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第191話
「ひ、必殺技?」
聞き返したマルメルにヨシナリは大きく頷く。
「正確には決め手だな。 今まで見た感じお前の最大の持ち味は中衛での牽制や敵の足止めだが、裏を返すと決定力に欠ける。 集団戦ならそれでいいかもしれないが、個人戦ではここぞって時の一発が必要になると思う」
言われてみれば確かにと思う面もあった。
マルメルは冷静に自分のこれまでの戦いを思い直すとふわわやヨシナリと比べると個人戦での戦闘時間が長い事は自覚している。 ヨシナリにはアノマリーでの一撃、ふわわはあのブレード捌きこそが必殺技だろう。 ならば自分は? そう自問すると一切思い浮かばない。
「あー、チームとしてではなく個人としての俺の戦力アップって事か」
「そうだな。 連携を高めるのも大事だとは思うんだけど、最近色々あって考えが変わったんだ。 個人技を高める事と連携を高める事は競合しない。 両立してこそだ」
ヨシナリが脳裏で描くのはラーガストやユウヤといったハイランカーの戦いだ。
彼等は圧倒的な機体性能と個人技でイベント戦を高い抜いた。 極端な話、圧倒的な個は連携を凌駕する。
なら、個人技を高めた上で連携を強化できたのなら格上相手にも通用するのではないか? それは停滞した状態を脱し、新しい戦い方を確立する一助になるのではないか? そう思い始めたのだ。
「なるほど。 話は分かったけど具体的にはどうすりゃいいんだ? 何か強力な武器を積むとか?」
「今のお前のスタイルを維持しつつ、それにちょっと足していく感じをイメージしてる。 ちょっと見て欲しいんだけど――」
ヨシナリはウインドウを操作して可視化。 マルメルに見せる。
「ハンドレールキャノン?」
「電磁誘導で実体弾を飛ばす奴だな。 機体のエネルギーで撃ち出すから属性としてはエネルギーと実体の両方を兼ね備えた代物だ。 欠点としてはチャージに若干の間があるから連射ができない事とエネルギーの消費量が大きいから撃ってから少しの間、機体の出力が落ちる」
その代わり威力は絶大で、当たりさえすればパンツァータイプの重装甲ですら貫通する。
「ほえー、全然知らなかった。 便利そうだけど使ってる奴をあんまり見ないのは何でだ?」
「さっきも言ったが、撃った後に機体出力が落ちる事と命中精度がよくない事が原因だな。 エンジェルタイプとかだとエネルギー兵器に依存している割合が大きくてな。 出力の管理がかなり重要になって来るから普通にエネルギーライフルとかキャノンでいいやってなるんだ。 キマイラだと重いから邪魔って感じだな。 パンツァータイプは使ってる奴が結構いるらしいけど、個人戦ではあんまり見ないからなぁ……」
コーティングである程度の減衰が可能という欠点がありはするが、エネルギー兵器は基本的に実弾を用いないのでジェネレーターなどの内部装置の軽量化に成功しているのなら余計な荷物は邪魔になる。
そんな理由で上位のプレイヤーはまず使わない。 だが、マルメルのように移動を飛行より地上走行に重きを置き、武装は実弾に偏っているタイプだとエネルギーを使い切れていないので少々の燃費の悪さは問題にならない。
「基本的に真っすぐ飛ぶから照準を外さなければ――要は止まっている的にはまず当てられる。 動いている的に関しては練習が必要だが、動きの誘導が出来ればとどめの一刺しとしてはかなり有効だと思う。 当てられなくても見せるだけで警戒はさせられるからそこまで無駄にならない」
「裏を返すと当てるには技量がモロに出るって事か」
「そうなるな。 どの程度冷静に狙いを付けられるかが、命中率に直結するから練習はいると思う」
マルメルはうーんと首を捻るが、ヨシナリはその反応も織り込み済みだったのか小さく肩を叩くと――
「取り敢えずちょっと模擬戦やろうぜ」
――そう提案した。
マルメルはやや困惑しながら模擬戦の準備を行う。 場所はいつもの市街地フィールド。
相手はヨシナリのホロスコープだが、装備構成がいつもと違った。
腰の短機関銃と突撃銃に腕には取り付け式のハンドレールキャノン。
最後の一つを除けばマルメルのアウグストとほぼ同じ構成だった。
所謂、ミラーマッチだ。 スタイルを合わせて来たのはハンドレールキャノンの使い方を模索する為だろう。 だが、自分と同じ土俵に立たれるのはやや舐められている感がして少し面白くなかった。
――取り敢えず勝つ事は確定だ。
互いの機体が初期位置について戦闘開始。
マルメルは脚部のローラーを使って移動する。 目的地はマップの中心。
とにかく相手の動きの出方を見る。 ヨシナリは射撃の精度に関しては自分より遥かに上だ。
だが、中距離での打ち合いであるなら経験的な意味でも自分が上だと思っている。
まずはヨシナリを捕捉して得意な距離へ持って行く。 そう考えて移動したのだが――
「え?」
マップの中心付近に近づき、ヨシナリの反応も近づいてきたのでビルに張り付き相手の出方を窺おうとしていたのだが、ビルに張り付いた瞬間にアウグストの腹に風穴が開いたのだ。
ビルを二枚貫通してレールキャノンを喰らったと気づいた時には撃破判定され、初期配置に戻されていた。
「な? 使えるだろ?」
ヨシナリの言葉に返事をすることができなかった。
驚きもあったが瞬殺された事が少しショックだったからだ。
「……もう一回頼む」
「あぁ、始めよう」
今のでレールキャノンの恐ろしさは良く分かった。
貫通、威力共に驚異的だ。 だが、攻撃範囲はそこまで広い訳ではない。
仕留めたいならしっかりと当てなければならないはずだ。 ビルの隙間を縫うように移動。
遮蔽物はあまり役に立たないので狙いを絞らせない為に動き回るべきと判断したのだ。
――どうやって当てた?
