Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第176話

 『ヨシナリ! 無事だったか!』

 通信に応じたマルメルの声にはやや疲労が滲んでいたが、やられていない事は朗報だった。

 「中に入ったってのは聞いてたが、今はどのあたりにいる? 『栄光』に混ざって上で暴れてるのか?」
 『いや、俺達は下――地下に降りたんだ。 そこで敵のトルーパーと出くわして戦闘になった。 最初は人型エネミーかとも思ったんだが、ありゃ有人操作だな』
 「その連中ならこっちにも出たぞ。 どうも上位のエネミー枠は連中が担うようだな」
 『うわ、そっちにも出たのかよ。 戦況はどんな感じだ?』
 「あんまりよくないな。 多分、連中はこの施設が無事な限り無限湧きっぽいから、ボスの処理を手伝おうと思って何人かと一緒に突っ込んだ」
 『居場所の目星は付いてるのか?』
 「上だ。 『栄光』のトップが今、派手に戦り合ってるよ」
 『マジかよ。 じゃあこっちは何があるんだ?』
 「今の所は分からんな。 それよりもいけそうなら合流しようぜ」

 話しながらヨシナリはヴルトムに手振りで先に進むように促し、自身が先頭に立って移動。
 
 『あー、それなんだが……』
 
 急にマルメルの歯切れが悪くなる。

 『敵のトルーパーがかなり強くてだな』
 「そうだな」

 マルメルの口調に何だか嫌な予感がし始めた。 根拠は勿論ある。 
 これまでの会話にふわわの名前が一切出てこないからだ。
 ヨシナリは相手の挙動からの先読みを意識していたが、当たって欲しくない流れまで読めるようになったのかと少し自嘲した。

 『ふわわさんのスイッチが入ってしまってな。 特に白黒ツートンの敵がお気に入りで一体潰しただけでは物足りないらしく目についた連中を皆殺しにした後、探しに行くとか言って一人でどこかに行ってしまった』
 
 ヨシナリは思わず頭を抱えた。 またかと思ったからだ。
 彼女の個人技は突出しているが、この手のチーム戦ではそれ故にノイズとなる。
 『栄光』との模擬戦はそれが顕著に表れたのだが、今回もそれが出てしまったようだ。

 ふわわは協調性が全くない訳ではない。 寧ろ、ある方だとは思うが、彼女のプレイスタイルが大きなマイナス要因として働く。 特にツートンカラーの機体は反射神経をブーストしているので自然とふわわと近い戦い方になっている事があって彼女の琴線に触れたのだろう。

 「通信は?」
 『出ない。 いや、出はするんだけど会話が……』
 
 ヨシナリは無言でふわわに通信を繋ぐ。 応答は即座だったが――

 『はははははは、ええやん! こう? これが良いの? わ、凄い、躱した! おっと、惜しい! ちょっと掠ったわ! その爪えぇなぁ、ウチにも使わせてぇな! こう? こうすれば取れるん?』

 通信に混ざって金属が軋みを上げる音がまるで悲鳴のように響いている。

 「ふわわさん? ――……駄目だ聞こえてない」

 ヨシナリはめげずに何度か声をかけたがふわわには聞こえていなかったので小さく溜息を吐いて切断。
 
 「なるほど、良く分かった。 あの人は正気に戻るまで放置しておこう」
 『あー……それしかないよなぁ』
 「お前は今、どうしてるんだ?」
 『いや、実はだな。 ふわわさんを連れ戻そうと追いかけて味方から離れちまってだな。 で、ふわわさんを見失っただろ?』
 「つまり地下で孤立していると?」
 『そうなんだよぉ……。 ぶっちゃけ心細くてさぁ、ついでにここが何処かもわかんないしトルーパーが居たと思ったら敵だしでどうしようもねぇよ』

 ちょっと泣きそうになっているマルメルにヨシナリは努めて優しく頑張ったなと言いながら停止。
 どうやら上と下へ行く道が見つかったようだ。 『栄光』の支援に行くなら上、マルメルを助けに行くなら下だが――

 ――流石にヴルトム達を付き合わせるのは――

 「下で仲間を拾ってから上だろ? 行こうぜ」

 ヨシナリが口を開く前にヴルトムが頷いて見せる。 彼の仲間も特に異論をはさまない。
 いや、それはと反射的に言いかけたが、ぐっと呑み込む。

 「ありがとうございます」
 「いいって。 この先、何かあったら俺の事も助けてくれよ?」
 「分かりました。 借りときます」

 ヨシナリのホロスコープを先頭に全機が下へと向かう。

 「マルメル。 これから地下に降りる。 可能であるなら迎えに行ってやりたいが、こっちはお前の正確な位置が分からん。 派手に敵を潰して回るからどうにかこっちを見つけて合流しろ。 できるな?」
 『わ、分かった』

 坂道を下り、地下フロアへと到達。 
 ヨシナリを戦闘に道なりに進み、大きな通路に出た所で敵のトルーパーが数体居たので全員で銃撃して撃破。 音に釣られて次々に敵が集まってくる。
 
 「よし、ここでいいだろ。 目当てはマルメルだけど、他の味方も集まってくるかもしれないから少し粘ります!」
 「おっし、撃って撃って撃ちまくるぞ!」

 ヴルトムの激に彼の部下はうおおと雄たけびを上げ、持っている重機関銃を連射。
 敵のエネミー、トルーパーを区別なくハチの巣にしていく。 
 
 「無闇にばら撒くな! 一機ずつ確実に潰していけ! 防御力は向こうがダンチだからヤバいと思ったらヨシナリさんを盾にしろ!」

 ヨシナリはスパルトイのシールドを展開して飛び道具を持っている敵トルーパーを優先して狙う。
 基本的に技量が低いプレイヤーばかりなので、雑に狙いを付けて撃ちまくるのが基本スタイルだ。
 シールドを使っている者は居るにはいるが、少数でこの様子だとシールドを使うという発想自体がないか機能を把握していないのかもしれないと疑いたくなる。

 その為、楽に装甲を抜ける武器がある現状、鈍重な動きの相手は撃破は容易だ。
 シールドを展開している機体は無理に撃破を狙わずに足を狙うと勝手に前のめりに倒れて行動不能になる。 スパルトイのシールドは鉄壁ではあるが無敵ではないので、一点に集中して喰らわせれば貫通は可能だ。 

 ――それにしても――

 技量が低い事自体は早い段階から察してはいたが、装備の特性を把握していない者が多すぎる。
 スパルトイに関してもそうだが、シールドは非常に燃費が悪いので適度に停止させてジェネレーターを休ませるのが最適解なのだが、敵は使いっぱなしにしてオーバーヒートを起こして強制冷却まで放置している。

 そうなればシールドが機能しない上、挙動にまで悪影響が出るので仕留めて下さいと言わんばかりの大きな隙だ。 その点を理解していない奴が多すぎる。
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