Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
239 / 865

第239話

 ふわわが戻ってきたのは計算外だが好都合だ。
 ヨシナリは戦場を俯瞰。 敵のAランクが一機減った事でこの場の戦況は大きく傾いた。
 逆関節はふわわが抑えているので対処が必要なのはバイク乗りと蜘蛛型。
 
 カナタと相性が悪いのは――バイク乗り。 カナタの得意レンジは中、近距離。
 機動性は決して低くはないが、直線加速で飛び回るバイク乗りとはあまり相性が良くない。
 逆に蜘蛛は足を使わずに特殊武装で敵を翻弄するタイプなので比較的ではあるがまだマシだろう。

 「バイク乗りを抑えます」
 「おう、やるゾ!」

 まずは敵の分析からだとヨシナリはアノマリーを撃ち込む。
 カナタを仕留めようとしていた敵機は背後からの一撃を体を傾ける事で苦も無く躱す。
 躱される事は想定内だ。 そして仕留める事がほぼ不可能なのもまた同様に。

 「ポンポンさん。 そろそろ……」
 「分かってる! さっきの大砲持ちを殺ったからナ! 他がなだれ込んで来るゾ!」

 ヨシナリが言い切るまでもなく、状況を察したポンポンが味方に警戒を促す。
 同時にこれまで空白地帯のようになっていたこの戦場に無数の敵機が流れ込んで来る。
 これまで遠巻きに『栄光』の機体と戦っていたのは例の熱波に巻き込まれたくないからだ。

 その危険がなくなった以上、遠巻きにしている理由がないのでヨシナリ達を屠る為に大量の敵機が突っ込んで来る。 

 「散開。 数は敵の方が多いので囲まれないようにだけ注意を!」

 そう言いながらヨシナリは変形して急上昇。 それを追いかけるようにキマイラタイプが――十機。

 ――多いな!

 シックスセンスを最大限に活用し、こちらを狙ってくる敵機の様子を確認。
 キマイラの適正ランクはCからBだ。 Eで使っているヨシナリが異常なだけなのだが、ランクが高いだけあってどいつもこいつも動きが良い。 ただ、それでもピンキリは存在する。

 特にキマイラタイプは飛行にテクニックを要求する機体なので、技量の差が露骨に出る機体でもあった。 動きを見ればそれが顕著だ。 
 ヨシナリはインメルマンターンで敵機を振り切ろうと加速。 他は練習中だが、失速せずに旋回できるマニューバは敵機を振り切る時に絶対に必要なのでこれだけはと死ぬほど練習したのだ。

 動きのクオリティは中々の物と自負している。 ぴったりと張り付いてきたのは五機。
 残りは諦めて回り込む挙動を取る。 判断が早いのは素晴らしいが、攻撃の優先順位ははっきりした。 まずは数を減らさないと話にならないので削れるところを削らないと不味い。

 ロックオン警告。 変形して減速し、急降下する。
 速度は落ちるが人型の方が動きの自由度は高い。 振り返ってアノマリーを実弾に切り替えて連射。
 三機から発射された無数のミサイルを迎撃。 固まっている内に撃ち落として誘爆させる。
 
 それでも三分の一は無事に発射されて突っ込んで来た。 変形させて急降下。
 上昇しても良かったが、回り込んだ機体が待ち構えているので降下せざるを得ない。
 味方の援護に期待したいところだが、ポンポン達も目の前の敵相手に手が離せないようで難しそうだった。 その為、援護が期待できる下を選んだのだ。
 
 「ヨシナリ!」

 背後に迫っていたミサイルが撃ち抜かれて爆散。
 マルメルが突撃銃でミサイルを撃ち落としたのだ。 

 「こっち引き付けろ!」
 「頼む!」

 地面スレスレを飛んでマルメルとすれ違う。 追ってきた敵機にマルメルが腰にマウントした短機関銃と突撃銃、空いた手に回転式拳銃を構えてその全てを連射。
 
 「全弾持って行け!」

 追ってきていたキマイラタイプは弾幕に散開して回避に入るが一機だけ逃げ遅れて被弾。
 煙を吹き、姿勢が崩れる。 ヨシナリはその隙を逃さずに人型に変形してアノマリーで一射。
 綺麗に胴体部分を撃ち抜いて撃破。 ただ、そこまでだった。

 残りが大きな動きで旋回し、機首を地上に向ける。 
 内蔵されている機銃、レーザー砲が展開。 その背後からも別の機体が攻撃の体勢に入っていた。
 マルメルは構わずに撃ちまくる。 

 「マルメル!」
 「ま、Aランク撃破したし、俺にしちゃ上出来だろ?」
 
 敵機による一斉射撃。 ソルジャータイプの機動性で躱すのは不可能な密度の攻撃だ。
 マルメルの武器が全て弾切れになったと同時に機銃とレーザーが全身を射抜き、耐え切れずに爆散。
 ヨシナリのウインドウにマルメルの機体をロストしたというメッセージがポップアップ。

 ――クソ!

 結果的にマルメルに敵を擦り付ける形になってしまった。
 確かに自分が助かる上では決して間違った選択ではなかったはずだが、マルメルがどうなるのかまで頭が回っていなかった。 追い込まれて余裕がなくなった証拠だ。

 内心ですまないと詫びながらアノマリーを連射。 
 エネルギー弾がマルメルを仕留めた一機を撃ち抜く。 敵機の爆散を確認せずに変形させて急上昇。
 とにかく動き回って相手に射線を取らせない必要がある。 この状況で止まったら即死だ。

 機銃とレーザーがあちこちから飛んでくる。 ミサイルはさっきので撃ち尽くしたのか来ない。
 直線的な武器であるなら軌道が読める分、まだ躱し易いからだ。
 ミサイルを織り交ぜられると詰むので、早々にミサイルを使い切ってくれたのはありがたかったが気を抜く訳にはいかない。 

 変形機能とマニューバを最大限に使用し、急上昇、急降下、旋回と持てるテクニックを駆使して逃げ回る。 
 敵は意地になっているのかヨシナリを仕留めるまで諦める気はないようで執拗に追ってきていた。 
 背後に張り付かれた瞬間、インメルマンターンで縦方向に旋回。 ギリギリまで引き付けたのでそのまま真後ろに張り付いてきた敵の真上を取って変形からの銃撃。 撃墜。
 
 よしと喜ぶ余裕すらない。 次――
 ヨシナリは次の敵機はと探そうとしていたが、その意識には一つ欠落があった。
 それは意識の外からの攻撃で、全く予期しない場所から飛んできたのだ。

 ホロスコープの腹から巨大なランスが飛び出す。 後ろから刺された。
 いつの間に? どうやって? このエネルギーランスはさっきのAラン――
 思考が纏まる前にホロスコープが爆散。 ヨシナリは退場となった。
 
 
 「よ、お疲れ!」

 ユニオンホームに戻るとマルメルが待っていた。
 ヨシナリはお疲れと小さく手を上げる。
 
 「折角、頑張ってくれたのにごめんな。 やられちまった」
 「見てたけどありゃ仕方ねぇよ」
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。