Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第197話

 「それでおねーたま。 今日はこの後、何かあるんですか?」 
 
 あまりいい話題ではないと判断したのかやや強引だが、ポンポンは話題を変えた。
 ツェツィーリエは小さく息を吐く。 意図は察していたが、まあいいかと振られた質問に答える。

 「向こうの返事次第だけど、この後にもう一戦だけ模擬戦をやろうかと思ってるわ」
 「おねーたまが出る感じですか?」
 「そうしたいんだけどあたしが出ると勝負にならなくなるからあんた達が出なさい」
 「はぁ、相手は?」
 「『星座盤』ラーガストとユウヤが一時的に入った所よ」

 それを聞いてポンポンは小さく首を捻る。

 「確か人数三人の弱小じゃありませんでした? 当時も本来の面子はリーダーだけが出て来ただけでしたよね? 大方、人数足りなくて出場を見送ろうとしてた所をラーガスト達に目を付けられた感じじゃないっすか?」
 「私もそう思うけどあのラーガストがわざわざ組みに行くぐらいだから何かあるんじゃないかと思ってね」
 「ふーん。 映像で見た限りそんなに大した強さじゃないと思いますけどね」
 「それを確認しておきたいのよ。 都合がよかっただけならそれでもいいし、ラーガストが目を引く何かがあるのならあたしも見ておきたい」
 「なるほどー。 了解っす。 ウチらで適当にぶちのめしときますよ」
 「よろしく頼むわ。 場合によっては今すぐって事にもなるから準備だけはしておきなさい。 他のメンバーにも連絡はしておいたから頑張りなさいな」
 「あー、あたしの参加は確定なんすね」
 「よろしく。 負けたら恥ずかしいわよ」
 「リスクしかないなぁ……」

 ポンポンは変にプレッシャーのかかるのは嫌なんだけどなと小さくぼやいた。



 「――模擬戦の申し込みが来ました」

 場所は変わってユニオン『星座盤』のユニオンホーム。
 ヨシナリはマルメルとふわわに少し前に送られてきたメールの内容を説明した。
 
 「送ってきた相手はユニオン『豹変』。 Aランクプレイヤーツェツィーリエが率いる強豪だ」
 「その前にしつもーん」
 「はい、ふわわさんどうぞ」
 「その豹変さんは何でウチみたいな弱小に声をかけたん? 模擬戦やるなら他に相手ぎょうさん候補がいそうやない?」
 「あー、向こうから特に何も言われてないから俺にもはっきりした所は分かりませんが、恐らくですが前のユニオン対抗戦で一時的とは言えSランクのラーガストが所属してた事で興味を持たれたと思ってます」
 「ふーん。 ま、ウチとしてはおもろい相手と戦れるのは歓迎やしええよー」
 「俺も賛成だ。 違う相手とやって経験を積んどきたい」
 「決を採る手間が省けたな。 対戦形式は三対三のチーム戦でステージはいつもの市街地。 対戦相手の簡単なデータは向こうが送ってきたので軽く見ておこうか」

 ヨシナリがウインドウを可視化させると三人のプレイヤーとその簡単なプロフィールが出て来た。
 
 「全員がBランクの強敵だ。 油断するとあっさりやられるから絶対に気を抜くなよ」
 「そんな真似できるほど強くねぇよ」
 「あっはっは。 将来的には楽に勝てるようになりたいねぇ」
 「胸を借りるつもりで全力で叩き潰しに行こう。 連中をぶちのめせば多少は成長を実感できるだろうし、そろそろ対エンジェルタイプも視野に入れておきたいからこの手の模擬戦はいい機会だ」

 言いながらヨシナリはウインドウを操作。

 「――取り敢えず個別に行こう。 まずは最初の一人、プレイヤーネーム『ポンポン』。 ランクはB、使用機体はエンジェルタイプの上位機種『アークエンジェル』だ。 エンジェルタイプとの違いはジェネレーターなどの挿入スロット――要はジェネレーターが余分に積める事にある」
 「出力は通常のエンジェルタイプより上って事か」
 「それもあるけどエンジェルタイプって武装と推進がほぼエネルギー系に偏ってるからとにかくスタミナがないんだ」

 出力とコンデンサーの容量には常に気を配っておかないとガス欠で墜落なんて事もざらにあるらしい。 
 その為、エンジェルタイプを使用する場合、真っ先に覚えなければならない事はスタミナ管理だ。
 アークエンジェルタイプとその上位互換である「プリンシパリティ」はその欠点を補った機種と言える。 前者は使用可能ジェネレーターの規格を絞る代わりに内蔵可能数を増加させ、後者は機体を大型化する事によりより大容量のジェネレーターとコンデンサーを内蔵して継戦能力を大きく高めた機種だ。

 「基本的には電源周りなんやね」
 「エンジェルタイプは武装面ではほぼ完成しているんで自然と動力系の強化に比重が傾くらしいですよ」
 「エンジェルタイプについては分かったけど、肝心のプレイヤーの実力とか戦い方の傾向とかは分かんないのか?」 
 「ないな。 名前とどんな機体かの大雑把なデータだけだ。 動きの傾向とかは戦いながら掴めって事だな。 残り二人はプレイヤーネーム『ニャーコ』と『まんまる』。 使用機体は前者はノーマルのエンジェルタイプで後者はプリンシパリティだ」

 流石に戦闘スタイルまでは教えてくれなかったが、機体の装備を見れば何となくだが分かる。
 
 「一応、装備や機体からの推測だが、ポンポンは変に尖った部分のないバランスタイプ。 ニャーコはオーソドックスな近、中距離戦タイプ。 最後のまんまるは高出力に物を言わせた遠距離主体と見ている」
 「なるほど。 ランクも機体スペックも向こうが上、色々ときつそうだが面白いな。 負けても失うもののない模擬戦だから気楽にやれるのもいい」
 「相手が誰であろうとも楽しめればそれでウチは満足やわ」

 二人のモチベーションは高い。 格上だったので難色を示す可能性もあったが、杞憂に終わってヨシナリは内心でほっと胸を撫で下ろす。 
 言っていなかったが、今回戦う三人のプレイヤーはBランクの中でも平均よりも上の連中だ。
 こいつ等とまともに戦えるなら将来踏み入れるであろうBランクの戦いについていける事の証左となるので自身の力を試す意味でも提案としてはありがたかった。
 
 「ちなみにいつ?」
 「こっちに合わせるからいつでもいいって言ってるけどどうする?」
 「ええやん。 この後すぐに戦ろ」
 「マルメルはどうだ?」
 「テンションもいい感じに上がっているしいいんじゃないか?」
 「オッケー、直ぐで大丈夫って返事しとく」

 返信用のメールを打っている間、ふわわとマルメルはやる気を漲らせており、ウインドウを操作して機体の調整を行っていた。
 今回は完全に格上の相手との勝負だ。 今の自分達が何処まで通用するか――

 「楽しみだ」

 ヨシナリはそう呟いて送信ボタンを押した。 
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