるカタツムリ型エネミーがここまで派手にやられている姿を見れば充分に許容範囲内のイレギュラーといえた。
だからなんだ? 別にいいじゃないか。 前回、前々回と基地が壊滅した原因を処理するんだ。
あいつ等さえいなくなれば後は消化試合で時間まで雑魚を狩り続けるだけでいい。
どこに不安を感じる必要がある? その通りだ。
俺は何に対して不安を――ヨシナリの思考は視線の先で爆散したカタツムリ型エネミーを見て着地した。
「――あ、ヤバい」
思わずそんな言葉が口から漏れた。 前倒し。
そう前倒しになっているだけなのだ。 このイベントは時間経過だけで推移するわけじゃない。
恐らくは撃破数などプレイヤーが特定の条件を突破した場合に次のギミックが動く仕組みなのだ。
つまり、カタツムリ型エネミーがボスではなかった場合、撃破してしまうと――イベントが進んでしまう。
あなたにおすすめの小説
ホスト異世界へ行く
REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」
え?勇者?
「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」
☆★☆★☆
同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ!
国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!?
しかも元の世界へは帰れないと来た。
よし、分かった。
じゃあ俺はおっさんのヒモになる!
銀髪銀目の異世界ホスト。
勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。
この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。
人誑しで情緒不安定。
モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。
そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ!
※注意※
パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。
可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑
局地戦闘機 飛電の栄光と終焉
みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》
盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。
ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……
始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。
さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった
よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】
皆様の熱い応援、本当にありがとうございます!
ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です!
【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】
電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。
気がついたら異世界召喚。
だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。
52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。
結論――王都の地下下水道に「廃棄」。
玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。
血管年齢は実年齢マイナス20歳。
そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。
だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。
下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。
捨てられた魔道具。
長年魔素を吸い続けた高純度魔石。
そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。
チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。
あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。
汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。
スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。
この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。
魔力は毒である。代謝こそが命である。
軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。
でも、だからこそ――まず1話、読んでください。
【最新情報&著者プロフィール】
代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作!
◆ 2月に待望の【第2巻】刊行!
◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中!
◆ 【コミカライズ企画進行中】!
すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!
森のカフェしっぽっぽ
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。
一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、
猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。
しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。
地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。
ただし、異世界人は地球には来られない。
行き来できるのはサトルだけ。
向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、
頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、
静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、
サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。
仕事に疲れた会社員。
将来に迷う若者。
自信をなくした人。
サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。
そして、棚の影で震えるジル。
怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。
それでも店からは逃げない。
その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。
これは――
福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。
震えながらでも前に立つ者が、
今日も小さく世界をつなぐ。