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第185話
どうやらヨシナリを突き飛ばしたのはマルメルだったようだ。
彼はヨシナリの機体を安全圏まで突き飛ばし、持っていた重機関銃を連射。
ただ、これまでの戦いで実体弾はイカ型エネミーへの効果は期待できない。
その為、牽制以上の意味はない。 本来なら距離を取る事が正解なのだが、彼はヨシナリを逃がす事を選び、自らが後退する機会を失った。 スパルトイは優秀な強化武装ではあるが、その鈍重さ故にこの場においては足枷でしかない。 逃げる事も出来ない彼は手持ちの武器を乱射して敵の勢いを削ぐ事しかできなかったのだ。
「マルメル!」
「へへ、悪いな。 俺、先に脱落っぽいわ」
マルメルは持っていた手榴弾を全て放り僅かにイカ型エネミーを怯ませたがそこまでだった。
触腕にあっさりと捕まり、そのまま捕食。 瞬く間に機体は原型を失い消えてなくなった。
「クソ」
ヨシナリはスパルトイをパージ。 この場で装着している事は生存率を落とす以上の意味がない。
地下からイカ型エネミーが出て来たという事は下で待機していた面子は全滅だ。
そもそもさっき仕留めたはずなのに何処から湧いてきた? 疑問は多いがどうにかこの場を切り抜ける事を考えないと不味い。 最も安全だと思われた退路が失われたのだ。
残りはあの嵐の壁を突っ切っての脱出だが、あまり現実的ではない。
偵察に向かったフカヤがまともに行動できなかった事を踏まえるとそもそもトルーパーのスペックでは突破できないようにできている可能性が高いのだ。 そんな中を強引に突っ切るなど自殺行為といえる。
これは嵐ではなく、結界と形容した方が適切な現象だ。
あの空を支配するメガロドン型が獲物を逃がさない為の結界、狩場。
囚われた以上、メガロドン型を打倒しなければ安全に出る事は不可能だ。
だからと言ってそれが可能かと考えるとヨシナリは難しいと言わざるを得ない。
決して勝てない相手ではない。 だが、それを実行する為の戦力が圧倒的に不足しているのだ。
戦いを直接見た時間はまだほんの数分だが、メガロドン型の特性は見えた。
単純に重装甲、高火力で押し切るタイプだ。 それ故に正面から叩き潰せばいい。
いや、それしかないと言い換えてもいいが。
――足りない。
何もかもが足りなかった。 戦力、情報、火力、準備あらゆるものが圧倒的に不足している。
これが初見の大規模戦。 過去の防衛イベントを経験したプレイヤー全てが味わった絶望か。
恐らく、この程度で心が折れるようなプレイヤーは要らないと言わんばかりの運営の情け容赦ない仕打ちにヨシナリは震える。 そして同時にどうせ勝てないだろうと嘲笑っている連中の鼻を明かしてやりたいと強い感情が沸き上がった。
――勝機がないなら捻りだせばいい。 どうにか隙を抉じ開けて――
ヨシナリの決意はその僅か二秒後に圧し折られる事になる。
理由は嵐を突き破って何かが現れたからだ。 一瞬、味方かと期待したが、その姿を見て愕然とした。
メガロドン型だ。 信じられない事に全く同じ個体がもう一体現れた。
「あ、これ無理だ」
ヨシナリの心がぺきりと折れる。 同時に意識から締め出していた通信が耳に入った。
「もう一体出やがった!」「冗談だろ? こっちは一体相手で手いっぱいだってのにどうしろってんだ!?」「あーあ、まぁ最初だし、次頑張ろうぜ」「ふざけてんじゃねーぞこのクソゲー!」「失望しましたICpw辞めます」「あー、次は二か月後かぁ、対策どうっすっかなぁ」「お前ら諦めんなよ! まだ逃げて体勢を立て直して……」
挟み撃つ形で現れたメガロドン型相手に逃げられる訳もなく成す術もなく蹂躙される事となった。
ヨシナリも例に漏れず一応、抵抗はしたが逃げられる訳もなく地面を舐めるように放たれた無数の弾丸、無数のレーザー攻撃に晒され何もできずに吞み込まれた。
「お、戻ってきた。 おつかれー」
意識が戦場から締め出され、ユニオンホームに戻ると先にやられたマルメルが小さく手を上げていた。
「あぁ、お疲れ。 それと助かったよ。 ありがとな」
「いいって、そんな事よりやられちまったなぁ。 いやぁ、無理ゲーじゃねこれ?」
