Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
232 / 865

第232話

 これまでの攻防でランドルフの技量は凡そ知れた。
 思い切りの良い踏み込み、迷いのない斬撃は見た目よりも伸びるので近接スキルは決して低くはない。
 ただ、斬撃のバリエーションとしては振り下ろし、横薙ぎ、刺突の三種類と少ない。

 戦い方の組み立てとしてはその三つの組み合わせと武器のギミックで相手に見切らせないようにしている。 
 次に武器だが、見えている範囲ではロングソードのみ。
 機体とセット運用する事が前提の武器で連動する事で機能を発揮すると見ていい。

 恐らくはエネルギー供給を受ける事で切断力を上げるといった所だろう。 ギミックで柄から刃を延長させて間合いを誤認させるのは上手い使い方ではあるが、伸ばす一辺倒なので躱す事自体はそこまで難しくない。
 要は斬撃の軌道上に居なければいいので、攻撃の巧みさで言うならヨシナリの方が上だ。

 だが、脅威度としてはランドルフの方が遥かに高い。 
 彼の機体であるレザネフォルの最大の長所――というよりはランドルフの戦いの前提は防御にある。
 全身を覆った光の所為で斬撃が届かない。 エネルギー系の防御手段である事は分かるが、理屈はさっぱり分からなかった。 ついでに光量を瞬間的に上げる事でセンサー類にダメージを与えてくるのも面倒だ。

 ――こういうのはヨシナリ君の領分やと思うんだけどなぁ……。

 防御手段に絶対の信頼があるからこそ思い切りのいい攻撃を繰り出す事ができるのだろうが、攻撃に関しては正直これまでに遭遇した強敵に比べると数段劣る。
 つまり、ランドルフというプレイヤーは戦ってもあまり面白くない相手だった。

 防御手段を剥がす方法さえ見つけられれば何とかなりそうな点も白ける要因で、どうしよっかなぁと考えながら斬撃を躱す。

 『如何かな? 我がレザネフォルの光りの守りは?』
 「うーん。 めんどいわー」
 『はっはっは、尋常な勝負だ。 卑怯とは言うまいな?』
 「それはそうなんやけどー。 うーん、ならウチもズルしちゃおうかなー?」
 『勝つ為に必要ならば行うべきだ。 貴女と我々は互いに滅ぼし合っているのだ。 卑怯も何もないだろう』
 「あ、そう? じゃあ遠慮なく」

 ふわわは斬撃を躱しながらユニオン専用の通信を開く。
 
 「ヨシナリ君元気ー?」
 『……何とか生きてます。 戦闘中に連絡してくるとかどうかしましたか?』

 ややあって応答したヨシナリは戦闘に意識の大半を割いているのか反応はややおざなりだ。
 ふわわは気にせずに話を続ける。

 「ウチ今最前線にいるんやけど、面倒なのに絡まれてなぁ。 ちょっと知恵を貸して欲しいねん」
 『あー、感じからしてAランク以上の相手ですかね?』
 「そうなんよー。 攻撃が全然通らへんから困ってんねん。 どうしたらええと思う?」
 『当たらない? それとも防がれる感じですか?』
 「防がれる感じやね。 なんか全身から光出してそれに遮られて刃が通らへんのよ」
 
 ふわわは話が終わるまで逃げに徹する事にしたので武器を鞘に納めて躱しながら困ってんのよーの付け加えた。

 『光? エネルギー系のフィールドって感じですかね?』
 「似てるけどちょっと違うと思う。 全身を覆う感じで光ってんねん」
 『うーん。 実際に見てみないと何とも言えませんね』
 「そこを何とか! お願い~」 
 
 ヨシナリは「えぇ……」と少し嫌そうな声を出したが、ちょっと考えますねと言って小さく唸る。
 少しの間、考えていたヨシナリはややあって可能性を口にした。


 ――素晴らしい。

 ランドルフは目の前の敵に対して敬意に近い物を抱いていた。 
 ソルジャータイプを使用している所を見るとランク自体はそこまで高くないのだが、こと近接戦のスキルに関してはこれまでに出会ってプレイヤーの中でも五指に入る。

 恐らく最近始めたばかりのルーキーだろう。 
 ――にもかかわらず、Aランクである自分の斬撃を次々に躱す。
 スペック差があるにもかかわらずこれだ。 純粋なプレイヤースキルに大きな開きがある事は間違いない。 恐らくだが、機体スペックの差がなければ自分はあっさりと負けているだろう。
 
 そう確信できるほどの動きだった。 
 ふわわは無言で躱し続けているが、もしかしたらこの状況を打開する策を考えているのかもしれない。
 自分を相手取りながら考え事をする余裕まである。

 素晴らしい。 なんて素晴らしいのだろう。
 遠目で見た時から気になっていた。 自分と同じく剣を主兵装としている機体。
 戦えば自身の成長の糧になると思い、挑んだのだが結果は想像以上だ。

 ランドルフの愛機である「レザネフォル」。
 その真髄は防御にある。 「アウルムアーマー」防御を司る兵装だ。
 原理としてはエンジェルタイプやパンツァータイプが使用する防御フィールドに近いのだが、やや毛色が異なる。  全身の噴出口から噴き出すエネルギーをフィールド内に留める事でありとあらゆる攻撃を弾き返す。
 
 エネルギー系の攻撃はよほどの高出力なものでもない限り完全に無効化し、物理攻撃ですら噴出する奔流に遮られて機体まで届かない。 出力に物を言わせた彼らしい防御兵装と言えるが、当然ながら欠点も多く存在する。

 まずは燃費。 アウルムアーマーは非常に高い防御効果を齎す代わりに機体の内蔵エネルギーを凄まじい勢いで食い潰す。 並の機体であるなら数秒で枯渇するような消費をどう賄っているのか?
 答えはコンデンサーにある。 レザネフォルに内蔵されているコンデンサーにはエネルギーの吸収機能が存在し、機体が吐き出したエネルギーを吸収してリサイクルする事を可能としているのだ。

 当然ながら収支のつり合いが全く取れないが、維持する時間を延ばす程度には回復できるのでアウルムアーマーを瞬間的ではなく少しの間、展開する事を可能としていた。
 圧倒的な防御力で敵の攻撃を受けつつ正面から敵を叩き潰す。 これがAランクプレイヤー、ランドルフの戦闘スタイル。 

 上段からの振り下ろしからの刺突か横薙ぎ。 
 ふわわの見立て通り、攻撃のバリエーションはそう多くない。 
 だが、そんな彼がここまでAランクの地位を維持できているもう一つの要因は武器だ。
 「アール・デコ」、「アール・ヌーヴォ」黄金のロングソード。

 機体からのエネルギー供給を得て切断力を大幅に強化された剣は並の武器では受ける事すら叶わない。 ふわわはその事に気付いてはいないが、無意識に受けられないと理解していたのか全て躱している。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。