Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第272話

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 比較的ではあるが相性が良い相手。
 それがユニオン『雷鳴』に対するヨシナリの印象だった。
 ベリアルの言っている事は難解だが、理解さえできれば情報源として非常に優れている。

 彼は基本的に対戦相手、対戦した相手への対策と研究を怠らない。
 雷鳴のドンナーというプレイヤーについて尋ねると『雷の戦士、雷神の鉄槌と鎧を身に纏い、攻防を担う。 その在り方は俺の闇と似て非なる物』と返って来た。 解読すると電撃を扱うらしく、装備としてはベリアルと同系統の機体と一体化しているタイプ。

 つまりはそのシステムに依存した戦い方をするという事だ。
 ならプレイヤー自身はどうか? ベリアル曰く『雷のように激しく鳴り響き敵を射抜く』との事。
 ヨシナリはそれを強気に攻めていくスタイルだと解釈。 ならやりようはある。

 突出してくるなら罠にかけて最初に沈んで貰おう。 
 上位のプレイヤーになると大なり小なり驕りが生まれる。 
 突出するタイプは特にそれが顕著だとヨシナリは思っていた。 そう言った相手には凝った罠よりもシンプルな奇襲の方が通り易い。 

 その結果がベリアルの短距離転移と分身を用いた奇襲だ。 
 プセウドテイの短距離転移システム『ファントム・シフト』は十数メートルを瞬間移動するといったシンプルなものだが、彼の機体特性がその凶悪性を引き上げている。

 プセウドテイの外装はエーテルで構成された物で装備ではない。
 つまり転移するとガワが残される形になる。 それにより分身しているように見える訳だ。
 抜け殻のエーテルは時間が経てば霧散するが、そこに他の機体が入ればどうなるのか?

 ついさっき試した結果、霧散自体はするのだがその僅かな間、機体の装甲に吸着する。
 これは使えると判断して彼のエーテルをふわわの機体に纏わせる事での奇襲を提案。 特にふわわは呑み込みが早く、ぶっつけ本番にもかかわらずこうして連携に組み込めたという訳だ。

 流石にベリアルが味方と連携を取るとは思っていなかったのか、敵はあっさりと引っかかりふわわに両断されて即死。 中々に痛快な結果となった。
 
 ――どうでもいいけど名称は『影装シャドウ・ヴェール)』(命名ベリアル)かぁ、俺だったら影よりは闇を――おっといけない。
 
 余計な思考を追い払い、自分の戦いに集中する。
 ヨシナリは現在、敵のキマイラタイプに後ろから追尾――要は喰らいつかれている状態だった。
 相手は二機。 不利ではあるが割とどうにかなる戦力差ではある。
 
 だが、マルメルとグロウモスが二人で残りの七機を相手にしている状態なので早めに片付けた方がいい。 

 ――まぁ、正直あまり心配はしていないが。

 敵の隊長機を落とした以上、敵の士気は大きく下がっているはずだ。
 それにベリアルとふわわがマルメルのフォローに入るので崩される心配はないだろう。
 敵機の動きを観察する。 流石にBランクだけあって上手い。

 だが、ツガル達に比べるとかなり劣る。 

 「Eランクがキマイラとか生意気なんだよ!」
 「はは、自分でもそう思いますよ」

 シックスセンスを全開にして全力で敵機と周辺の情報を収集。
 敵は吼えながら機銃を連射。 発射の直前に機体をバレルロールさせて回避し、そのまま加速してインメルマンターン。 直上を取って背面に搭載しているアノマリーを一撃。
 
 綺麗にコックピット部分を撃ち抜いて撃墜。 

 「てめぇ!」
 
 残りの一機が変形して急制動。 持っていた突撃銃を連射しつつ、小型のミサイルを連続発射。
 強い誘導性能がないタイプなので加速して振り切り、急上昇して雲の中へ。
 敵機の動きを確認すると動いていない。 恐らく出てくるのを待っているのだろう。
 
 闇雲に撃たない辺りは冷静だが、こちらは一方的に見えているのでそれは悪手だ。
 ヨシナリは視界がほぼゼロな雲の中で機体を変形させるとアノマリーをすっと構え、おもむろに発射。 エネルギー弾は吸い込まれるように機体の中心を射抜き、撃墜する。

 「よし」

 次は敵の砲戦型――プリンシパリティを狙う。 
 グロウモスが抑えているはずだが、一人では限界がある。 雲を突っ切って地上を一望できるようになると戦場の現状が視界に飛び込んで来た。

 ふわわとベリアルが敵の前衛を次々と屠り、逃げ回っていたマルメルがここぞとばかりに銃撃を喰らわせて反撃に転じている。 グロウモスは――居た。
 何をしているのかと思えば身を晒して小口径の狙撃銃を連射。 敵のプリンシパリティにひたすらにライフル弾を撃ち込んでいた。

 ポジション的に逃げる敵に追撃する事を主な目的としていたのだが、乱戦になって援護がしにくくなったのだろう、そんな時に離れた位置に現れたグロウモスは狙いたくなる獲物だったという事か。
 一機は完全にグロウモスを狙い撃ちにしており、もう一機は前線の味方の支援に入っていたが、あまり上手く行っていない。 

 ――こうしてみると乱戦では砲戦機体の運用は少し難しいか?
 
 今後の参考にしようと思いながらグロウモスを狙っている機体に上から強襲。 
 アノマリーを実弾に切り替えて連射。 エネルギーフィールドを展開し防ぐが、実体弾には効果が落ちるので撃墜は無理だがダメージは入る。

 ついでにシールドではなく全面防御できるフィールドを展開した時点で機動力に自信がない事が露呈していた。
 充分に仕留められる。 前衛のいない支援機は脆い。
 そのまま変形して不得手であろう近距離戦に持ち込んでやろうとしたが、前線の支援をしていた機体がヨシナリを狙ってきた。 両肩に装備されているエネルギーキャノンを発射。

 最小の動きで回避、エネルギーの流動が見えている以上、発射のタイミングも丸わかりだ。
 これで躱せない方がどうかしている。 攻撃して来た機体に狙いを定め、ギリギリまで接近して変形。 敵機は諦めずに砲を向けてくるがこの距離で充填が必要な武器が使える訳がない。

 砲身を蹴り上げて圧し折り、残りを即座に抜いた拳銃で破壊。 
 アノマリーを手放し、もう一丁を抜いてコックピット部分に向けて連射する。
 重装甲だが至近距離なら拳銃でも充分に貫通は可能だ。 全弾撃ち込んで仕留める。

 残りはエネルギーウイングが破壊されて姿勢が維持できていなかった。
 グロウモスの仕業だろう。 敵機はせめてヨシナリだけでも仕留めたいと思ったのか胸部装甲を展開。 無数の発射口が顔を覗かせる。

 ――拡散タイプのエネルギーキャノンか。

 散弾銃と同じで至近距離ならほぼ必殺ともいえる武器だ。
 だが、それが良くなかった。 ヨシナリに意識を集中するあまりグロウモスを完全に無視してしまったからだ。 ズドンと距離があるにもかかわらず重たい銃声が響き、プリンシパリティの腹部に大穴が開いた。 大口径の狙撃銃。 ジェネレーターが破壊された事により内部のエネルギーが暴走。

 プリンシパリティは耐え切れず内側から膨らむように爆散した。
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