「あの状況に持って行かれたら無理ゲーだな」
退路をイカ型エネミーに断たれた時点で完全に詰んでいた。
どちらにせよ負けが見えていた戦いではあったが、負けは負け。
死ぬほど悔しかった。
――クソが。 あのサメ野郎、いつかこの手で八つ裂きにしてやるからな。
話をしているとふわわも戻ってきた。
「いやー、やられちゃったよー。 おつかれ、おつかれー」
「あ、お疲れっす」
「お疲れ様です」
これで星座盤は全滅だ。 一応、イベントの観戦は可能だが、この時点で生き残っているプレイヤーは全体の二割以下で見ている間にも減り続けている。
「つーかあのサメどうしろってんだよ」
「ウチじゃ近づくのも無理やったわ」
「潰したいならAランク以上が最低三人は欲しいですね。 あのサメは基本的に前方に火線を集中して殲滅するタイプで側面攻撃に対する備えはミサイルだけです。 一応、機銃も多少は回るみたいですが限界まで広げても攻撃範囲は九十度ってとこだったので、正面で誰かが引き付けて左右から削るのが無難な処理方法ですね」
「ほえーよく見てるんやね」
「見えてても実行できなきゃ意味ないですよ。 実際、あの面子じゃ引き付けるところまでは上手く行ってましたけど肝心の削る為の火力が足りてませんでした」
あの重装甲を抜きたいならエネルギー兵器でないと難しい。 視た感じ、実弾はあまり効果がない印象を受ける。 結構な数の銃弾――それも敵の使っていた重機関銃を用いたにもかかわらず碌にダメージを与えられなかった以上、実体弾で仕留めるのは現実的ではない。
だが、エネルギー兵器は展開したフィールドに阻まれて通らない。 通すにはフィールドの内側に入る必要がある。
「つまりあのサメを落としたいんやったらフィールド破って懐に入らなあかんって事やね」
「で、入ったら入ったで機銃とミサイルを掻い潜る必要があると。 しかも下手に離れたらフィールドから締め出されるからまた破る所からやり直しと。 そのまますり抜けられないのか? 銃弾は通ってるんだろ?」
「できなくはないだろうが、カナタがいちいち破っているところを見ると無理に突破しようとするとトルーパーの内部パーツにダメージでも入るんじゃないか?」
そうでもなければ彼女の行動に説明が付かない。
彼はヨシナリの機体を安全圏まで突き飛ばし、持っていた重機関銃を連射。
ただ、これまでの戦いで実体弾はイカ型エネミーへの効果は期待できない。
その為、牽制以上の意味はない。 本来なら距離を取る事が正解なのだが、彼はヨシナリを逃がす事を選び、自らが後退する機会を失った。 スパルトイは優秀な強化武装ではあるが、その鈍重さ故にこの場においては足枷でしかない。 逃げる事も出来ない彼は手持ちの武器を乱射して敵の勢いを削ぐ事しかできなかったのだ。
「マルメル!」
「へへ、悪いな。 俺、先に脱落っぽいわ」
マルメルは持っていた手榴弾を全て放り僅かにイカ型エネミーを怯ませたがそこまでだった。
触腕にあっさりと捕まり、そのまま捕食。 瞬く間に機体は原型を失い消えてなくなった。
「クソ」
ヨシナリはスパルトイをパージ。 この場で装着している事は生存率を落とす以上の意味がない。
地下からイカ型エネミーが出て来たという事は下で待機していた面子は全滅だ。
そもそもさっき仕留めたはずなのに何処から湧いてきた? 疑問は多いがどうにかこの場を切り抜ける事を考えないと不味い。 最も安全だと思われた退路が失われたのだ。
残りはあの嵐の壁を突っ切っての脱出だが、あまり現実的ではない。
偵察に向かったフカヤがまともに行動できなかった事を踏まえるとそもそもトルーパーのスペックでは突破できないようにできている可能性が高いのだ。 そんな中を強引に突っ切るなど自殺行為といえる。
これは嵐ではなく、結界と形容した方が適切な現象だ。
あの空を支配するメガロドン型が獲物を逃がさない為の結界、狩場。
囚われた以上、メガロドン型を打倒しなければ安全に出る事は不可能だ。
だからと言ってそれが可能かと考えるとヨシナリは難しいと言わざるを得ない。
決して勝てない相手ではない。 だが、それを実行する為の戦力が圧倒的に不足しているのだ。
戦いを直接見た時間はまだほんの数分だが、メガロドン型の特性は見えた。
