Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第254話

 ――面倒臭ぇ……。

 世の中には数多くの人間がいて、中には波長が合う奴もいれば合わない奴もいる。
 ヨシナリの中ではマルメルは非常に気が合う相手で、ふわわは割と合う感じ。
 ツガル、ポンポンはかなり合う感じで、カナタはちょっと無理だった。

 ラーガスト、ユウヤは壁があるので合う合わない以前の問題。
 さて、その基準に照らし合わせるとグロウモスというプレイヤーはどんな感じなのか?
 答えは「合わない」だ。 基本的にヨシナリは一緒に居てストレスを感じるか否かで合う合わないの判断基準を定めるのだが、グロウモスの相手は非常に疲れる。

 そんな相手に親身になって訓練に付き合い、アドバイスまでしているのには理由があった。
 次のユニオン対抗戦で抜けられると困るからだ。 終わった後は好きにしてくれて構わないが、終わるまではご機嫌を取っておきたい。 現状、追加の参加はないのでこのまま行くといつものメンバーにグロウモスと助っ人を加えた五人。 助っ人の得意レンジが近~中距離なので狙撃手であるグロウモスは可能な限り逃がしたくない。 
 
 ご機嫌取りを兼ねてはいるが、アドバイス自体は真剣に行った。 
 彼女はこの調子だと行けてもEの中堅から上位だろう。 頑張ればDに上がれはするだろうが、そうなったとしても落ちるのが目に見えている。
 グロウモスの戦い方は初見には有効だが、そうでない相手にはかなり効果が落ちる。
 上がっても対策されてずるずる負けて落ちていくのが分かり切っていた。

 付け加えるならあの性格だと正論をぶつけた所で逆効果になるのは目に見えていたので過剰に褒める方向に舵を切った。 とにかく自信を付けさせるのだ。
 
 グロウモスがヨシナリのアドバイスをどう活かすかは彼女次第なので、結果自体にはあまり興味はなかったがイベント中だけでも思惑通りに動いて欲しいのでその間だけは全力で乗せる。 そう考えての今回の特訓だったのだが――

 「わ、分かりました。 クヒ、フヒヒ」

 ――どうしよう。 気持ち悪い。

 最初は分かり易いぐらいに不満があるんだろうなと察せられる態度だったのだが、途中から何かが琴線に触れたのか素直に聞いてくれるようになった。 だが時折、ヨシナリの事を意味深に見つめこうして不気味な笑いを漏らすようになったのだ。 馬鹿にしている感じではない。

 何故ならヨシナリの話を真剣に聞いて、実践しようとしているからだ。
 ヨシナリにはグロウモスの事がさっぱり分からなかった。 
 


 元々、開催までそう時間がなかった事もあって大会の当日はあっという間に訪れた。 
 星座盤のメンバーとグロウモスがユニオンホームに揃う。
 全員が集まった事にヨシナリはほっと胸を撫で下ろす。 
 
 一週間は瞬く間に過ぎた。 大半をグロウモスとの訓練に充てており、マルメル、ふわわも二人で特訓していたようだ。 前日、前々日は四人での連携訓練を行い、最低限の形にはなったはず。

 「なぁ、結局、助っ人はどうなったんだ? 顔見てないんだけど……」
 「来てはいるから心配するな。 ただ、連携はあんまり期待しない方がいいからこのままでいいんだよ」
 「ふーん? 後で紹介してくれるん?」
 「本戦に上がれば嫌でも顔を合わせる事になりますよ」

 ヨシナリはちらりとグロウモスを見ると彼女はヨシナリに熱い視線を向けていた。
 目が合うと「プヒ、クヒヒ」と愛想笑いなのか良く分からない笑みを漏らす。 気持ち悪い。
 努めて気にせずに話を続ける。 

 「散々、説明した通り、予選は大人数による生き残り戦。 敵の撃破よりも生き残る事を念頭に置いて動くように。 フィールドが前と同じとは限らないので事前に打ち合わせた通り、可能な限り固まって動きます。 良いですね? 後はランカーとぶつかる可能性も充分にあるので、そうなった場合は事前に説明しておいた手筈通りで」
 「おう! 前回参加できなかった分もしっかりと暴れてやるぜ!」
 「任しとき! ウチも頑張るよ!」
 「頑張ります。 クヒ、フヘヘ」

 ウインドウに開始のカウントダウンが表示される。 
 
 「ちなみに優勝賞品はキマイラ+フレームが人数分なので頑張りましょう!」
 「俺もキマイラタイプ欲しいぜ……」
 「ウチはソルジャータイプ+でえぇかなぁ」
 「ウヒ、ウヒヒ」

 そんな会話をしている間にカウントダウンがゼロになった。 
 イベント開始。
 

 移動した先は前回と同じステージだった。 前回との違いは初期配置が森の中という事ぐらいだ。 
 ヨシナリはまずは味方の位置を確認。 マルメル、ふわわも同様に味方の位置を確認したようでこちらに向かってくる。 グロウモスは既に配置についており、ヨシナリから少し離れた位置にいた。

 残りの助っ人だが――既に移動しており、かなり離れた場所にいる。 何もなければ予選は好きにさせる取り決めなのでステージギミック程度の認識で居ればいい。
 合流までにシックスセンスを全開にして周囲の情報をかき集める。 早々にあちこちから銃声や爆発音がし始めている事から血の気の多いプレイヤー達が早々に始めたのだろう。

 ヨシナリにとって予選は突破さえすれば後はどうでもいいので、今回に関しては身を隠しつつ敵は敵と潰し合って貰うと言ったスタンスだ。 その過程で襲ってくる連中を返り討ちにすればいい。
 周辺の索敵が完了したと同時に二人の機体が合流。 

 「いや、どいつもこいつもいきなりおっ始めてるんだが、気が早すぎじゃね?」
 「まぁ、残りが五チームになるまでやるから数を減らした方がクリアの近道って認識されてるだろうからな」
 「ふーん。 良い感じの空気やねー。 楽しくなってきた」
 「楽しくなるのはいいですが、最初は俺の指示に従ってくださいね。 最終的には好きにしていいですから今は――」
 「大丈夫。 分かってるよー」
 
 ヨシナリは内心で本当かよと思ったがここは信じるしかなかった。
 今回のイベントでの序盤の動きは簡単で、ヨシナリが索敵を行い敵の少ない方向へと移動する。
 フォーメーションは先頭にマルメル、左右にヨシナリ、ふわわ。 少し離れた位置にグロウモスだ。

 彼女を離しているのは後方支援と全滅のリスクを減らす為。 
 何かがあって全滅しても彼女が生き残ってさえいれば予選は突破できる。
 ふわわが逃げ回る事に最初は難色を示したが、どちらにせよ数が減れば逃げられなくなるので最終的には戦わざるを得ない。 彼女にはそう言って納得させた。

 仲間のモチベーションを維持しつつ生存率を上げるのは中々に難しかったが、ここまでは上手く行っている。 後は同じブロックで厄介なのに目を付けられなければいいのだが……。
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