Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第192話

 「クソッ」

 思わず口からこぼれる。 マルメルは自身の不甲斐なさに歯を軋ませた。
 十連敗。 ただの一度もヨシナリに勝てなかった。
 これだけ負けているので敗因に関しては見えては来たのだが……。

 ――どうしろってんだよ。

 どうやってかは不明だが、動きを読まれている。
 遮蔽物から出た直後、索敵の為に動きを止めた瞬間、細い路地に入って回避が難しくなったと同時。
 隙を晒せばその瞬間にレールキャノンで一撃死だ。 流石に七回目以降は何となくだが、飛んでくるタイミングが掴めるようになったので即死はしなくなったが、完全に回避する事は出来ていない。

 良くて中破、悪くて大破だ。 

 「――とまぁ、上手い事当たれば少々の装甲はどうにでもなるから今のお前にはかなりお勧めできる武器だ。 中距離で撃ち合う時、当たらなくても一発でも見せておけば意識せざるを得なくなるから、相手の動きを制限するのにも使える。 こう構えるだけでも神経質な相手は即座に回避行動に移ると思う。 そこを別の出が早い武器で一撃とかな」

 ヨシナリはハンドレールキャノンを構えた後、素早く残りの手で拳銃を抜いて見せる。
 
 「同ランク帯のプレイヤーや格上は何をしてくるか分かんないし、イベントのエネミーも厄介だ。 それに他サーバーのプレイヤーの事もあるし、試せることはどんどん試していこうぜ!」

 一か月。 自分が試験で落ちた成績を戻す為にこのゲームを離れた期間だ。
 その間にヨシナリは何かを掴んだようで、まるで別人のように成長していた。
 上手くなったのも当然だが、ゲームに対する姿勢が少し変わったのではないかとマルメルは思っている。 

 「なんか変わったなお前」
 「ん? そうか? 腕はそこそこ上がったつもりだけどイベント戦でまだまだだと思い知らされたよ」
 「いや、そうじゃなくて、何というかコツみたいなのを掴んだっつーかなんつーか」
 
 ヨシナリはマルメルの言葉の意味を考えているのかうーんと小さく首を捻る。

 「……前にユニオン対抗イベントがあっただろ」
 「あぁ、俺達が出られなかった奴だな」
 「うん。 そこでSとAランクのプレイヤーと運よく組ませて貰ってな。 その動きをお手本にしてる感じかなぁ。 あいつらマジで凄ぇんだぜ! 特にSのラーガストなんて見てから余裕みたいな反応だし、Aのユウヤってプレイヤーとその支援機なんだが一回、センサーリンク――要は支援機のセンサーシステムを借りたんだが、最高級のセンサーシステムヤバいんだよ! もう、凄っげぇ見える。 見え過ぎてヤバいって言うか、使った瞬間には俺は無敵かもしれないって思うぐらいに見えるんだよ!」

 思い出して少し興奮したのかヨシナリにしては珍しく、言葉に熱が入っていた。
 
 「すっげぇ喋るじゃん」

 その反応にマルメルは苦笑。 
 言われて我に返ったのかヨシナリは少しだけ恥ずかしそうにしていた。
 何となくだが、ヨシナリも件のイベントで打ちのめされてきたというのは伝わったが、自分と違ってそれをモチベーションに変換しているだけなのだ。 

 ――俺も頑張らないとな!

 マルメルはそう気合を入れるともう一回頼むとヨシナリに再戦を申し込んだ。


 しばらくの間、マルメルが特訓しているとふわわがログインしてきた。
 
 「おーっす! 二人で何やってんの? 特訓?」
 「そんな所ですよ。 ほらサーバー対抗戦も近いんで戦力の強化は必須でしょ?」
 「ふーん。 ならウチも混ぜて貰っていいかな?」
 「どうぞどうぞ大歓迎ですよ」

 ふわわがアバターからトルーパーへ姿が変わるが、それを見たヨシナリは内心で小さく眉を顰めた。
 装備がかなり変わっていたからだ。 腰にはやや長いブレード――というよりは装飾から太刀か?

 「正確には小太刀やね。 何とか合金とかいう凄く硬い素材を使ってるらしいんよ!」

 それが二本腰にマウントされており、今まで使っていたブレードやナイフは腰の裏と腕に格納用のアタッチメントを付けて中に収めていた。 そして最も目立つのはその背にある長い刀剣だ。
 柄が肩から見えており先端が足に届きそうになっているところを見るとかなり長い。

 「野太刀って言うんよ。 長いよー」
 「いや、それは分かるんですが、ふわわさんのスタイルからは外れるんじゃないですか?」
 「ふふん。 なら試してみる? 百聞は一見に如かずっていうやん?」
 
 それを聞いてアバターの下でヨシナリの表情が少し変わる。 
 ちょうどいい。 いつかの借りを今ここで返して――

 「だったらここは俺だろ。 ふわわさん、やるんだったら俺とお願いしますよ。 今、ヨシナリにお勧めされた新装備の練習中なんで、付き合ってください」
 「ええよ。 ヨシナリ君もそれでいい?」
 「……了解です。 なら俺はのんびり観戦させてもらいますよ」

 ヨシナリはトレーニングルームから退出し、俯瞰でフィールドを眺められる状態に移行。
 その間に両者は距離を取って戦闘配置へ。 基本的に個人戦は互いにある程度の距離を取ってから行うので近距離主体のふわわよりはマルメルの方が有利なのだが、それをまるでないもののように扱うのがふわわの恐ろしさだ。

 戦闘開始。 開幕と同時に両者とも弾かれたように動き出す。
 マルメルは射界を確保する為なのか高いビルに登って目立つ位置に陣取る。
 ぐるりと見回すように首を動かして――見つけたようだ。 突撃銃を構えたが、そこでヨシナリはおや?と首を捻る。 銃身に見慣れないものが付いていたからだ。

 取り付け式の榴弾砲――グレネードランチャー。 さっきまでの模擬戦で使っていなかったので、ついさっき装備したのだろう。 いつの間にと思いながら見ているとポンと何かがすっぽ抜けたような音を響かせて榴弾がふわわの方へと飛んでいく。

 マルメルもふわわの機動力は理解しているので無理に当てに行かずに範囲の広い攻撃で削る方向に持って行くつもりのようだ。 
 彼なりにふわわへの対策を行っていたようだ。 二発、三発と撃ち込むがふわわは上手にビルなどを盾にして防ぐ。 流石にこの程度で仕留められるほど、甘い相手ではない。

 マルメルは気にした様子もなく撃ち込み続ける。 ヨシナリはそれを見てあぁなるほどと察した。
 ふわわには点よりも面攻撃が有効なのはこれまでに散々見て来たのだ。 
 ならそこを突き詰めるのは当然だった。 ポンと独特の発射音が響き、榴弾が少し小さなビルの根元に命中する。 

 それにより、ビルがメキメキと音を立てて傾き、ふわわの方へと倒れていく。
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