Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第277話

 「待ってたぜヨシナリぃ! いつかの借りを返してやるからナ!」

 ポンポンはエネルギーライフル連射。 ヨシナリは器用に躱して急上昇、それを追ってポンポンも急上昇するが、ニャーコともう一機が左右に散って囲みに行く。
 
 「この視界でそれだけ動けてるって事はセンサー変えました?」

 ヨシナリは軽い調子でポンポンがシックスセンスを使用している事を看破。
 味方機の動きを見れば簡単に分かる事で隠す程の事でもなかったが、即座に見破ってくるのは流石だった。

 「まぁナ! だから、自分だけ一方的に見えるとか思ってんじゃねーゾ!」
 「はは、ポンポンさん相手にそんな舐めた態度取る訳ないじゃないですか」

 直線に捉えたと同時に撃ち込むがシックスセンス装備の機体が相手だとエネルギーの充填も見えているので発射のタイミングがあっさりとバレる。
 ポンポンもシックスセンスを使いだし、この装備の明確な弱点を見つけていた。
 
 確かにこの装備が使用者に齎す情報量は群を抜いている。 
 全てを完全に把握し、その機能を十全に使いこなせるというのであれば戦場を支配する事すら可能だろう。 だが、人間の脳でそんな真似は出来ない。
 
 少なくともポンポンには無理だ。 
 だから、シックスセンスを上手に使うコツは膨大な情報からどれだけ自分に必要な情報をピックアップできるかにかかっている。 そしてそれにはかなりの集中が要求されるので、畳みかけて思考する時間、リソースを削いでやればいい。 

 いくら情報が正しくてもそれを扱うのはあくまで人間。 
 追い込んでミスを誘発してやればいい。 やり方はそう難しくなく、とにかく攻撃の切れ目をなくして考える余裕を剥がすのだ。

 ――それにしても――

 また上手くなっている。 特に挙動が前に会った時とまるで別人だった。
 回避からの反撃に繋げる為の空戦機動に変形を織り交ぜた変則機動。
 当初はツガルの機動を真似る形で練度を上げていたが、いつの間にかその中から自分の中の最適解を見つける事で動きを昇華させていた。 

 「そんなに時間も経っていないのにここまで動けるのは大したものだ! だが、逃げ回ってるだけじゃ勝てねぇゾ!」
 「ご心配なく。 一応ですが、色々と準備はしてきたので」
 
 いくら視野が広く、動きが良いとしてもキマイラ最大の強みは直線加速だ。
 そして旋回性能ではエンジェルタイプが遥かに上。 補う為に変形したとしてもスピードが落ちる。
 
 「ニャーコ! おたま! そのまま追い込め!」
 
 おたまと呼ばれたエンジェルタイプ使いがエネルギー式の突撃銃を連射。
 ヨシナリは縦旋回で回避。 得意のインメルマンターンだ。
 回避から背後を取る際、多くのプレイヤーが使う、キマイラを扱う上では必須ともいえる空戦機動。
 
 だが、分かっているのなら動きは読める。 
 ニャーコが軌道に割り込み、エネルギーブレードを展開。 
 両断するべく振りかぶるが、咄嗟に変形して減速。 ニャーコの斬撃が空を切る。

 ヨシナリは即座に拳銃――ポンポンが昔使っていたクルックスを抜く。
 よく見るとしっかりとカスタマイズされており、大事に使っている事が分かる。
 それを見てちょっとだけ嬉しくなったが、やる事は変わらない。
 
 変形した事により足は完全に止まった。 ここで仕留め――
 
 「――っ!?」

 咄嗟に回避運動。 実体弾が飛んできたからだ。
 狙撃。 ポンポンの脳裏に浮かんだのは以前の模擬戦で使用した遠隔操作だ。
 だが、キマイラのような動かすだけで集中力を要求される機体を操りながらそんな真似ができるのか? 恐らくは例のグロウモスとかいう新入りだろう。 ここで二人抑えられているのは大きい。

 ポンポンが攻撃のタイミングを逃した間にヨシナリは拳銃を連射。
 ニャーコは咄嗟に展開したエネルギーシールドで防御。 おたまがカバーに入る。
 ヨシナリは深追いはせずに急降下。 意識をポンポンに向けつつ、ニャーコとおたま相手には距離を取る戦い方。 明らかにポンポンを優先して狙っている動きだ。

 「面白くなってきたナ!」
 「俺もですよ」

 ポンポンはヨシナリを追うように機体を加速させた。
 
 

 ヨシナリはポンポンに軽く返していたが内心ではかなり焦っていた。
 吹雪で視界が効かない事は知れ渡っているので対策は練って来るだろうなと思っていたが、向こうもシックスセンスを用意してきたのだけは想定外だったのだ。 

 ――買うのに苦渋の決断が必要だった代物を簡単に買っちまうんだからなぁ……。

 大手ユニオンの資金力に少し嫉妬しながらも冷静に現状を見極める。
 ポンポンはこちらに来るだろうなと言うのは想定していたので驚きはない。
 確実に勝ちに来るはずなので人数を引き連れてくるのも読んでいた。 個人戦や模擬戦ならもう少し状況は違っただろうが、今回はユニオン戦だ。

 何よりも優先されるのは結果。 なら確実に仕留められる手を打ってくるはずだと思ったからだ。
 ポンポンは実に合理的にヨシナリを仕留めに来た。
 彼女も同等のセンサーシステムを使用しているので動きに迷いがない。 加えて彼女はシックスセンスの弱点をよく理解していた。 

 確かにシックスセンスは戦場のあらゆる情報をリアルタイムで使用者に伝えてくれる。
 絶えず変動する戦場で常に正確な情報を得られ続けるのは圧倒的なアドバンテージだ。
 使いこなせるのならどんな相手でも完封できるだろう。

 ――使いこなせればの話だが。

 どれだけ性格な情報でも正しく処理できなければノイズと同じで邪魔にしかならない。
 それをポンポンはよく理解していた。 彼女達は攻撃の切れ目をなくしてヨシナリから思考する余裕を奪い取ろうとしているのだ。 単純だが非常に有効な手だった。

 これが一対一ならそこまでではないのだが三対一な上、近距離のニャーコ、中距離のエンジェルタイプ、そして遠距離はポンポンが埋める事で息つく暇を与えてくれない。
 ただ、全く穴がない訳ではなかった。 ポンポンだ。

 彼女の得意レンジは中距離戦。 
 その彼女が下がっているのはシックスセンスを使いこなせていないからだ。
 情報処理にリソースを割かれているので高速戦闘が上手くできないとヨシナリは見ていた。
 
 そこそこの期間使い続けているヨシナリですら完全に使いこなせていないのだ。
 いきなり使い始めたポンポンが使いこなせるとは思えなかった。
 
 ――後は付け焼き刃でどこまでやれるか、か。

 「4、8、6」

 ヨシナリは短くそう呟くと三か所から狙撃が飛ぶ。 
 当たるとは思っていないが、態勢を崩す程度は可能だ。 

 「まーた、お得意の遠隔操作かァ? 機体の操作をしながらどこまでやれる?」
 「はは、どこまでやれるかは見て行ってくださいよ」
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