Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第104話

 「あー……」

 始まった瞬間、ヨシナリはそんな言葉を漏らした。
 正直、読めてた展開ではあったが目の当たりにするとこのような反応になってしまう。
 ラーガストのエイコサテトラが凄まじい速度で空中を飛び回り次々に飛行している機体を叩き落とし始めた。

 突撃銃を乱射しているソルジャーⅡ型が空中で上半身と下半身が泣き別れ、キマイラタイプが偏差射撃によってあっさりと撃墜され、エンジェルタイプは多少は食い下がりはしたがラーガストの動きについていけずに袈裟に両断。 まるで相手にならない。 強すぎる。

 ふわわも大概だと思っていたが、ラーガストは明らかに格が違う。
 機体性能、近接、射撃、機動、反応、どれをとってもプレイヤーで最高峰だ。
 理不尽なまでの強さに空中では凄まじい悲鳴が上がる。 

 『クソッ!クソぉぉぉぉ!』
 『Sランクだと!? あいつは無所属じゃなかったのかよ!?』
 『知るか! 生かしておくと不味い。 今は協力して――あ、畜生、やられ――』
 
 ヨシナリは空はもう見なくていいなと思い狙撃銃をそっと下に向ける。
 取り敢えず、狙える相手を狙ってスコアを稼ぐとしよう。 黙って見ているだけでも問題はないが、流石に何もしていないのはよろしくない。 それに欠片も楽しくないのでここは積極的に動くべきだ。

 ラーガストが空中で暴れまわっている事で戦場は大混乱に陥っている。
 援護は要らないどころか邪魔になりかねない。 

 『おい、「栄光」の機体は見つけたか? 空に上がってきてる連中にはいない』
 「あ、はい! 今、確認してます」

 ラーガストに言われてヨシナリは慌てて地上に機体を確認する。 ユニオン所属の機体は大きい所なら機体のどこかに所属を示すエンブレムが刻まれているはずだ。 星座盤はデザインが決まっていないのでないが。
 
 ――ど、どうせ三人の弱小だから……。

 言ってて悲しくなったので今度、考えよう。
 そんな事を思いながら地上の森の中――木々の隙間に意識を集中する。
 一機、一機確認するがそれらしき機体はいない。 規模的に枠をフルに使った三十機で臨んでいるだろうが流石に参戦数が多すぎる。 最初から当たるなんて事はそうないだろう。

 今の所ではあるが標的らしき存在は見当たらない。 地上も地上で良くも悪くもラーガストに意識を持って行かれているので狙うのは容易だ。 隙を晒した敵機をヨシナリは丁寧に撃ち抜いていく。
 本当に大したものだ。 たったの一機で戦況をコントロールしている。

 この二万機以上存在する血みどろの戦場がたった一人の手によって引っかき回されているのだ。
 実行できたのならさぞかし痛快だろう。 そしてあの高みから見える景色はどんなものなのだろうか?
 ヨシナリにはさっぱり理解できなかったが、それでも見えるものはある。

 地上の敵を処理しながら時折、ラーガストの動きを観察するのだが、よくよく見ていると癖のような物が動きに存在した。 エイコサテトラの視野がどれほどなのかは不明だが、少なくともほぼ全方位見えていると見て間違いない。 あの機体の武装は基本的に両腕の多目的盾に集約している。

 円形の盾にはブレードとエネルギーガンが格納されているので遠近両方の距離に対応できている。 それ以外は背面のエネルギーウイング。 どうも切断力があるようで羽を器用に動かす事で敵を切り刻む事が出来ている。 以上が見えている範囲でのエイコサテトラの武装だ。

 隙が少ない構成に見えるが穴が全くない訳ではない。 
 射程だ。 エネルギー弾の発射機構は内蔵型だけあってそこまで出力が出ない。
 その為、射程が従来の物に比べるとそこまで遠くまで届かないのだ。

 ヨシナリの見立てではエイコサテトラは近~中距離対応の機体ではあるが得意レンジは近距離。
 射撃は好まない印象を受ける。 そこまで見えるなら相手の取るべき戦い方は一つ。 距離を取る事だ。
 だが、それはあの機体の背に存在するエネルギーウイングが許さない。

 六機のエネルギーウイングは凄まじい加速を齎し、開いた間合いを瞬時に埋める。
 あらかじめ来るのが分からなければ反応すらできないであろう速さはそれだけで恐ろしい武器だ。
 何よりも凄まじいのはそのスピードを完璧に制御できている点だろう。

 急加速、急停止、急旋回。 その三つを組み合わせるだけで並の攻撃はまず当たらない。
 仮にヨシナリが狙撃しようとしても掠らせる事すら不可能だろう。 少なくともまともに狙えるようになるまでもう少し挙動のパターンを掴む必要がある。 今は無理だと断言できてしまう。

 次に攻撃の傾向。 ラーガストは基本的に正面から敵を叩き潰す事を意識しているようで飛び道具で遠距離から攻撃してくる相手に関しては処理の優先順位が低い。
 狙う順番としてはまず近接を仕掛けてくる機体。 次に中距離、最後に遠距離戦機体だ。

 大抵は逆のはずなのだが、自分は絶対に躱せるといった自負から来る慢心なのか彼なりのこだわりなのかは分からない。 それとも近接戦に絶対の自信があるからこそなのだろうか?
 エネルギーブレードを展開したエンジェルタイプがエイコサテトラに斬りかかるがあっさりと空を切り、次の瞬間には逆に両断されている。

 戦闘機形態に変形したキマイラタイプが機銃を連射しながら突撃。
 そのまますれ違って距離を取る腹積もりだったのだろうが、エイコサテトラは無駄のない挙動で躱すとキマイラタイプの真上にぴったりと着ける形で肉薄。 咄嗟に変形しようとしていたがあっさりとブレードに貫かれて爆散。 ソルジャーⅡ型に至っては完全に片手間だ。

 銃撃は掠りもせずついでとばかりに放った無造作な射撃で次々と胴体を撃ち抜かれて撃墜されていく。
 恐ろしい事に一発も外していない。 全てがまるで吸い込まれるように急所に命中している。
 
 『こ、こんな化け物相手にやってられるか!』

 一部のプレイヤーが離脱しているがラーガストは逃げる者は追わず、前衛が居なくなったので遠くから狙っている者達へと狙いを定めて突撃。 比較的、安全と思っていた者達は悲鳴を上げて逃げようとしていたがもう遅く、片端から撃墜されていった。

 ――これは酷い。

 格の差というものを嫌でも実感してしまう。
 そして酷い事になっているのは空中だけではなかった。 
 視線を下げ、森に向けるとそちらでも別の地獄が展開されている。

 ヨシナリの視線の先ではユウヤが暴れまわっていたからだ。
 彼の通った後には既に無数の残骸が転がっており、大半が文字通り叩き潰されたといった有様だ。
 ユウヤの愛機――プルガトリオは手に持つ大剣をだらりと構えて獲物を探すように森を進んでいる。
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