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第281話
意識を細く、鋭く、敵だけを捉え、仕留める事だけに全てを傾けろ。
ベリアルは自らの持つ全てを賭けて勝利を掴み取るべく攻撃を繰り出す。
刺突、横薙ぎ、旋回、短距離転移。 敵の攻撃を躱し、時にはいなし、掻い潜る。
ツェツィーリエの攻撃の回転速度は自分以上だったと思っていたのだが、研ぎ澄まされた彼の感覚が体感時間を引き延ばし、徐々にではあるが彼女の攻撃速度に追いつき、そして追い抜こうと喰らいつく。
状況はベリアルにとって圧倒的に不利だ。 魔弾の射手を失った事でこの戦場を見通す眼を失った。
離れてしまうとツェツィーリエを見失ってしまうのでベリアルは離れられず、彼女の土俵である接近戦を余儀なくされるがそんな事は何の関係もない。 戦友であるヨシナリが切り開いた道なのだ。
召喚された自分の役目はその道を踏破し勝利という成果を持ち返る事。
人数差が倍? 機体や個人ランク等の総合力で負けている?
それがどうした。 ベリアルは確信していた。 この星座盤こそが最高のユニオンであると。
自身は闇だ。 それ故に誰とも馴染めず、誰にも理解されない。
彼自身、それでもいいと思っていた。 最高の自分を貫く事は彼にとって何よりも大切な事だからだ。
独りでいい。 王とは孤独で孤高な物なのだから。
だが、ここ最近でそうでもないという事を知ってしまった。 星座盤、星の海を記す地図。
そこには美しい星々が集まり、小さくも力強い輝きを放つ。
このユニオンは小さな星々が僅かな光を持ち寄って大きく輝こうとしている者達の集い。
光のない自身には縁のない集まりで、自分は傭兵として今回限りの薄い関係で済ませる――はずだったのに。
魔弾の射手は言った。
――星は闇があるから輝けると。 凄まじい衝撃だった。
闇にも寄り添える者達が居るのだと、お前は独りではないのだと言われた気がした。
それを聞いて少しだけ救われたのだ。
仲間。 言葉としては理解はしていたが、そういった物の為に何かをする事は尊いと感じたのは初めてだった。
だから、ベリアルは初めて知った仲間という存在、戦友という存在の為に死力を尽くす事を決めたのだ。
「俺は! 負ける訳には! いかんのだ!」
ベリアルは吼える。
それは普段の彼からは想像もつかないほどの感情の乗った熱い感情の発露だった。
ツェツィーリエは目の前で感情を吐き出し、大幅にパフォーマンスを向上させた男を見て僅かに気圧される。 彼女は十中八九勝てると踏んでいた。
ランク戦での戦績は勝率六割。 接近戦では常に圧倒できる事もあってこの数字だった。
ベリアルと自分では近接スキルに大きな開きがある。 そんな自負があったからこそこの距離での戦いに持ち込んだ時点で高い確率で勝利できるだろうと思い込んでいた。
だが、目の前のベリアルは何だ? 普段とはまるで動きが違う。
いや、動きの組み立て自体はそう大きな違いはないのかもしれない。
だが、反応速度が普段とは段違いだ。
そして攻撃の鋭さと回転が徐々に上がっている。 ツェツィーリエが一撃入れると二撃で返され、気が付けば攻めから受けに回らされていた。 自身が絶対的に自身のあった距離で圧倒され始めている。
強い事は知っていたが、今はそれ以上に怖かった。
ベリアルの事を普段は痛々しい言動を垂れ流し、どこか余裕を見せる事を格好いいと思い込んでいるアホだと思っていたのだ。 そんな相手が感情を剥き出しにし勝利に執着する姿は圧倒的に大きく見えた。
――不味い。 呑まれたら負ける。
いや、気持ちではもう負けているのかもしれない。
ランク戦であったなら勝負を投げているかもしれなかった。
それほどまでに目の前のベリアルは強かった。 技量ではなく、気持ちが。
「おねーたま!」
ポンポンの声は聞こえる。
認めよう。 今のベリアルは強い。 少なくとも今の自分よりは圧倒的にだ。
だからと言って負ける訳には行かない。 こちらも豹変という仲間の信頼を預かっているのだ。
格好の悪い敗北は彼女の矜持が許さない。
次で勝負を決めに行く。 ヨシナリが倒れた以上、ベリアルを仕留めれば勝負は決まったようなものだ。 つまりここでの攻防がこの戦いの趨勢を決める。
レイピアでの刺突。 驚異的な反応で引き付けてからぬるりとした動きで懐に入る。
腕が伸びきる前に上半身を横回転させ肘からエネルギーブレードを展開。 フックの要領で横から薙ぎ、ベリアルの機体を両断するが手応えがない。 短距離転移。
だが、シックスセンスとリンクしている以上、エネルギー流動に関しては見えている。
踵のブレードを展開し、腰のエネルギーウイングを噴かして強引に体を回転させた。
後ろ回し蹴り。 完全に捉えた。 ブレードがベリアルの胴体を捉え――
「おねーたま! そっちじゃない!」
――!?