単純に重装甲、高火力で押し切るタイプだ。 それ故に正面から叩き潰せばいい。
いや、それしかないと言い換えてもいいが。
――足りない。
何もかもが足りなかった。 戦力、情報、火力、準備あらゆるものが圧倒的に不足している。
これが初見の大規模戦。 過去の防衛イベントを経験したプレイヤー全てが味わった絶望か。
恐らく、この程度で心が折れるようなプレイヤーは要らないと言わんばかりの運営の情け容赦ない仕打ちにヨシナリは震える。 そして同時にどうせ勝てないだろうと嘲笑っている連中の鼻を明かしてやりたいと強い感情が沸き上がった。
――勝機がないなら捻りだせばいい。 どうにか隙を抉じ開けて――
ヨシナリの決意はその僅か二秒後に圧し折られる事になる。
理由は嵐を突き破って何かが現れたからだ。 一瞬、味方かと期待したが、その姿を見て愕然とした。
メガロドン型だ。 信じられない事に全く同じ個体がもう一体現れた。
「あ、これ無理だ」
ヨシナリの心がぺきりと折れる。 同時に意識から締め出していた通信が耳に入った。
「もう一体出やがった!」「冗談だろ? こっちは一体相手で手いっぱいだってのにどうしろってんだ!?」「あーあ、まぁ最初だし、次頑張ろうぜ」「ふざけてんじゃねーぞこのクソゲー!」「失望しましたICpw辞めます」「あー、次は二か月後かぁ、対策どうっすっかなぁ」「お前ら諦めんなよ! まだ逃げて体勢を立て直して……」
挟み撃つ形で現れたメガロドン型相手に逃げられる訳もなく成す術もなく蹂躙される事となった。
ヨシナリも例に漏れず一応、抵抗はしたが逃げられる訳もなく地面を舐めるように放たれた無数の弾丸、無数のレーザー攻撃に晒され何もできずに吞み込まれた。
「お、戻ってきた。 おつかれー」
意識が戦場から締め出され、ユニオンホームに戻ると先にやられたマルメルが小さく手を上げていた。
「あぁ、お疲れ。 それと助かったよ。 ありがとな」
「いいって、そんな事よりやられちまったなぁ。 いやぁ、無理ゲーじゃねこれ?」
「あの状況に持って行かれたら無理ゲーだな」
退路をイカ型エネミーに断たれた時点で完全に詰んでいた。
どちらにせよ負けが見えていた戦いではあったが、負けは負け。
死ぬほど悔しかった。
――クソが。 あのサメ野郎、いつかこの手で八つ裂きにしてやるからな。
話をしているとふわわも戻ってきた。
「いやー、やられちゃったよー。 おつかれ、おつかれー」
「あ、お疲れっす」
「お疲れ様です」
これで星座盤は全滅だ。 一応、イベントの観戦は可能だが、この時点で生き残っているプレイヤーは全体の二割以下で見ている間にも減り続けている。
「つーかあのサメどうしろってんだよ」
「ウチじゃ近づくのも無理やったわ」
「潰したいならAランク以上が最低三人は欲しいですね。 あのサメは基本的に前方に火線を集中して殲滅するタイプで側面攻撃に対する備えはミサイルだけです。 一応、機銃も多少は回るみたいですが限界まで広げても攻撃範囲は九十度ってとこだったので、正面で誰かが引き付けて左右から削るのが無難な処理方法ですね」
「ほえーよく見てるんやね」
「見えてても実行できなきゃ意味ないですよ。 実際、あの面子じゃ引き付けるところまでは上手く行ってましたけど肝心の削る為の火力が足りてませんでした」
あの重装甲を抜きたいならエネルギー兵器でないと難しい。 視た感じ、実弾はあまり効果がない印象を受ける。 結構な数の銃弾――それも敵の使っていた重機関銃を用いたにもかかわらず碌にダメージを与えられなかった以上、実体弾で仕留めるのは現実的ではない。
だが、エネルギー兵器は展開したフィールドに阻まれて通らない。 通すにはフィールドの内側に入る必要がある。
「つまりあのサメを落としたいんやったらフィールド破って懐に入らなあかんって事やね」
「で、入ったら入ったで機銃とミサイルを掻い潜る必要があると。 しかも下手に離れたらフィールドから締め出されるからまた破る所からやり直しと。 そのまますり抜けられないのか? 銃弾は通ってるんだろ?」
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