マルメルからすれば威力よりもどうやって当てたのかが重要だ。
センサー系はヨシナリの方が質はいいはずだが、隔絶した差がある訳ではない。
なのに何故、ビル越しの自分を撃ち抜けたのか? これがビルの上からならばそこまで気にはならなかったが――
考え事をしていたのが良くなかったのか視界の端が小さく光ったと同時に頭部に衝撃。
レールキャノンだ。 頭部から胴体にかけて消し飛ばされた。
大破していないがセンサー類が完全に死んだので何も見えない。 どうにか回避行動を取ろうとしたが、数秒後に放たれた次弾を喰らって大破。
「もう一回頼む!」
「分かった」
三戦目。 二戦目はビルの隙間に入って直線を移動している所をビルの上から撃ち抜かれた。
レールキャノン自体には碌な照準装置が積まれていないので腕に付けるタイプでは狙撃には向かないのだが、ヨシナリは恐ろしい精度で当ててくる。
聞き返したマルメルにヨシナリは大きく頷く。
「正確には決め手だな。 今まで見た感じお前の最大の持ち味は中衛での牽制や敵の足止めだが、裏を返すと決定力に欠ける。 集団戦ならそれでいいかもしれないが、個人戦ではここぞって時の一発が必要になると思う」
言われてみれば確かにと思う面もあった。
マルメルは冷静に自分のこれまでの戦いを思い直すとふわわやヨシナリと比べると個人戦での戦闘時間が長い事は自覚している。 ヨシナリにはアノマリーでの一撃、ふわわはあのブレード捌きこそが必殺技だろう。 ならば自分は? そう自問すると一切思い浮かばない。
「あー、チームとしてではなく個人としての俺の戦力アップって事か」
「そうだな。 連携を高めるのも大事だとは思うんだけど、最近色々あって考えが変わったんだ。 個人技を高める事と連携を高める事は競合しない。 両立してこそだ」
ヨシナリが脳裏で描くのはラーガストやユウヤといったハイランカーの戦いだ。
彼等は圧倒的な機体性能と個人技でイベント戦を高い抜いた。 極端な話、圧倒的な個は連携を凌駕する。
なら、個人技を高めた上で連携を強化できたのなら格上相手にも通用するのではないか? それは停滞した状態を脱し、新しい戦い方を確立する一助になるのではないか? そう思い始めたのだ。
「なるほど。 話は分かったけど具体的にはどうすりゃいいんだ? 何か強力な武器を積むとか?」
「今のお前のスタイルを維持しつつ、それにちょっと足していく感じをイメージしてる。 ちょっと見て欲しいんだけど――」
ヨシナリはウインドウを操作して可視化。 マルメルに見せる。
「ハンドレールキャノン?」
「電磁誘導で実体弾を飛ばす奴だな。 機体のエネルギーで撃ち出すから属性としてはエネルギーと実体の両方を兼ね備えた代物だ。 欠点としてはチャージに若干の間があるから連射ができない事とエネルギーの消費量が大きいから撃ってから少しの間、機体の出力が落ちる」
その代わり威力は絶大で、当たりさえすればパンツァータイプの重装甲ですら貫通する。
「ほえー、全然知らなかった。 便利そうだけど使ってる奴をあんまり見ないのは何でだ?」
「さっきも言ったが、撃った後に機体出力が落ちる事と命中精度がよくない事が原因だな。 エンジェルタイプとかだとエネルギー兵器に依存している割合が大きくてな。 出力の管理がかなり重要になって来るから普通にエネルギーライフルとかキャノンでいいやってなるんだ。 キマイラだと重いから邪魔って感じだな。 パンツァータイプは使ってる奴が結構いるらしいけど、個人戦ではあんまり見ないからなぁ……」
コーティングである程度の減衰が可能という欠点がありはするが、エネルギー兵器は基本的に実弾を用いないのでジェネレーターなどの内部装置の軽量化に成功しているのなら余計な荷物は邪魔になる。
