Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第182話

 「うはー、ひっろいねー」

 ふわわは見たままの感想を述べ、マルメルは「何かボス戦とかしそうなシチュエーションじゃね?」と呟いて警戒している。 ヨシナリは確かにと周囲を見回す。
 ドーム状の広大な空間。 出入口はヨシナリから見て前後、方角を考えるなら東西に一つずつと上。

 ちらりと上を見上げる。 それなりの高さがあるので戻るには多少の時間がかかるだろう。
 仮にボスエネミーが現れた場合、逃げるにあたっては大きな障害となるはずだ。
 一応、他のプレイヤーがこの空間を軽く調べているらしいので安心はしていいとの事だったが、ヨシナリはこのゲームのイベント中の安全といった言葉にはあまり信用を置けなかった。

 感じから他の基地に繋がっているのではないかという話だったが、あくまでかもしれないだけなので別の――危険なだけな場所に繋がっているだけという可能性も高い。
 
 「どっちにしても見てみない事には何とも言えない、か」

 そう呟いて移動を開始した一団の流れに乗って移動を開始する。 
 通路はそこまで広くないので並んで黙々と進む。 

 「なぁ、何があると思う?」

 黙って進む事に耐えられなかったのかマルメルがそんな事を訊ねてくる。
 何があるか分からないから黙っていた方が良いような気がするが、ヨシナリは内心でまぁいいかと小さく首を傾げた。

 「さぁ、何とも言えないな。 この道が何処に繋がっているか次第だ」

 仮に他の基地なり拠点なりであった場合、相当歩かされるのは目に見えている。
 だが、そうでなかった場合は少し厄介な事になるだろう。

 「基地とかじゃないならどんな可能性があるって言うんだ?」
 「……基本的にこのゲームの運営は無駄な物を作らない。 それは設計とかにも言える。 そんな連中がこんな馬鹿みたいに広い空間を地下に作ってるんだぜ? 何か意味があると考える方が自然だろ」
 
 正直、嫌な予感しかしなかったが、見てみない事には何も進まない。
 そんな話をしていると先頭が停止したようで動きの流れが止まった。
 
 ――早速来たか。

 一時間も進んでいないのに何か見つかったと考えると他所の施設ではなさそうだ。
 ただ、何かあったのは明らかだった。 ややあって移動が再開したのでそのまま先へと進むと広い空間へと出る。 さっきのドーム状の空間も大概広かったが、この空間は更に広い。

 上を見ると天井が高い――というより見えない。 今回はドームというよりは円筒形のような印象を受け、空間の中央には見え辛いが先に来たプレイヤーがライトで照らしたお陰で見える巨大な縦穴。 どうやら更に下があるようだが完全に浸水しているお陰でライトの光が届かない。
 他はヨシナリ達が入ってきたような通路が三つ。 要は東西南北に同じような通路が伸びているのだ。

 ツガル達はどうしたものかと縦穴を覗いていた。 
 確かにこれは判断に困る。 通路が三つに縦穴が一つ。 
 単純に調べたいだけなら部隊を四分割すればいいが、仮にボスと出くわすような事態になれば四分の一ではあっさり全滅しかねないとでも考えているのだろう。 

 素直に考えるのならカナタに連絡を取って判断を仰ぐのが無難な選択だが、どうやら通信できる範囲外のようで繋がらないようだ。 他のユニオンメンバーと話し合ってる姿が見える。
 ヨシナリとしては振り分けでも全員で一か所に絞って進むのもありだと思っているが、情報取集という目的を考えるなら全滅覚悟で部隊を割るべきだろうとも思っていた。

 この辺りは仕切りを任されているツガルの判断に――

 「いや、考える必要はなさそうだな」

 ヨシナリがそう呟くと不意に振動。 何かが移動しているようだ。
 発生源は縦穴。 ぼこぼこと気泡が発生し、何かが縦穴から上がってくる。
 ツガル達の反応は早かった。 

 「手榴弾グレネード!」

 持っている者達は何の躊躇もなく持っていた手榴弾を全て縦穴に放り込んだ。
 僅かな間を空けて無数の爆発音。 それでも接近する何かの気配は消えない。
 
 「もう嫌な予感しかしねぇよ」
 「そう? ウチはちょっとわくわくしてるかも」

 下がりながら重機関銃を構えるマルメルに僅かに前に出るふわわ。
 ヨシナリも安全そうな場所まで下がりつつ重機関銃を構えた。 振動が徐々に大きくなり、距離感が掴めそうな位置に来た時点でそれは縦穴から這い出し、姿を現した。

 色は明るい黄色。 照らされるライトの明かりを受けて蛍光色に輝くその姿は――
 
 「イカやねぇ」

 ふわわの言う通りイカだった。 
 烏賊いか。 軟体動物に分類される生物で特徴的な形状もそうだが十本の腕と吸盤で獲物を絡めとる姿が有名だろう。 

 「まぁ、居ると思ったぜ! 撃ちまくれ!」

 その場に居たプレイヤーの大半が何の躊躇もなく発砲。
 重機関銃から吐き出された無数の弾丸がイカ型エネミーを襲う。 
 ――が、弾丸はイカ型エネミーの透明度の高い体内に潜り込みはしたが、破壊力を発揮せずに溶けて消える。 

 「うっそだろ?」

 誰かがそう呟く。 その一瞬後に触腕が次々と味方機を絡めとり、付け根の近くにある口へと放り込む。 体内に取り込まれたトルーパー達がもがきながら凄まじいスピードで溶け、跡形もなくなっていく。 

 「うわ、マジかよ。 勘弁してくれ……」

 マルメルがそう呟くがヨシナリも同じ気持ちだった。
 性質としては前回の防衛イベントで出て来たクラゲ型に近いのだろうがこちらは実体弾を完全に無効化するようだ。 何とも嫌らしい仕込みだった。

 ここに来れるという事は上の設備を奪い、スパルトイや重機関銃の生産に成功した事を意味する。
 装備を充実させた先でそれが役に立たない相手を配置してくる辺り、この運営らしいと思ってしまう。
 実体弾が一切効果がないと判断した冷静な者達は即座に武器をエネルギー系統の物へと切り替える。
 
 エネルギー弾がイカ型エネミーを貫通し、その蛍光色のボディに穴を開けたが僅かな時間で穴は塞がって元通りになる。 効果は薄いように思えるが、ない訳ではなさそうだ。
 
 「光学兵器だ。 一か所に集中して食らわせろ!」

 ツガルの叫ぶような声にエネルギー系の武器を持ち込んだ者達は一斉射撃。
 だが、スパルトイと重機関銃の性能に目が眩んだ者が多く、大半が実体弾に偏った装備構成だったのでエネルギー系の武器を持っている者はかなり少なかった。

 その間にも触腕が暴れまわり次々と味方を絡めとっていく。
 一部、逃げ出そうと企む者もいたが、触腕の動きが見た目以上に早い上、視界が悪い状況でイカ型エネミーから目を話す事は死角を増やす事にしかならず背を向けた者は早々に触腕の餌食となった。
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