Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第234話

 ヘレボルス・ニゲルの大剣がエネルギーの刃を全開にして振るわれる。
 最大拡張された光の剣が戦場を薙ぎ払い、無数の敵機が両断されるがそれを掻い潜る者達がいた。
 真っ先に抜けたのは下半身が蜘蛛のような形状をした機体。 多脚の走破性と速度を以ってカナタの斬撃を躱し、腕を振るうと五本の指から糸のようなものが伸びる。

 カナタはエネルギーの刃で受ける事を考えたが、嫌な予感がしたので下がって回避。
 糸は軽く地面を撫でると地面に無数の切れ込みを入れる。 凄まじい切れ味だ。
 蜘蛛は残った腕を振るおうとするが、何かに気付いたように両手を合わせて広げると指と指の間に無数の糸が張り巡らされる。 それを大きく広げると僅かに遅れてそこに銃弾が突き刺さった。

 センドウの狙撃。 狙いは正確だったが、編まれた糸が大口径の銃弾をあっさりと止めていた。
 ならばと言わんばかりに今度はエネルギー弾が飛んでくるがそちらも同様に編まれた糸に阻まれる。
 こちらは貫通すらせずに消滅している点を見れば何らかの手段でエネルギー系の兵器を無効化されているのは明らかだ。 恐らく大剣の刃も無効化される可能性が高い。

 「数が違いすぎる」

 カナタは思わず呟くが、息吐く暇を与えず一機凌いでもまだ次が来る。
 次は人型だが、フレームに最低限の装甲。 目立つ武装は両手の指の間から伸びる長い爪状のブレード。 全てが赤熱しており、見るからによく切れそうだった。 何より目を引くのは逆関節の脚部。 明らかにスピード特化の機体だ。

 闇雲に動くと捌ききれない。 この手の敵はまずは敵をよく見て――

 ――ここ!

 相手の攻撃モーションに入るタイミングを見極めて僅かに仰け反るように横薙ぎの一撃を回避。
 追撃に入る敵機に対して大盾を持った機体が割り込む。 イワモトだ。
 防御を追求した巨大な縦長のタワーシールドは敵機の斬撃にも耐えるが、一撃受けただけで爪跡がしっかりと刻まれている点から何度も耐えられる代物ではなさそうだった。

 「イワモトさん!」
 「カナタ君! 気を抜くな、次が来る!」

 カナタの回避先を狙って三機目が襲い掛かる。 
 こちらも形状は人型だが、大型のバイクに乗っており、手にはエネルギー式の長槍。
 騎兵が使用するような突進用のランスだ。 凄まじい直線加速で突っ込んで来る。

 これは躱せないと判断したカナタは大剣で切っ先を受け流す。 際どいタイミングだったが、どうにか躱せた。 ただ、両腕の関節に僅かにダメージがある。
 何度も使えない手だ。 長槍装備の機体はそのまま通り過ぎて大きく旋回、再度襲い掛かろうとしていたが、横から数機のキマイラタイプが攻撃を仕掛ける。

 ツガルと他のメンバーだ。 
 無数の機銃やレーザー砲が襲い掛かるが、展開されたシールドに弾かれて通っていない。
 そして最後の一機。 重装甲、四本足、両腕にガトリング砲が三つも束ねられている。
 
 両肩には大口径のエネルギー砲。 背中にはそれを賄うためのバックパック。
 おまけに腰にはミサイルポッドまでついている。 トルーパーにどれだけの火力を積めるのかを挑戦したかのような機体だ。 重装備の機体は味方が離れており、孤立しているようにも見えるが巻き込まれない為にだろう。 射線が開いたと同時に斉射を開始。

 凄まじい密度の攻撃が飛んでくるが、カナタは冷たい汗をかきながら全力で荒野を駆け抜ける。
 『栄光』はカナタを中心に戦場を進んでいたが、正面からぶつかるとアメリカ側との層の違いを感じる。 とにかくキマイラタイプが多く、ソルジャータイプが少ない。

 そしてAランク以上の機体の数がほぼ倍。 Sランクが一機しかいないのは不幸中の幸いだが、あちこちで味方のユニオンが壊滅しているといった連絡が入り、フレンドリストを見ると結構な数の味方が脱落している事がよく分かる。 初手の衛星攻撃はラーガストによる衛生落としで多少の巻き返しは出来たと思うが、地力の差は如何ともし難く明らかに押されていた。

 本来なら拠点まで下がって回復や補給のローテーションを組むのが運営の想定なのだろうが、戦力差があるのでどうにもならない。
 この圧倒的な不利を打開してくれそうなラーガストは敵のSランクと未だに激しく戦り合っているようで、動いていない。 つまり勝ちたいのなら変に他者に期待せず、自力で勝ちを捥ぎ取りに行かなければならないのだ。

 敵のジェネシスフレームは四機。 戦力差は単純に四倍だ。
 センドウ達がどうにかその差を埋めるべく頑張ってくれてはいるが、厳しいと言わざるを得ない。
 幸いにも敵機はあまり連携を意識していないのか誤射をしないように意識はしているようだが、それだけだった。 付け入る隙はそこにしかない。

 そもそも彼等が連動しているなら自分はとっくにやられている。
 
 ――確実に一機ずつ仕留める。

 その為に残りの三機を短時間でも完全に抑える戦力が必要だ。
 厳しいと言わざるを得ない。 こんな時、ユウヤが居れば何とかなったというのに――
 カナタは幼馴染の少年の事を思い出して胸中に怒りが灯る。
 
 折角、誘ってるのに未だにこちらに来ない。 
 挙句の果てに『栄光』に入るぐらいなら『星座盤』に入る?
 思い出しただけで腹が立つ。 比較して悪いといった気持ちはあるが、『星座盤』のような小さい所に入るより『栄光』に入った方が全然、いい待遇が待っているというのに何が不満なのか。

 ――あぁ、腹が立つ!

 大剣『レンテンローズ』を思いっきり振るう。 
 突進してきた敵機の攻撃を逸らし、両腕にダメージが入る。
 
 「悪い! 俺達じゃ抑えきれねぇ」

 ツガルからの通信が入るが「気にしないで」と返す。
 特にバイク乗りと蜘蛛が厄介だった。 爪と大砲は比較的ではあるがまだマシだ。
 その為、先に処理するなら脅威度の高い二機からになるのだが、流石に四機の攻撃を捌きながらを特定の相手を狙うのは難しい。 機体にも徐々にダメージが蓄積されている。

 このままでは押し込まれるのが目に見えているので思い切った手が必要になるだろう。
 レーダー表示を見ると味方の数も徐々に減っていくのが分かる。
 打開する為の何かが欲しい。 何か――

 そんな彼女の願いに応えるかのように無数の銃撃と砲撃が敵の大砲持ちに降り注ぐ。
 何だと飛んできた方を見ると無数の味方機がこちらに向かってきていた。

 「騎兵隊の登場だぜ! これ、あたし等かなり美味しい登場じゃないか?」

 識別は味方、所属は大半の機体は『豹変』所属のプレイヤー達だった。
 そして一機『星座盤』の機体が混ざっている。
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