Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
117 / 865

第117話

 なんだこのバカげた金額は?
 一瞬、バグったのかとも思ったが、報酬額は撃破数プラス撃破した機体のランクで決まる。
 つまりヨシナリ以外の二人がそれだけの機体を撃破しているという事だ。

 これだけあったら色々買えると思うが報酬は頭割りの約束なので後で送金しておこう。
 報酬の確認が終わった所で次だ。 予戦突破の条件は生き残る事なので残っている時点で本戦への出場は決定した。 ヨシナリとしてはここまで来れただけで上等だが、ユウヤとの約束がある。

 本戦はチーム単位でのトーナメント。
 カナタのいる『栄光』と当たるかは運だが、ヨシナリとしてもツガルやセンドウには借りを返したいと思っているので当たるのは望むところだった。 ただ、この面子ではこれ以上、やれる事はない。

 本来であったのなら本戦に向けて連携強化や戦い方の方向性を話し合いたいところなのだが……。

 「あのー、一応なんですがウチの方針としては終わったら感想戦をやる事になっているんですがどうでしょう?」

 二人は顔を見合わせる。 

 「まぁ、いいんじゃないか?」
 「そうだな」

 意外な事にあっさりと同意したユウヤに問題ないと頷くラーガスト。
 やる事は決まったが、個々人で好き勝手に動いたので個別にどう動いていたかの確認以上の意味はないが、やらないよりはマシだと信じたいとヨシナリはリプレイ映像を再生した。
 
 基本的に個々で動いているのでチーム戦としての見どころはない。
 急造のチームという事と実力差がありすぎるので動きを見るという点ではあまり得る物はないが、ハイランカーの動きをじっくりと見るいい機会ではあった。 まずはユウヤ。

 アルフレッドとの連携を活かしての立ち回りかと思ったが、蓋を開けてみるとほぼ独力で戦い抜いていた。 ステルス機能を搭載しているアルフレッドは身を隠しつつ索敵に専念していたようだ。 それにより早い段階で近くに居る敵の数と装備構成を把握、戦い方を組み立ててから奇襲。 

 アルフレッドはそれなり以上に武装していたので積極的に戦うのかと思ったが、情報収集がメインで火力的な支援はベリアル戦で少し行った程度だった。

 改めてプルガトリオという機体の戦い方を観察する。 メインは大剣と変形させたハンマーでの接近戦。 振り回しやすい大剣で動きの悪い――地形に足を取られている機体を仕留め、ハンマーでは装甲を固めた防御に優れた機体を仕留める。 半端に離れた敵は腕に仕込んだ散弾砲で撃ち抜く。

 一粒弾スラッグで仕留められた敵は胴体を撃ち抜く事で即死。 射程は短いがとんでもない威力だ。 腕が妙に太いなと思っていたらどうも内部で弾丸を精製する機構を備えているらしく、何発もストックできないが、弾切れの心配がないのは羨ましい。
 撃ち出す前に弾を選んで散弾かそれ以外かを選んで発射している。 攻撃手段に幅ができるのもいい。 

 改めて俯瞰で見るとユウヤの動きは非常に秀逸だ。 敵の位置を把握した後の動き出しからポジショニングの流れは素晴らしい。 敵を狙いやすく、敵から狙われ難い位置は樹木を上手に障害物として利用している事で、延いては地形を正確に把握している事の証左でもある。

 標的を見る眼も素晴らしい。 仕留める流れに無駄がないのは襲撃から撃破までの絵が脳内で出来上がっており、それに沿って行動しているからだろう。
 その証拠にターゲットの選び方に迷いが一切ない。 射程の長い武器を持った者を優先的に狙い、自分の得意レンジで勝負できる相手は向かってきた場合に対処。 敵の行動もある程度、幅を持たせた上で想定しているのは見ていれば分かる。

 ――これを瞬時にやるのか……。

 自分がやる場合を想定するが、どうしても思考と組み立てに時間が必要になる。

 「基本的に遠距離で削ってくる相手は苦手ですか?」
 「あぁ、俺は近~中距離戦仕様だからな。 どうにもならなくはないが数が多い場合は散られると面倒だから見失う危険のある相手を優先するようにしてる」

 ヨシナリは分析の答え合わせをしながら更にユウヤの動きを観察する。
 改めて見るとこのプルガトリオと言う機体は不思議な構成だった。
 機体の総重量を考えるなら充分軽量に入る。 その割には携行武器は鉄の塊のような大剣。

 当初は格闘に寄ったふわわに近いタイプかとも思ったが、実際に見てみると似て非なるものと分かる。
 ふわわが手数で攻めるならユウヤは重たい一撃で敵を仕留める事を念頭に置いた動きだ。
 だからと言って大雑把かと聞かれるとそうでもない。 右手の散弾砲、そして左手には電磁鞭を仕込んでいる。 使用する際は空けなければならない関係で大剣を持ち代えなければならないのだが、どちらの腕で振るにしても動作のクオリティは落ちていない。 両利きという訳ではないのだろうが、器用に扱っているので見た目以上に繊細なプレイをしているというのがヨシナリの印象だ。

 凄すぎてあまり参考にならない動きだが、感覚的なものではなく考えた上での挙動なのは見て取れる。
 つまり部分的にではあるが真似はできるはずだ。 特に攻撃、行動の優先順位を決める為の判断は場数を踏んでこその物だろうが、自分なりに取り込む事は出来るはずだ。

 折角、最上位のプレイヤーが二人も一緒に戦ってくれているのだ。
 ほんの少しでもテクニックを盗んで俺の武器にしてやる。 そんな気持ちでユウヤの動きを観察し、気になる事があれば質問するといった事を繰り返す。 ユウヤはヨシナリの質問に対して特に不快感などを示さず素直に答えていた。 

 「ここ、反応できたのは何でですか?」
 「最初に来られたら嫌な場所を意識しておいたからだ」
 「あぁ、だからこっち側からの攻撃を受けないポジションを――」

 ユウヤの戦い方は地形を利用する事を念頭に置いている。 恐らく、単騎で大勢を相手にする事を前提としているからだろう。
 遮蔽物はあるか? あったとしてそれはどれぐらいの攻撃に耐えるのか?
 視界を遮るのに役に立つのか? 敵に利用された場合、どの程度邪魔になるのか?

 それらの情報と敵の位置をアルフレッドに集めさせ、脳内で組み合わせて戦いに利用している。
 アルフレッドは戦闘ではなく情報収集で援護などは緊急時などの必要に迫られた時か、安全に仕留められると確信したときのみと完全に割り切っている印象を受けた。 二対一で戦いを優勢に運ぶタイプだと思っていたが、まるで見当違いだ。 戦闘を効率よく進める為に使っているだけで、ユウヤをAランクプレイヤーの座まで押し上げたのは紛れもなく彼自身の実力である事が分かる。
 
 ただ、同格以上となるとそうも言っていられず積極的に攪乱に使用していたが、厄介な点は仮にいなくてもいると思わせる事で相手の意識を削げる点にあった。
 事実、最後に戦ったベリアルというプレイヤーは戦闘中、明らかに周囲を警戒している。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。