Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第129話

 「時間がない。 ユウヤが追い付いてくる前に仕留める」

 フィアーバは周囲の味方を一瞥して力強く言い放つ。
 キマイラ五、エンジェル三、そして自分と相棒の機体。
 行ける。 いかに最強のSランクだろうがプレイヤーである以上、無敵ではない。

 彼の機体である『レジリエンス』は防御に比重を置いた機体だ。 
 両腕、両肩にマウントされたエネルギーシールド発生装置は円形の小楯としても扱えるが、中心に巨大なエネルギーの大盾を展開する事で堅牢な防御を誇る。 その為、攻撃力にやや欠けるが、堅牢さならAランクでも上位に位置すると自負していた。 防御に偏っているお陰でランク戦での勝率はあまり高くはないが、こういった集団戦では実力以上の力を発揮する。

 そしてこの戦いの要――彼の相棒であるプレイヤー『ウィル』とその愛機である『ライトハーテッド』。
 極限までの軽量化による高機動に収束する際の形状を変える事によりブレードだけでなく、ナイフや鞭といった間合いを変幻自在に変える武器を持つ近接戦のスペシャリストだ。

 最も確実な手としてはウィル以外の全機でどうにかラーガストの動きを止めて仕留める。
 この環境、地形、全ての状況から導き出される最も勝率の高い手だ。
 
 「頼むぜ相棒」
 「まっかせなさい! 打倒Sランク、やってやろうじゃない!」

 そう返したのは快活な印象を与える女の声。 いつもの彼女だ。
 ラーガスト相手に気負いもない。 充分に勝てるチームだ。
 レーダー表示と目視で位置関係を確認。 ラーガストの間合いに入るまで三、二、一――

 「来るぞ」

 見た目では距離があるのように見えるがエイコサテトラの突進力は常軌を逸している。
 普通なら銃を用いなければ届かないような距離ですら彼にとっては間合いの内なのだ。
 エイコサテトラの背面ウイングが発光。 次の瞬間、機体が視界から消える。
 
 ――ここだ。

 フィアーバは両腕のシールドを重ねて展開。 ウィルを狙った刺突を際どい所で受け止める。
 凄まじい突進で勢いこそ止めたがブレードがエネルギーシールドを貫通してウィルに触れそうになっていた。 知ってはいたが、心臓に悪い攻撃だ。

 反応が僅かに遅れていたらその瞬間に落とされていただろう。
 ウィルはラーガストを認識すると自機の武器――エネルギーブレードを展開し一閃。
 エイコサテトラは二枚のウイングを噴かして凄まじい速さで後退。 フィアーバは咄嗟にシールドを切って拘束を解く。 そうしないと機体ごと持って行かれるからだ。

 エイコサテトラ最大の強みは急加速、急旋回。 
 尋常ではないプレイヤースキルから繰り出されるそれらは物理法則すら無視しているのではないかとさえ言われている。 実際、意味不明な軌道を描いて飛んでいるエイコサテトラの姿を見ればそう言いたくなるのも無理はない。 捉えるのは至難だ。

 だが、至難であって不可能ではない。 加速から旋回に入るまでの間は必ず直線になる瞬間がある。
 狙うのはそこだ。 左右からキマイラパンテラがエイコサテトラを挟むように移動。
 両肩に搭載されている散弾砲を発射。 撃ち出された砲弾が空中で弾けて散弾を撒き散らす。

 点でも線でもなく面。 とにかく回避の余地を減らす攻撃を繰り返す。
 左右からの攻撃にどう対処するか? 想定されるパターンは三つ。
 加速で突き抜けるか上に抜けるか、後は意表をついて防ぐのどれか。

 三つ目は考えにくいのでどちらかになるだろう。 
 フィアーバの勘ではラーガストはそのまま突き抜ける。 何故なら彼はSランク。
 最強のプレイヤーなのだから。 その自負があるなら真っすぐに突き抜けるだずだ。

 「ほらな」

 彼の予想通りエイコサテトラは散弾が到達する前に攻撃圏を突き抜ける。
 想定通り。 残ったノーマルのキマイラタイプが戦闘機形態でエイコサテトラを追いかけるように背後に張り付く。 直線加速ならどうにか食い下がれるが旋回性能で天と地ほどの開きがあるので近寄れるのは僅かな時間。 背後から内蔵された散弾砲を連射する。
 
 本来は機銃なのだが、対ラーガスト対策に散弾砲に変えた。 キマイラタイプに内蔵できるサイズなので口径も落ちる上、重く、何より高い。 だが、Sランクを仕留めるのであればこれぐらいの犠牲は払うべきだ。 真後ろから撃たれたら地形的に左右には躱し辛い。

 なら上しかない。 そこで待ち受けているのがエンジェルタイプだ。
 全機エネルギーショットガン――拡散したエネルギーの弾丸を吐き出す武器を構える。
 今回の戦いに臨むにあたって全員が射程を犠牲にして攻撃範囲の広い武器を選んだ。
 
 意地でもラーガストを叩き落とす為だ。 表には出さないがフィアーバは少しだけ不快だった。
 この戦いは十人一組だ。 つまり星座盤は後、七人分の枠があったのに使っていない。
 要するに奴はこの戦いを舐めているのだ。 三人――Aランクのユウヤは分かるが、残りはよく分からないぽっと出のFランク。 ふざけるなと声を大にして言ってやりたいが、ここで叩き潰す事でその慢心から来る高いプライドを圧し折ってやる。 そんな気持ちで彼等は全力で殺しに行っていた。

 エンジェルタイプ三機は攻撃範囲が被らないように配置。 
 範囲を極限まで広げた攻撃を躱す選択肢はそう多くない。 
 防御して強引に突っ切るなら後ろからキマイラタイプが背後から追撃。
 
 エネルギーウイングを一基でも破壊できればかなり楽になる。 
 そんな事は当然、想定しているだろうから躱すなら急旋回。 当然のようにフェイントも交えてくる可能性もあるのでエンジェルタイプを扱っているプレイヤー達にはとにかく撃ちまくれと言っておいた。

 ユウヤが来るまでまだ十数秒ある。 時間は充分に残っているんだ。
 
 ――さぁ、どっちに躱す?
 
 左右か? それとも上下? 強引に突っ込む?
 選択の時間は一秒もないぞ。 さぁ、Sランクの判断は?
 エイコサテトラは一瞬、制止して急上昇。 上! 想定した中で最高の選択肢。
 
 「貰ったぁぁぁ!」

 太陽を背負ってウィルの機体が急降下。 彼女は他が追い込んでいる間に急上昇し、奇襲をかけるべく上空で待機していたのだ。 エイコサテトラの急上昇に合わせての急降下。
 ラーガストはその加速故に敵の接近を許すのだ。 得意の急旋回で躱すのはタイミング的には難しい。 仕留められるかは怪しいが足を止めるぐらいは行けるはずだ。
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