ポンポンの声で咄嗟に機体を捻ろうとするが間に合わない。 彼女の蹴りは標的を捉えはしたが、さっきと同様に手応えがない。 また分身。
分身した以上、死角から来た方が本体だと思ったのだが、よく見れば分身が二体もいた。
前と後ろに一体ずつ。 本体は蹴りによって生まれた死角――斜め下だ。
この土壇場で分身の数を増やすとはやってくれると思っていたが、よく見るとプセウドテイを覆うエーテル体が極限まで薄くなっており、中の本体の姿が見えていた。 分身二体――短距離転移の連続使用は機体にかなりの負荷をかけたようだ。
ベリアルはプセウドテイの中身を隠すべきものとして見せた事はほとんどなく、見られる事を屈辱と捉えている節がある。 その為、本体の露出は頑なに嫌がっていた。
どれほどなのかというと、見せるぐらいなら負けを選ぶほどだ。 そんなベリアルが本体を惜しげもなく晒して勝ちに来ている。
「――何をそんなにマジになっちゃってるのよ?」
その様子が普段とあまりにも違うのでツェツィーリエは思わず小さく笑ってしまう。
ベリアルは残ったエーテルの大半を腕に集中させ、ブレードを形成。 ツェツィーリエを貫かんと突き出す。
彼女に躱す術はない。 決まる――はずだったのだが、突き刺さる直前にツェツィーリエの機体を突き飛ばしたポンポンの機体が身代わりとなった。 コックピット部分への直撃は避けたがジェネレーターが破壊されたので彼女の機体はそう長くない。
「何!?」
「へ、悪いナ。 この勝負は間違いなくお前の勝ちだゾ。 でも、試合での勝ちは貰う!」
ポンポンはそのままベリアルの機体を抱きしめるように拘束。
「こうすればお得意の転移は使えないだろ? 悪いがお前はここまでだ! おねーたま!」
「ありがとうポンポン」
ツェツィーリエはレイピアでポンポンの機体ごとベリアルを貫いた。
「くっ、すまん。 戦友よ……」
動力を貫かれたプセウドテイはポンポンの機体を巻き込んで爆発。
脱落となった。
ベリアルは自らの持つ全てを賭けて勝利を掴み取るべく攻撃を繰り出す。
刺突、横薙ぎ、旋回、短距離転移。 敵の攻撃を躱し、時にはいなし、掻い潜る。
ツェツィーリエの攻撃の回転速度は自分以上だったと思っていたのだが、研ぎ澄まされた彼の感覚が体感時間を引き延ばし、徐々にではあるが彼女の攻撃速度に追いつき、そして追い抜こうと喰らいつく。
状況はベリアルにとって圧倒的に不利だ。 魔弾の射手を失った事でこの戦場を見通す眼を失った。
離れてしまうとツェツィーリエを見失ってしまうのでベリアルは離れられず、彼女の土俵である接近戦を余儀なくされるがそんな事は何の関係もない。 戦友であるヨシナリが切り開いた道なのだ。
召喚された自分の役目はその道を踏破し勝利という成果を持ち返る事。
人数差が倍? 機体や個人ランク等の総合力で負けている?
