Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
233 / 865

第233話

 ランドルフ自身も理解はしていたのだ。
 自身の攻撃が単調で読まれやすいと。 だが、彼はそれがどうしたと笑う。
 単調であるなら来ると分かっていても躱せないほどに練り上げればいい。

 彼は欠点を克服するよりも長所を最大限に伸ばす事のみを考えてここまで来たのだ。
 だからお前はここが駄目だと言われたところでその通りだと笑って受け流す。
 それは彼の欠点でもあるが、間違いなく大きな強みでもあった。

 ふわわはランドルフの繰り出した斬撃を次々に躱すが、彼も馬鹿ではない。
 何度も繰り返し、彼女の回避モーションを何度も見た。
 そろそろ目が慣れて来た頃だ。 ふわわは確かに近接戦での立ち回りはランドルフよりも遥かに上を行っている。 しかし、人間である以上は何かしらの癖があるはずだ。

 ランドルフは注意深く観察し、それをどうにか読み取ろうとする。
 一番いいのは鍔迫り合いに持っていく事だ。 そうすれば彼女の武器を破壊する事ができる。
 武器を破壊される事は自身の戦意を砕かれる事に等しい。 個人差はあるが、動揺はするはず。
 
 振り幅が小さいとしてもそれは明確な隙として動きのリズムを崩す。
 振り下ろしは無駄のない挙動で躱され、追撃の横薙ぎに繋げて刺突。
 ふわわは横薙ぎを跳躍で躱し、刺突を空中でブースターを噴かして回避する。

 その繰り返しだが、今回は違う。 刺突の二連撃を喰らわせる。
 同じ攻撃の組み合わせで散々、意識に刷り込んで置いたのだ。 これは躱せないはずだ。
 脳内でシミュレートして勝負に出る。 振り下ろし、予想とまったく同じ挙動で躱す。

 横薙ぎの一撃、そして回避の為の跳躍――しない。 
 ふわわは驚くべき事に掻い潜って懐に入ってきたのだ。
 流石にこれは想定していなかった。 ランドルフは驚きに目を見開く。

 「単純なのはえぇけど、それがいつまでも通用すると思ってるのはちょっと舐めすぎと違う?」 
 『侮ってなどいないとも。 自身のスタイルを貫徹する。 それこそが我が騎士道!』
  
 何の迷いもなくそう返すランドルフにふわわはつまらなさそうに「ふーん」と返すと指を揃えて腕を突きこんで来る。 所謂、貫手という奴だ。
 当然ながらアウルムアーマーによって遮られる。 何が狙いかは不明だが、動きが止まったのなら好機。 何かする前に捉えて――

 「抜ーけた」

 ――強引にアウルムアーマーを突破したふわわの腕から謎の液体が飛び出す。

 頭部から胸部にかけて液体が叩きつけるようにぶちまけられた。
 
 『ぐ、なんだこれは!?』

 液体は瞬く間に白濁し、パキパキと音を立てて凝固を始める。
 そこでこの液体がグルー――接着剤である事に思い至った。 
 グルーキャノンを内蔵している事を全く想定していなかったランドルフは僅かな時間だが、思考が真っ白になるがすぐに立て直す。 視界がほぼゼロになったが、センサー類はまだ生きている。

 捕捉は可能だ。 そんな事よりもふわわの機体を捕まえる事が重要だ。
 レザネフォルのパワーはソルジャータイプと比較にならない。 
 力比べなら絶対的な自信がある。 掴もうとして腕は空を切った。

 センサー類はふわわの居場所を正確に捉えていたが、視界を封じられているとここまで間合いが図れないのかとランドルフは内心で歯噛みする。 だからと言って戦闘に支障はない。
 
 『視界を封じたのは見事だが、この程度で我がアウルムアーマーは破れんよ!』
 「ふーん? そう? ご自慢の金ぴか鎧、よーく見てみ?」
 『何?』

 ステータスをチェックするとアウルムアーマーにエラー。
 エラー内容は噴出口に異物。 どうやらさっきのグルーが詰まって動かなくなったようだ。
 だったらと出力を上げて強引に剥がそうとするが、機体内部の温度が急上昇するだけで詰まりは解消できない。

 「宇宙船の修理に使うような代物やから簡単には剥がれんよ。 さて、鬱陶しい防御も剥がれたし、そろそろ終わりにしよか?」
 『我がアウルムアーマーを封じた手腕は見事! だが、こちらには愛剣「アール・デコ」と――』

 ランドルフの言葉は最後まで紡がれる事はなかった。
 気が付けば胸部装甲の隙間を狙って太刀が突き立てられていたからだ。
 アウルムアーマーなしでも堅牢を誇るレザネフォルの装甲を何の抵抗もなく刃を突き立てた。

 迷いなく継ぎ目を狙った所から早い段階から装甲の弱い部分を見切られていたようだ。
 こうなると言い訳のしようがない。 完敗だった。

 『見事、潔く敗北を認めよう。 素晴らしい剣技であった。 叶うならばまた見てみたい。 良ければ連絡先――』
 「あ、ナンパはお断りで」

 刃が捻られてレザネフォルのコックピット部分が破壊され、彼は退場となった。
 

 力を失い、膝から崩れ落ちたレザネフォルを見てふわわは小さく息を吐いた。
 防御を信じて思い切りのよい攻撃を繰り出せる環境を常に維持し続ける。
 安全地帯を確保した上での戦い方は悪いとは言わないが、ふわわの好みとは合わない。

 その為、ランドルフというプレイヤーは彼女にとってあまり面白味のない相手だった。
 だからと言って弱かったかと聞かれればそうでもないと答える。
 実際、あの防御を破るのは非常に難しかった。 最終的には思いついただろうが、ヨシナリのアドバイスがなければもっと時間がかかっていたとみていい。

 「ふぅ、ちょっと疲れる相手やったなぁ。 さーて、戦場は――って結構離れてもうたなぁ」

 ぐるりと周囲を見回すと最前線から随分と離れてしまっていた。
 戦っている内に戦場からもかなり離れてしまっている。 道理で横槍が入らない訳だと納得し、ふわわは次の戦いを求めて最前線へと戻っていった。
 

 戦況は膠着と言いたいところではあったが、日本側が押されている状態だった。
 致命的な破綻こそ起こっていないが、徐々に押し込まれ始めている。
 本来ならメインの火力として機能するはずのAランク以上のハイランカーがほぼ全員抑え込まれている事が要因として大きかった。 アメリカ側はその辺りを徹底しており、日本のAランク一人に付き、同格を二人当てる事で抑え込みつつ確実に数を減らそうとしている。

 互いに互いの戦力の内訳を把握している訳ではないが、二対一が成立している時点でAランクの数は日本とアメリカでは倍近くの物量差がある。
 そんな中、最前線でカナタは敵のAランクを四機纏めて相手をしていた。

 理由は単純で味方のAランクがやられたのでフリーになった機体が流れて来たのだ。
 当然ながらカナタ一人に戦わせるなんて真似は彼女の仲間達が許容しない。
 『栄光』のメンバーはどうにか彼女の死角を埋めようとしていたが――
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。