そんな理由で上位のプレイヤーはまず使わない。 だが、マルメルのように移動を飛行より地上走行に重きを置き、武装は実弾に偏っているタイプだとエネルギーを使い切れていないので少々の燃費の悪さは問題にならない。
「基本的に真っすぐ飛ぶから照準を外さなければ――要は止まっている的にはまず当てられる。 動いている的に関しては練習が必要だが、動きの誘導が出来ればとどめの一刺しとしてはかなり有効だと思う。 当てられなくても見せるだけで警戒はさせられるからそこまで無駄にならない」
「裏を返すと当てるには技量がモロに出るって事か」
「そうなるな。 どの程度冷静に狙いを付けられるかが、命中率に直結するから練習はいると思う」
マルメルはうーんと首を捻るが、ヨシナリはその反応も織り込み済みだったのか小さく肩を叩くと――
「取り敢えずちょっと模擬戦やろうぜ」
――そう提案した。
マルメルはやや困惑しながら模擬戦の準備を行う。 場所はいつもの市街地フィールド。
相手はヨシナリのホロスコープだが、装備構成がいつもと違った。
腰の短機関銃と突撃銃に腕には取り付け式のハンドレールキャノン。
最後の一つを除けばマルメルのアウグストとほぼ同じ構成だった。
所謂、ミラーマッチだ。 スタイルを合わせて来たのはハンドレールキャノンの使い方を模索する為だろう。 だが、自分と同じ土俵に立たれるのはやや舐められている感がして少し面白くなかった。
――取り敢えず勝つ事は確定だ。
互いの機体が初期位置について戦闘開始。
マルメルは脚部のローラーを使って移動する。 目的地はマップの中心。
とにかく相手の動きの出方を見る。 ヨシナリは射撃の精度に関しては自分より遥かに上だ。
だが、中距離での打ち合いであるなら経験的な意味でも自分が上だと思っている。
まずはヨシナリを捕捉して得意な距離へ持って行く。 そう考えて移動したのだが――
「え?」
マップの中心付近に近づき、ヨシナリの反応も近づいてきたのでビルに張り付き相手の出方を窺おうとしていたのだが、ビルに張り付いた瞬間にアウグストの腹に風穴が開いたのだ。
ビルを二枚貫通してレールキャノンを喰らったと気づいた時には撃破判定され、初期配置に戻されていた。
「な? 使えるだろ?」
ヨシナリの言葉に返事をすることができなかった。
驚きもあったが瞬殺された事が少しショックだったからだ。
「……もう一回頼む」
「あぁ、始めよう」
今のでレールキャノンの恐ろしさは良く分かった。
貫通、威力共に驚異的だ。 だが、攻撃範囲はそこまで広い訳ではない。
仕留めたいならしっかりと当てなければならないはずだ。 ビルの隙間を縫うように移動。
遮蔽物はあまり役に立たないので狙いを絞らせない為に動き回るべきと判断したのだ。
――どうやって当てた?
マルメルからすれば威力よりもどうやって当てたのかが重要だ。
センサー系はヨシナリの方が質はいいはずだが、隔絶した差がある訳ではない。
なのに何故、ビル越しの自分を撃ち抜けたのか? これがビルの上からならばそこまで気にはならなかったが――
考え事をしていたのが良くなかったのか視界の端が小さく光ったと同時に頭部に衝撃。
レールキャノンだ。 頭部から胴体にかけて消し飛ばされた。
大破していないがセンサー類が完全に死んだので何も見えない。 どうにか回避行動を取ろうとしたが、数秒後に放たれた次弾を喰らって大破。
「もう一回頼む!」
「分かった」
三戦目。 二戦目はビルの隙間に入って直線を移動している所をビルの上から撃ち抜かれた。
レールキャノン自体には碌な照準装置が積まれていないので腕に付けるタイプでは狙撃には向かないのだが、ヨシナリは恐ろしい精度で当ててくる。
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