Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第158話

 
 当事者としてはどうしても歯切れが悪くなるが、ヴルトムは特に気にした様子はない。
 
 「いや、俺ってあの後に入ったからさ。 正直、何とも言えないんだよね。 もしかしたら知ってるとは思うけど、あの後にレラナイトは随分と荒れて色々とやらかしたんだってさ。 外部サイトで名指しで誹謗中傷、晒したいから情報求むとか洒落になってない事までやってたらしいな」
 「うわ、それは知りませんでした」
 「俺も聞いただけで確かめたいとも思ってないから調べてないけどやれる事は何でもやったって感じだったってさ。 ――で、運営にバレて消えた」

 消えた所まではヨシナリも確認しているので驚きはないが、リーダー不在のユニオンが未だに生き残っている事の方が驚きだった。

 「消えたのは俺も知ってるんですけどなんでヴルトムさんが?」
 「あぁ、実は『大渦』の今のリーダーって俺なんだよね」

 それは少し意外だったのでヨシナリは内心で目を見開く。
 だが、少し考えるとヴルトムはその落ち着いた様子からも以前に見た『大渦』の面子を考えると適任なのではないだろうかとも思ってしまう。

 「レラナイトが消えて面子の大半が抜けて、二代目のリーダーになったのがゾンって奴でね。 そいつに頼まれて入ったんだけど、まぁ酷い有様だったよ」

 勢いだけで入った者、レラナイトのしつこい勧誘に根負けした者、誘われたから何となくで入った者。
 残念ながらどうしてもここに居たいと思うプレイヤーが皆無だった。
 入った直後のヴルトムですらこれは厳しいのではないのだろうかと思っていたが、更に酷い事に誘ったはずのゾンがヴルトムにリーダーの座を押し付けて消えたのだ。

 「というかフレンドだったんですね」
 「何回か共同で組んだ事があったから一応、互いに登録だけはしていたんだ。 で、ゾンはリーダー交代に伴ってフレンドリストに載っているプレイヤー全員にしつこく勧誘メールを送って、それに引っかかった俺がこうして今に至っている」
 「あー、大変ですね。 今はどんな感じなんですか?」
 「いや、もうマジで酷くてね。 俺が三代目のリーダーって事になったんだけどその時のメンバーは俺を合わせてなんと三人。 ユニオン資産はほぼ空っぽで、途方に暮れたよマジで」
 「えぇ、人数はともかく資産空っぽってなにがあ――まさか……」

 途中で察したヨシナリは内心でうわと顔を覆う。
 消えた前リーダー、空っぽになったユニオン資産。 それだけ情報が出ていれば考えるまでもない。
 
 「お察しの通りだよ。 ゾンがユニオン資産を持ち逃げしたんだ。 流石にふざけるなと連絡しようとしたらブロックされてたよ」
 「酷いっすね」

 リーダーを他に押し付けた上で逃げるだけでも最悪なのに維持する為に必要なユニオン資産まで持ち逃げするとは何を考えているんだと言いたくなる。

 ――まぁ、自分の事しか考えていないんだろうなぁ。

 一度でもユニオンを潰してしまうと以降、ユニオンの結成権利を失うらしいのでゾンはそれを恐れて押し付けたのだろうが、資産の持ち逃げは明らかにやりすぎだ。
 
 「通報とかはしなかったんですか?」 
 「一応、したよ。 特に何も起こらなかったから運営は合法と認識したか判断中なのかは分からんね」
 
 「大渦」の崩壊に関わった身としてはどう言葉をかけていいか分からなかったヨシナリは曖昧にそうですかとしか言えなかった。
 ただ、こうしてユニオンが残っているという事はどうにか乗り切ったのだろう。

 「とりあえずユニオンとしての方針を決めなきゃいけなかったから、大急ぎで決めてって感じだよ」

 「大渦」が行ったユニオンの再生プランは初心者の補助だ。
 大量の初心者を一時所属といった形で取り込み。 チュートリアルの延長のような形で共同ミッションを補助し、クリア報酬でユニオンの資産を溜めつつ頭数を確保する。

 一時所属としたのは最初に自由に抜けていいとする事で入る事の精神的なハードルを下げる意味合いもあった。 気に入ればそのまま居着く者もいるので割と合理的な運営方法といえる。
 結果、「大渦」はユニオンメンバー五十人を超えたとの事。 元々の人数が十数人だった事を考えると凄まじい。 赤字は返済し、どうにか黒字運営にまで持ち直したようだ。

 最近は機体のビルドに関する相談などを初心者に行い、ステップアップの一助になれればと活動している。
 このICpwは最終的に物を言うのはプレイヤーのスキルだ。 その為、性能に頼るような戦い方よりは自分に合った戦い方を見つけさせ、その長所を伸ばしていく形の方が続きやすい。

 世界で五千万人を超えたと豪語しているゲームなのだ。
 今後も人は次々と入ってくるだろう。 そこを狙い撃ちしたヴルトムはまさしく慧眼といえる。
 
 「何だかんだあったけど俺、このゲーム好きなんだよなぁ。 だから初心者が入ってくるとちょっと嬉しいし、稼ぎつつその助けになれるのならいいかなって思ってさ」
 
 流入は多いがそれに比例して付いていけずに消えるプレイヤーも多い。
 繰り返しになるがこのゲームは良くも悪くもプレイヤースキルが最終的に物を言う。
 その為、万人に楽しめるかと聞かれると難しいとヨシナリは応える。

 現在進行形でド嵌まりしているヨシナリでもこのゲームは誰でも楽しめるかと尋ねられれば首を横に振る。 結局の所、ICpwは自己を高める事に貪欲な人間が上に行けるのだ。
 プラス運営が定めた最低限のモラルを守れる人間だけが続けられるゲーム。

 それを息苦しいと感じるなら早々に辞めるべきだし、気にならないならいくらでも楽しむ余地はある。
 
 「正直、ハイランカーになれる気はしないけどハイランカーになる奴を育てる事は出来るかもしれないだろ? もしも俺が教えた奴がSランクとかになったらさ『こいつは俺が育てた』ってどや顔できるんじゃないかって思ってな。 ついでにユニオンに参加希望者も爆上がりって寸法よ」
 「はは、いいっすねそれ」

 前向きなヴルトムの言葉にヨシナリは少しだけ救われた気持ちになった。
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