Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第252話

 グロウモスは少しの間、沈黙していたが躊躇いがちに口を開く。

 「その……何で勝てないんですかね……?」

 ――そう呟いた。
 
 「……取り敢えず場所代えて感想戦しますか」

 ヨシナリはそういってホームへと移動。 グロウモスもそれに続く。
 合計で十戦ほど模擬戦を行ったが、グロウモスの戦い方と欠点に関しては良く分かった。
 ウインドウを可視化してグロウモスにこれまでの戦闘映像を見せる。

 「まずグロウモスさんの戦い方は徹底して身を隠す事を念頭に置いた戦い方で狙撃ではなく隠密に寄っているといった方がいい。 大口径を使わない理由は?」
 「い、移動の邪魔になるから……」
 
 ――だろうな。 
 
 はっきりと言葉にしなかったが、ヨシナリは彼女の問題点をほぼ正確に理解していた。
 彼女の戦闘における優先度は攻撃ではなく「逃げる事」だ。 正確には自身の安全を確保する事。
 その邪魔になる大口径の長物は重くて持ち込む事に抵抗がある。

 だからと言って接近戦を行う度胸はない。 その二つの条件を満たした結果があの装備なのだ。
 比較的、持ち運びがし易い小口径の狙撃銃だが、それでは一撃で仕留めるのは難しいので中折れ式の拳銃と腐食弾を採用した。 それ以外の武器は持ち歩かず、後はステルス装備に全てを傾けている。

 そこまで考察が進めば彼女を仕留めるのは楽勝と言い切っていい。
 グロウモスのステルス性能は同ランク帯でも突出していると言っていいがシックスセンスの探知からは逃げられない。 この時点でヨシナリにとってはカモ以外の何物でもなかった。

 最大の強みが殺されているのだ。 脅威度はかなり落ちる。
 一方的に勝利し続けられる理由でもあった。 問題は彼女が自身の問題をどこまで自覚しているかだ。

 ――どう説明したものか……。

 解決方法は割とはっきりしていた。 
 単純にステルスに頼らず、もう一つの強みである狙撃精度を活かして積極的に相手を仕留めに行くスタイルにするべきだ。 このゲームは相手を倒さなければ終わらないので、逃げてばかりでは勝てない。 要は防御より攻撃に比重を置いた方が良いのだ。

 「さて、グロウモスさんに何が足りないのかって質問だけど、シンプルに火力ですね。 小口径で足を止めて大口径の特殊弾を使った拳銃でとどめは手間がかかりすぎる。 エネミーならともかくプレイヤー相手だったら場合によっては勝ちを取りこぼします」
 
 実際、マルメルに負けたのはそれが理由だったからだ。 
 嬲り殺しにしたいといった拘りがあるというのなら話は別だが、そうは見えなかったので今の手間のかかるスタイルは矯正するべきではないかと思ってしまう。
 
 「解決法としては大口径を使ったらと言いたい所ですが、Eランクまで来ている以上はとっくに試したんじゃないですか?」
 「……はい、まぁ……」

 最初は狙撃手だと思ったが、どちらかというとフカヤのような暗殺者に近い。
 その為、後衛としての評価を下げざるを得なかった。 身を隠す事を優先するスタイル上、後ろを任せるには少し不安が残る。 ふわわのように好きに動かす方がパフォーマンスを発揮できるタイプといった印象だった。 総合的な技量は決して低くはないが、ふわわのように突出している訳ではないので連携を取る上では微妙と言わざるを得ない。

 マルメルやふわわのように長い付き合いになりそうな相手ならもう少し親身になるが、グロウモスからは壁のような物を感じるのでイベントが終わったらお別れかなとも思っているのでうるさく言ってへそを曲げられたら困ると思ってしまっていた。 その為、どうしても遠回しな言い方になってしまうのだ。

 「どうすればいい感じ、ですかね……。 ここ最近、ランク戦も勝ててなくて……こんな調子だと上がってもすぐに降格してしまいそうで……その……」

 ボソボソ言っているので聞き取り辛いが彼女なりに気にはしている様だった。
 ヨシナリはどうしたものかと考える。 正確には考える必要はないのだが、どういえば伝わるのかが分からなかったので言葉を探していたのだ。

 「今の戦い方が通用しないなら磨きをかけるか少々強引でも見直す必要があります」
 「……見直す?」
 「グロウモスさんの戦い方は基本的に見つからない事が重要で裏を返せばどんな形でも発見された場合、高い確率で破綻します。 で、急に通用しなくなったって話してましたよね?」
 「はい」
 「なんでだと思います?」
 「相手の技量が上がってきているので発見されるようになった……ですか?」
 「半分正解です。 ランクが上がれば使える金額が増え、金額が増えると装備のグレードが上がる。 要はステルスの通用し辛い高感度のセンサーシステムを積んだ機体が増えてきているからステルスが剥がされてるんですよ」

 発見させ辛くするまではそこまで難しくないが完全に隠れ切るのは無理がある。
 言ってはいないが、シックスセンスを使えばほぼ無効化できるのでさっきまでの戦いでは完全に丸見えだった。 テクニックという意味での隠形も見事だがそこに存在する以上、限界がある。 
 
 特に個人戦の場合は確実に居るといった前提があるので、同ランク帯で勝ち続けるのは厳しい。
 実際、『栄光』のフカヤのランクが他より低いのもそれが要因だとヨシナリは思っていた。
 
 「俺からアドバイスできる事はそう多くありません。 単純にどちらかに絞る事ですね」
 「絞る?」
 「要は狙撃に特化するか奇襲に特化するか。 狙撃に振るなら大口径の狙撃銃使って一撃で相手を仕留める事を心掛けるべきかと。 俺としてはそっちがお勧めですね。 これまでの戦いを見ていたんですが、グロウモスさんって狙撃の腕自体は同ランク帯でもかなり上の方なんで変にコソコソしなくてもさっさと当てに行った方が良いんじゃないですか? そうでないならいっそ狙撃銃を諦めて忍び寄ってから例の大口径銃で仕留めるべきかと。 折角、嵩張る腐食弾なんて持ち込んでんでるんですから変に探す時間を与える前に接近して一発喰らわせればいいんですよ」

 隠密性に極振りしている所為で耐弾性能も機動性も中途半端な機体構成なので、長期戦には致命的に向いていない。 だったら狙撃で一撃か忍び寄って一撃のどちらかに賭けた方が良い。
 
 「……か、考えてみますので相手をお願いできますか?」
 「――分かりました。 早速始めましょう」

 てっきりもごもご返事してごねるかとも思ったが意外な反応にヨシナリは内心で首を傾げた。
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