Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第112話

 ベリアル。 その珍妙な言動とは裏腹に非常に高いプレイヤースキルを持った上位のランカーだ。
 機体であるプセウドテイは非常に軽量で対弾性能はお世辞にも高いとは言えないが、それを補ってあまりある物があった。
 プセウドテイに存在する唯一の武装――名称はパンドラ。 武装の系統としてはエネルギー、要は光学兵器にカテゴライズされるのだがその応用範囲は非常に広い。

 ジェネレーターに内蔵される形で搭載されているそれは機体の動力から直接エネルギーを吸い上げて駆動する。 その機能はエネルギーの形状変化。
 元々、ブレード、ライフルなど、エネルギーに何らかの指向性を与えて利用する兵器は既にいくつも存在し、Ⅱ型以降の機体には標準装備されていると言ってもいい代物ではあるが、パンドラは中でも随分と毛色が違う。 機体の全身に存在する排出口から吐き出された指向性を持ったエネルギーは変幻自在に形を変える。 

 それにより機体の各所から放出されたエネルギーはオーラのように機体に纏わりつき、機体の形状を視認する事すら困難にしていた。

 「ふ、見せてやろう。 我が闇の力、その一端をな!」

 飛び上がり片手を突き出すと闇色のエネルギーが噴出し何かの波動のようにユウヤへと襲い掛かる。
 ユウヤは特に驚かず、背後に飛んで回避。 初見時は随分と手酷くやられたが、同じAランクなので何度も当たった相手だ。 簡単にやられる事はない。

 エネルギーの波動が大地に直撃し、爆発のような衝撃波が周囲を襲い木々が薙ぎ払われる。
 ユウヤは飛び散った岩などを大剣を盾にして防ぎつつ面倒なと思いながら左腕を向けて内蔵された銃口を向けて発射。
 二発の散弾が空中で弾けて無数の鉄球がベリアルに襲い掛かる。

 「無駄だ。 我が闇の前に小細工は無意味!」

 散弾は命中する前にベリアルが自機を中心に展開した闇色の障壁に阻まれて動きを止める。
 これでいい。 ユウヤは腕の装甲を部分的に展開して排莢。 
 ウインドウに表示されている弾丸の精製時間・・・・を意識しつつ木々を縫うように距離を取る。 ベリアルの武装は強力ではあるが、裏を返せば攻防だけでなく推進まで全てパンドラに依存しているので僅かな時間でも使えなくすると途端に無力になり下がるのだ。

 ベリアルの攻略法は分かり易い。 とにかくエネルギーを使わせ続ける事にある。
 Aランクの機体はそれぞれ規格外のジェネレーターやコンデンサーを積んではいるが無限ではないので攻撃を繰り返して使わせ続ければどこかで冷却が必要になる。 広い範囲で機体を保護するシールドと飛行を併用している場合は特に消耗が大きい。

 その為、ユウヤはとにかく面での制圧を念頭に置いた散弾による射撃を攻撃の軸にして削りに行ったのだ。 ラーガストのエイコサテトラ並みの突破力があるなら正面から打ち破る事も可能だが、今のユウヤの装備ではやや厳しい。 シールドを破る所までは簡単ではあるが、大きな攻撃は隙を晒す結果となるのであまり迂闊には仕掛けられないのだ。

 「どうした? 随分と消極的だな! 我が闇に恐れをなしたか?」

 煽ってくるが無視。 いつもの事なので言ってろと思いながら散弾を撃ち込む。
 広がった無数の弾は障壁に防がれるが効果はしっかりと出ている。
 最初は自機を中心に広く展開していたフィールドが半分近くまで縮小していたからだ。

 消耗を抑える為に範囲を絞っている。 そして相手もユウヤの考えを見通しているので派手な攻撃は仕掛けてこない。 ベリアルの狙いはユウヤの弾切れだ。
 現状で安全にベリアルの障壁を削れるのは散弾だけだが、撃ち放題という訳ではないので使い切るのを待っている。 ユウヤの武器は基本的に物理に偏っているので攻撃は重たいが隙ができやすい。

 エネルギー系全振りで機動力に優れているベリアルとは相性があまり良くなかった。
 ここはランク戦ではなくイベント戦なので環境を利用し、味方と協力するべき場面だろう。
 だが、ハイランカーという人種は大なり小なり、ここまでの地位を自らの実力で勝ち取ってきたといった自負があった。 矜持――プライドと言い換えてもいいそれは彼等から撤退の二文字を奪い去る。

 要は目の前に敵がいるなら叩き潰し、自ら道を切り開く。
 だからユウヤは決して逃げる事はしない。 目の前にいる痛々しい言動を垂れ流す厨二野郎は叩きのめして無様に地面を這わせてやりたい。 それはベリアルも同様で目の前に現れた敵機を全て屠り、自分こそが最強だとこの世界に示すのだ。 

 ――その為には目の前の敵を叩き潰す必要がある。

 俺が勝つ。 奇しくも二人は全く同じ思考、結論に着地した。 
 戦いが続けば戦況も変わる。 切っ掛けはユウヤの散弾が尽きたからだ。
 最後の一発を撃った後、排莢しながら反転。 そのまま突っ込む。
 
 ユウヤはベリアルの状況を確認。 機体を守るフィールドは最大展開時の三分の一程度。
 攻撃との併用を行っていたので大技は来ない。 直接殴れば充分に殺れる。
 ベリアルはユウヤの装備を見る。 散弾は残弾ゼロ。 他の弾が残ってはいるが、撃ったと同時に突っ込んできたので恐らくは当たらないと判断して使ってこない。 狙いは直接攻撃による障壁の突破。

 ユウヤのプルガトリオは非常に多芸な機体とベリアルは認識していた。
 プルガトリオの装備群は全てでワンセットの特注品で総称は『ジ・アビス』
 メインの大剣は『イラ』無骨な鉄の塊に見えるが、内部には様々な技術が盛り込まれた最新武装で、可変機能により別の形に姿を変えるのだが『イラ』の状態では内部に大量に仕込んである液体金属で形成される丸鋸による切断だろう。 接触と同時に刃部分が展開し無数の円刃が対象を削り切る。

 反面、物理に偏っているのでエネルギー系の障壁などに弱いといった欠点がある。
 それを補うのが『イラ』の可変形態である『スペルビア』だ。
 刃の半ばに付いている持ち手を下に引く事で半ばから上が左右に広がり、液体金属が形を補正。

 長柄のハンマーへと形を変える。 ベリアルからすればこの形態が最も厄介だった。
 あのハンマーは装甲や敵の防御を剥がし、破壊する事に特化した武器だ。
 フルスイングを喰らえば重装甲のパンツァータイプですら一撃で致命傷になる。

 その破壊力を支えているのはハンマーのヘッド部分に開いている穴だ。
 内部に推進装置が付いているので振る方向と逆の部分を噴かして加速し、瞬間的に破壊力を増大させている。 そして何よりも厄介なのがもう一つの機能、それは――
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