それがどうした。 ベリアルは確信していた。 この星座盤こそが最高のユニオンであると。
自身は闇だ。 それ故に誰とも馴染めず、誰にも理解されない。
彼自身、それでもいいと思っていた。 最高の自分を貫く事は彼にとって何よりも大切な事だからだ。
独りでいい。 王とは孤独で孤高な物なのだから。
だが、ここ最近でそうでもないという事を知ってしまった。 星座盤、星の海を記す地図。
そこには美しい星々が集まり、小さくも力強い輝きを放つ。
このユニオンは小さな星々が僅かな光を持ち寄って大きく輝こうとしている者達の集い。
光のない自身には縁のない集まりで、自分は傭兵として今回限りの薄い関係で済ませる――はずだったのに。
魔弾の射手は言った。
――星は闇があるから輝けると。 凄まじい衝撃だった。
闇にも寄り添える者達が居るのだと、お前は独りではないのだと言われた気がした。
それを聞いて少しだけ救われたのだ。
仲間。 言葉としては理解はしていたが、そういった物の為に何かをする事は尊いと感じたのは初めてだった。
だから、ベリアルは初めて知った仲間という存在、戦友という存在の為に死力を尽くす事を決めたのだ。
「俺は! 負ける訳には! いかんのだ!」
ベリアルは吼える。
それは普段の彼からは想像もつかないほどの感情の乗った熱い感情の発露だった。
ツェツィーリエは目の前で感情を吐き出し、大幅にパフォーマンスを向上させた男を見て僅かに気圧される。 彼女は十中八九勝てると踏んでいた。
ランク戦での戦績は勝率六割。 接近戦では常に圧倒できる事もあってこの数字だった。
ベリアルと自分では近接スキルに大きな開きがある。 そんな自負があったからこそこの距離での戦いに持ち込んだ時点で高い確率で勝利できるだろうと思い込んでいた。
だが、目の前のベリアルは何だ? 普段とはまるで動きが違う。
いや、動きの組み立て自体はそう大きな違いはないのかもしれない。
だが、反応速度が普段とは段違いだ。
そして攻撃の鋭さと回転が徐々に上がっている。 ツェツィーリエが一撃入れると二撃で返され、気が付けば攻めから受けに回らされていた。 自身が絶対的に自身のあった距離で圧倒され始めている。
強い事は知っていたが、今はそれ以上に怖かった。
ベリアルの事を普段は痛々しい言動を垂れ流し、どこか余裕を見せる事を格好いいと思い込んでいるアホだと思っていたのだ。 そんな相手が感情を剥き出しにし勝利に執着する姿は圧倒的に大きく見えた。
――不味い。 呑まれたら負ける。
いや、気持ちではもう負けているのかもしれない。
ランク戦であったなら勝負を投げているかもしれなかった。
それほどまでに目の前のベリアルは強かった。 技量ではなく、気持ちが。
「おねーたま!」
ポンポンの声は聞こえる。
認めよう。 今のベリアルは強い。 少なくとも今の自分よりは圧倒的にだ。
だからと言って負ける訳には行かない。 こちらも豹変という仲間の信頼を預かっているのだ。
格好の悪い敗北は彼女の矜持が許さない。
次で勝負を決めに行く。 ヨシナリが倒れた以上、ベリアルを仕留めれば勝負は決まったようなものだ。 つまりここでの攻防がこの戦いの趨勢を決める。
レイピアでの刺突。 驚異的な反応で引き付けてからぬるりとした動きで懐に入る。
腕が伸びきる前に上半身を横回転させ肘からエネルギーブレードを展開。 フックの要領で横から薙ぎ、ベリアルの機体を両断するが手応えがない。 短距離転移。
だが、シックスセンスとリンクしている以上、エネルギー流動に関しては見えている。
踵のブレードを展開し、腰のエネルギーウイングを噴かして強引に体を回転させた。
後ろ回し蹴り。 完全に捉えた。 ブレードがベリアルの胴体を捉え――
「おねーたま! そっちじゃない!」
――!?
ポンポンの声で咄嗟に機体を捻ろうとするが間に合わない。 彼女の蹴りは標的を捉えはしたが、さっきと同様に手応えがない。 また分身。
分身した以上、死角から来た方が本体だと思ったのだが、よく見れば分身が二体もいた。
前と後ろに一体ずつ。 本体は蹴りによって生まれた死角――斜め下だ。
この土壇場で分身の数を増やすとはやってくれると思っていたが、よく見るとプセウドテイを覆うエーテル体が極限まで薄くなっており、中の本体の姿が見えていた。 分身二体――短距離転移の連続使用は機体にかなりの負荷をかけたようだ。
ベリアルはプセウドテイの中身を隠すべきものとして見せた事はほとんどなく、見られる事を屈辱と捉えている節がある。 その為、本体の露出は頑なに嫌がっていた。
どれほどなのかというと、見せるぐらいなら負けを選ぶほどだ。 そんなベリアルが本体を惜しげもなく晒して勝ちに来ている。
「――何をそんなにマジになっちゃってるのよ?」
その様子が普段とあまりにも違うのでツェツィーリエは思わず小さく笑ってしまう。
ベリアルは残ったエーテルの大半を腕に集中させ、ブレードを形成。 ツェツィーリエを貫かんと突き出す。
彼女に躱す術はない。 決まる――はずだったのだが、突き刺さる直前にツェツィーリエの機体を突き飛ばしたポンポンの機体が身代わりとなった。 コックピット部分への直撃は避けたがジェネレーターが破壊されたので彼女の機体はそう長くない。
「何!?」
「へ、悪いナ。 この勝負は間違いなくお前の勝ちだゾ。 でも、試合での勝ちは貰う!」
ポンポンはそのままベリアルの機体を抱きしめるように拘束。
「こうすればお得意の転移は使えないだろ? 悪いがお前はここまでだ! おねーたま!」
「ありがとうポンポン」
ツェツィーリエはレイピアでポンポンの機体ごとベリアルを貫いた。
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