Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第255話

 今回はラーガストもユウヤも居ない以上、慎重かつ堅実に進める必要がある。
 そしてこのメンバーならそれが可能であるとヨシナリは信じていた。
 
 「正面、五機。 ソルジャータイプⅠ型三、Ⅱ型二機。 装備は突撃銃二、散弾銃三」
 「オッケー、ウチが斬り込むわ」
 「お願いします。 あっちはまだ気付いていないので奇襲をかけるなら今でしょう。 ふわわさんが切り込んだら俺とマルメルが左右から挟みます。 グロウモスさんは行けそうなら援護。 処理はこっちでやるので小口径での牽制だけで大丈夫です」
 「フヒ、了解」

 マルメルが何かを言いたげにヨシナリを見るがそっと目を逸らした。
 聞きたい事は分かっている。 グロウモスの変化だ。 
 恐らくどうやって手懐けたんだとでも聞きたいのだろうが、ヨシナリ自身にもさっぱり分からなかったので答えようがなかった。 最初は嫌々やっているように見えのだが、気が付けばやる気をだしてくれていたのだ。 そこまでなら良かったのだが、気持ちの悪い笑みを浮かべるようになったのはどうにかして欲しいと思っていた。 

 ――ただ、言う事は聞いてくれるんだよなぁ……。

 グロウモスの変化の理由がヨシナリにはさっぱり分からなかった。
 分からない事は多いが連携自体は形になりそうだったのは素直に喜ばしい。
 ふわわが即座に突っ込み、敵がヨシナリ達に気付いたと同時に手近に居た散弾銃持ちを袈裟に両断し、手近に居たもう一機のコックピット部分を串刺しにする。

 急な敵襲に残りの三機が反応するが、内一機の膝に銃弾が撃ち込まれる。
 狙撃。 抑制機を付けているので銃声は一切しなかっただろう。
 代わりに威力は落ちているが、強度の低い関節部分を撃ち貫くだけなら充分だ。

 膝が破壊され、直立できずに体勢を崩すが、倒れる前にマルメルが突撃銃の連射で仕留める。
 残りの二機も背後から綺麗にコックピット部分を撃ち抜かれて撃破。
 
 「いい感じだ。 この調子で森の中で隠れつつ敵の数を減らしていこう」
 「いやー、無傷で勝つと気持ちいいな!」

 奇襲が見事に決まって嬉しそうなマルメルだったが、先は長いので気を抜いていられない。
 空を見上げるとキマイラタイプとエンジェルタイプが飛び交い、無数の銃弾やエネルギー弾、レーザーが飛び交ってる。 流石のヨシナリもあの中に混ざろうと言った気持ちにならなかった。

 入るにしても半分以下になってからだと思っている。
 
 「ところでヨシナリ君?」
 「はい、なんでしょう」
 「森の中を移動するのは分かったけど、当てはあるん?」
 「あぁ、闇雲に移動してるんじゃないかって話ですね。 一応ですが目的地はありますよ」
 
 ヨシナリはそう言ってウインドウにマップを表示させる。
 
 「このフィールドって果てがあるんですよ。 空中、地上に関係なく、一定以上進むと見えない壁があって通れない」
 「あー、なら端っこに行くって事?」
 「その通りです。 初期配置に近い所に陣取るつもりだったので向かっている先は西の果てですね」

 果てを背にしておけば少なくとも後ろから撃たれる心配はなく、警戒する方角も絞れるといい事しかない。 後は守り易い地形を探して適当に減るか終わるまで引き籠っていればいい。
 
 「えー、隠れるのー?」
 「今はですよ」

 嘘だったが、結果的には嘘にはならない。 
 可能であるなら最後までやり過ごしていたいと思っていたが、この過酷な潰し合いでそんな日和った真似が許されるはずがない。 このイベントは二回目である以上、研究されているに決まってる。
 
 そんな熱心な連中が隠れようとする奴をみすみす見逃すはずがない。 
 だから――

 「――来ると思ったけど、よりにもよってここかぁ……。 マルメル、遮蔽物を盾にしながら後退。 ふわわさんは――あぁ、もう行っちゃった」
 
 ヨシナリはブースターを噴かして空中へ。 空へと上がるとそこには四機のキマイラタイプ。
 見覚えのある機体は間違えようがない。 

 「よぉ、ヨシナリ。 遊ぼうぜぇ」

 ツガルだ。 つまり『栄光』が仕掛けて来たのだ。
 
 「どうもツガルさん。 その様子だと手を組もうって話じゃないですよね?」
 「まぁな。 俺としてはそれでもいいんだが、センドウさんがお前ら潰したいってうるさくってよ。 ほら、前にやられたのが効いてたらしいぜ?」
 「はは、逆恨みとは悲しいなぁ。 アレはやられる方が悪いに決まってるじゃないですか」
 「まったくだ。 ボスとしてもお前らは生かしておくと面倒だと判断した。 っつー訳でここで潰させて貰うぜ。 ――それにキマイラをどこまで扱えるようになったのか、師匠としては気になるだろ?」
 「いいでしょう。 俺が師匠を越えた瞬間をお見せしますよ」

 好都合だった。 ツガルにだけはいつかの借りは返せていない。
 ここで完膚なきまでに叩き潰していつかの屈辱を清算するとしよう。
 
 「へへ、そうでなくちゃ。 んじゃぁ始めるか」
 「いつでもどうぞ」

 ツガルとその周囲の機体が一斉に動き出す。
 ヨシナリはホロスコープを変形させて急上昇。 まずは敵の分析からだ。
 ツガルとお供のキマイラ三機。 十機の内四機をここに投入している以上、残りは六機。
 
 内訳としてはカナタ、センドウ、フカヤ、イワモトにプラス二機。
 他はどうにでもなるがカナタに出てこられると厄介だった。 こちらに来ていない以上は地上か。
 ヨシナリの思考を肯定するように森の一角から光が飛び出し、木々が薙ぎ払われる。

 「ふわわさん? 生きてますかー」

 相手は間違いなくふわわなので尋ねてみると――

 「はは、いい感じやない! 流石はAランク、これは楽しめそうやわ!」

 ――あー、スイッチ入っちゃったかー。

 いきなり栄光と当たるとは思わなかったが、対策自体は練っていたので一応は想定内だ。 
 このイベントはどう頑張ってもAランクとの戦いは避けられない。 
 ハイランカー相手にまともにぶつかっても勝てる訳がないので、対抗策は絶対に必要だった。

 ――できれば使いたくはなかったんだがなぁ……。

 本音を言えば本戦まで取っておきたかった切り札だ。 
 使うと決め、心の中にあるスイッチを入れる。 後はどのタイミングで切るかだ。
 できるだけ見極めろ。 最高の瞬間があるはずだ。

 栄光は強敵だが、今の星座盤ならかなり厳しいが決して勝算はゼロではない。
 ヨシナリは大きく深呼吸。 

 ――俺なら――いや、俺達ならやれる。

 格上のユニオンだろうが、Aランクだろうが叩き潰してやる。
 ヨシナリは息を吐き出しながら機体を加速させた。
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