Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第101話

 仮に一人で出たとしよう。
 予戦はバトルロイヤルのようなので運もあるだろうが隠れてやり過ごせば突破は不可能ではない。
 ただ、そこまでだ。 本戦で確実に詰む。

 そこは充分に理解している。 普通に考えれば諦めるべきなのだが、折角のイベントを諦めるなんて真似は出来ない。 だからと言って負ける為に出るなんて真似はヨシナリには許容できなかった。
 ならどうする? 一人で行けば確実に負ける。 負けない為、最低限の勝算を捻りだすには何が必要だ?

 「――まぁ、人数だろうな」

 これしかなかった。 数合わせでもいいから適当に揃えるか?
 以前の模擬戦の時にレラナイトがやった外部から助っ人を頼む事は可能だ。
 一時的にユニオン所属扱いにして用事が済んだら脱退の期間限定メンバーを入れる。

 そうすれば勝率は上がるはずだ。 問題はこのやり方だと大して強い奴はまず釣れない事だろう。
 何故なら強い奴はほぼ必ずどこかのユニオンに入っているからだ。
 仮にいたとしても星座盤のような弱小に力を貸してくれるプレイヤーはそういない。

 その為、やるなら数合わせと割り切って募集をかけるべきだ。
 
 「……やるか」

 このまま何もしなければ隠れるだけで終わるのだ。 
 僅かでも勝算を手繰り寄せる為にやれる事はやるべきだと決めた。
 ヨシナリはウインドウを操作。 星座盤の臨時メンバー募集を告知する。

 そうするとユニオンを探している他のプレイヤーに案内が入るようになるのだ。
 イベントまであと四日。 マックス九人でイベント期間中の臨時メンバー募集。
 一緒にイベント戦を戦いませんか? 初心者でも歓迎。 報酬は働きの有無にかかわらず頭割り。

 とにかく助けて欲しいです。
 そんな文面を並べて表示。 最悪、やる気のない奴でも囮ぐらいにはなるのでいないよりはましだ。
 残り四日を切っているので連携訓練はまず不可能なので即席のチームで挑むしかない。

 ――誰でもいいから来てくれ。

 ヨシナリはそんな祈るような気持ちで参加してくれる追加メンバーを待ったが――
 二日経過しても誰も来ない。 反応は皆無だった。  
 
 「嘘だろ、この地区だけでも数百万人はプレイヤーがいるんじゃないのかよ……」

 一人か二人ぐらいは物好きが来てくれるんじゃないかと期待していたのだが、まさかのゼロ。
 そして三日目。 イベントは明日だ。
 ヨシナリはこりゃ駄目かと大きく肩を落として募集を取り下げようとした所――一件、参加申請が来た。

 何かの見間違いかと思ったが間違いなく申請が来ている。
 一件、たった一人だが居ないよりはマシだ。 まるで砂漠でオアシスを見つけたような気分になり、ヨシナリは即座に確認ボタンを押す。 それにより申請して来たプレイヤーのステータスが表示される。

 さぁ、どんな奴だ? ランクがHでもIでも全力で歓迎するぞ!
 仮に戦い方で迷っているのなら相談にも乗ろう。 とにかくよく来てくれた!
 ありがとう! ありがとう! そんな気持ちでヨシナリはウインドウに視線を向けて――固まった。

 「は? え?」

 それだけ理解を越えた者が視界にはいったからだ。 ヨシナリはアバターにもかかわらず目を擦ってウインドウに表示された申請プレイヤーのプロフィールを確認する。
 プレイヤー名:ラーガスト
 同名かなと個人ランクを見るとしっかりSと記載されていた。
 
 「な、なんで??」

 ――最強のハイランカー様じゃねぇか!?

 忘れもしないあのイベント戦。 
 敵の最強エネミーに対して人間離れした挙動で渡り合ったプレイヤーだ。
 そんな奴が何でこんな所に? いや、そんな事はどうでもいい。
 
 性質の悪いドッキリかもしれないがラーガストが力を貸してくれるなら勝算どころか優勝も見えてくる。 とにかく話を聞いてみたいと考え、即座に連絡を送った。 
 返事は即座で、入るに当たって交渉したい事があると添えられている。

 その内容に内心で首を傾げながらも了解と返してユニオンホームへと招く。
 
 
 「ど、どうも星座盤のリーダーヨシナリです。 よろしくお願いします」

 流石に来客相手にパイプ椅子は不味いと思ったので慌ててソファーと小さなテーブルを買って設置した。 向かいにはラーガストと彼が連れて来たプレイヤーが一人。
 何だろうと疑問を抱いたが、取り敢えず相手の話を聞いてからだ。

 ラーガストのアバターはカナタと同様、人間に近い容姿で黒髪黒瞳、中肉中背で年齢はヨシナリと同年代に見えた。 アバターなので実際はどうかは不明だが。
 隣は外套のようなものを頭からすっぽりと被っているのでよく分からない。

 「ラーガストだ。 挨拶の前に礼を言わせてくれ。 イベントの時は助かった。 最後の狙撃がなければ勝敗は分からなかった」
 
 どうやらあの時、ラーガストはヨシナリの存在に気が付いていたようだ。
 
 「いえ、俺は自分にできる事をやっただけなんで。 それはそうと入る際に条件みたいなのがあるって話ですけど何でしょうか?」
 「俺がここに来たのは借りを返す意味合いもあったが、それはついでで本命はこいつだ」

 ラーガストが隣のアバターの肩を叩くとゆっくりと顔を上げる。
 フードの奥は何も見えない闇だが、その奥に何かギラ付いた光があった。
 その異様な迫力にヨシナリは思わず息を呑む。

 「こいつはユウヤ。 次のイベントでどうしても叩きのめしたい奴がいるとかで俺に協力を求めに来た。 だが、残念ながら俺はユニオンには入っていないし入る気もない。 どうしたものかとも思ったらちょうどここが臨時メンバーを募集していると聞いた。 ――俺からの条件はこいつを加える事と、俺達は優勝ではなくこいつの相手を叩き潰す為だけに参加する。 それを呑んでくれたら途中まで力を貸そう」

 要するにラーガストは友人であるこのユウヤというプレイヤーの為にイベントに参加したいという訳だが、優勝には一切興味がないので終わったら帰ると言っている。 つまり目当ての相手と当たり、決着を着けたらその時点で離脱するという事だ。 参加というよりは便乗といった表現が適切かもしれない。

 一応、決勝で当たるなら優勝の可能性もあるが、高い確率で途中で終わりとなるだろう。
 イベント戦での借りを返すといった理由だけでハイランカー様が力を貸してくれる訳がないと思っていたのでこの理由には納得だった。 元々、予選落ちがほぼ確定していた状態だったので、ここは素直に喜んでおくべきだ。 ヨシナリは自分にそう言い聞かせて大きく頷く。

 「そういう事でしたら構いませんよ。 微力ながら俺も手伝います。 ――えっと、それでそのユウヤさんが叩きのめしたい相手と言うのは?」
 
 ユウヤは無言でウインドウを操作して可視化。
 ヨシナリへと見せる。 どれどれと覗き込むと見覚えのある顔が映って思わず顔を顰めた。
 そのカスタマイズされたアバターは見間違えようもない。 ユニオン『栄光』のトップであるカナタだ。

 Sランクのラーガストが手を借りる必要のある相手って事はランカーだとは思っていたが、よりにもよってカナタか。 知らない相手ではないので正直、やり難いなと思ったが断わるという選択はないのでやるしかなさそうだ。
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