Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第145話

 ユウヤとカナタの間で交わされた取り決めは流れた事でこの一件はヨシナリの手を離れた事になる。
 二人にとっては残念な結果ではあったが、面倒ごとに発展しなかったので内心でほっと胸を撫で下ろす。 ユウヤにとってあの勝負はかなり重要な事である事は理解していた。

 どちらにせよ手出し無用との事だったのでこれ以上は考える意味もない。
 そんな事よりも考えるべきはこの先の試合だ。
 『栄光』との決着はついたので、ラーガスト達の目的は果たしたが大会自体は終わっていない。 

 二百チームのトーナメントで次は五回戦。 
 残り十三チームとなるが、この試合でラーガストとユウヤが離脱する以上、ヨシナリ一人で臨まなければならない。 はっきり言って論外だ。 

 ちらりと二人の様子を見る。 
 気が変わってもうちょっと手を貸してくれないかなと機体を込めた視線だったが、二人は既に帰り支度を始めていた。 

 「――ですよねー……」

 思わず呟く。 敵ユニオンの詳細を見てみると最低ランクで結成されたばかりのユニオンだ。
 恐らく商品目当てで参加する為に臨時で作ったユニオンだろう。 
 よくよく見ればハイランカー同士が手を組んで作ったと思わしきユニオンがいくつかあったのでそういう事なのだろうと察した。

 「一応、確認だけはしておくか」

 ないと思うが一縷の望みをかけて確認を行ったのだが――


 「『栄光』とやるまでの約束だ。 俺は帰る」
 「どうでもいい。 俺も引き上げるから、後は好きにしろ」

 次の試合どうしようかと尋ねた結果、ラーガストは既に引き上げる気で、ユウヤは投げ遣りにどうでもいいと言うだけだった。  
 協力する気はないようで「じゃあな」と素っ気なく言った後、ログアウト。 
 その場にはヨシナリだけが残された。 

 ――はぁ、ですよねー。

 分かり切った事だったので失望はない。 
 弱小の『星座盤』がここまでこれたのだ。 上々の結果と満足するべき所だろう。
 
 「さて、やるだけやりますか」

 ただ、逃げるつもりはないのでやれる事はやっておきたかった。
 
 
 ――で、当然のように負けた。

 敵はAランクのジェネシスタイプ五。 
 エンジェルタイプ五といった高ランクで固めた編成で純粋な戦力差があったが、地下ステージで地の利はあったのでそこそこは粘れたがそれだけだった。

 ヨシナリは捕捉されるまでは粘りを見せたが、捉まった時点であっさりと撃破。
 ユニオン『星座盤』は五回戦敗退という結果に終わったが、ヨシナリとしては得る物の多い時間だったので出てよかったと心の底から思っていた。 

 対戦相手からは馬鹿にしてるのかと怒られて散々だったが、とにかく終わりはしたのだ。
 ホームに戻ったヨシナリはユニオンメンバーのリストをウインドウに表示させる。
 当然のように二人の名前はない。 終わると同時にあの二人は早々に抜けていなくなったからだ。 
 
 結果に対して悔しいといった気持ちはなかった。 そもそもラーガストやユウヤといった強者のおまけとして参加しただけなので今回の成果はヨシナリの物ではなくあの二人の物だ。 
 だが、得た経験は本物。 それをどう活かすかはヨシナリ次第だ。

 じっとしていられなくて入ったトレーニングルームでターゲットを破壊しながらあの戦いを反芻していた。
 ハイランカーの戦い方は非常に参考になった。 ラーガスト、ユウヤ、カナタ、他にも敵として対峙したプレイヤー達。 機体も戦い方もバラバラではあったが、立ち回りには自分に応用できる面も多くこれからの戦い方を見直すいい機会となった。 

 いや、それ以上に楽しいのだ。 手に入れた新しい発想を用いて一から戦い方を組み立てる事が。
 そしてそれを一刻も早く試したい。 結果、勝利を得られるのならこれに勝る喜びはないだろう。
 まずはその為の練習と金策だ。 新しい自分に合った戦い方、武器を探そう。
 
 今、この瞬間、ヨシナリは自分に無限の可能性があるのではないかと思えるほどにわくわくしていた。 同時に自分は今、最高にこのゲームを楽しんでいる。 
 あぁ、本当にいい気分だ。 早く、訓練を済ませてどこまで通用するのかを実戦で試してみたい。

 そんな急かされるような焦るような気持でビルの隙間を縫うように移動し、ターゲットを撃ち抜いた。


 ――ログアウト。

 ヨシナリから嘉成へ。 
 戦い方の方向性は掴めてきた。 後は装備の更新だ。
 今の機体バランスではイメージ通りの動きができないので入れ替える必要がある。
 
 後は武器についてだが――ぶつぶつとそんな事を言いながら自室を出てリビングへ。
 リビングでは珍しく両親が揃っていた。 嘉成は小さく声をかけて席に着く。
 父親は開いたウインドウでニュースを見ていたが、嘉成に気が付くと「最近どうだ?」と声をかける。

 特に伝える事もないので「ぼちぼち」と返した。 共通の話題がないのであまり会話が広がらないのだ。 だからと言って仲が悪い訳ではないので父親は「ほどほどにしておけよ」と言うだけで会話が終わる。 母親は嘉成の食事を用意する為に動き出し、待っている間にウインドウを操作してニュースを呼び出す。 システムが自動的に嘉成が関心を持ちそうなニュースを自動でピックアップ。

 ゲームから思考を切り離し、ニュースの見出しに目を向ける。
 「惑星ユーピテルに新たな採掘基地が完成。 エネルギー問題の解決に大きな一歩!」
 「ゲーム依存症による社会問題」
 「宇宙開発による国家予算の圧迫。 本当に必要なのか?」

 嘉成はふーんと言いながら一番上の項目を表示させた。
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