Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第289話

 真っ先に動いたのはヨシナリだ。 戦闘機形態に変形して真っすぐに突っ込む。
 フィールドは山岳地帯だが、互いに地形を活かす気は全くなさそうだ。
 敵機も応じるように加速。 正面から行くようだ。

 「なんからしくなくね?」
 
 マルメルはそう呟く。 ヨシナリの動きに少しだけ違和感を感じたからだ。

 「んー? 確かに珍しく正面からいくなぁ……」
  
 ヨシナリはまず相手を見てから動く傾向にある。 
 装備、挙動などから情報を集めて相手に合わせた最適な戦い方を模索していく。
 それがマルメルの認識するヨシナリの戦い方だったのだが――。

 先に仕掛けたのは敵機だ。 射程に入ったと同時にエネルギーガンを連射。
 ヨシナリは機体をバレルロール――横に転がるような挙動で回避。 お返しとばかりにアノマリーで応射。 敵機は飛んできたエネルギー弾を危なげなく躱す。

 その頃には既にヨシナリは急上昇からの縦旋回――インメルマンターンで敵機の背後。
 
 「あの縦旋回、中々見切れねぇんだよなぁ」
 「……うん。 あの動きは特に無駄がないと、思う」

 模擬戦で散々やられているマルメルとグロウモスはヨシナリの空戦機動を見て小さく唸る。
 相当の練習をしたのだろう。 縦旋回からの射撃、または可変からの射撃といった動きは洗練されており、背後を取ってからの攻撃行動が異様に早いのだ。 

 背後を取られた敵機は即座に振り返ってエネルギーガンで撃ち落とそうとしていたが、背後を取られて時点で後手に回っている。

 「折角、エネルギーウイングがあるんやから旋回して躱せばええのに」
 「そこまで使いこなせてないんじゃないですか? エンジェルタイプ使ってる連中は普通にやってますけど、あれかなりの慣れが要りますよ」

 エネルギーウイングの最大の強みである瞬間加速を利用した急旋回。
 それにより空中で既存の兵器からは一線を画した機動をこなす。
 ただ、それは完璧にコントロールできる場合の話だ。 そうでない場合は制御できずに意図しない挙動へと繋がり、大きな隙を晒す事になる。

 敵機がエネルギーガンを撃とうと構えた頃にはヨシナリは既に変形しており、片足のブースターを噴かして蹴りを放つ。 変形動作がそのまま攻撃に繋がっており、挙動に一切の無駄がない。
 直撃。 敵機がくの字に折れ曲がる。

 「うわ、えげつねぇ蹴り」
 「前のイベントで使ってた動きやね。 その時は失敗してたけど、改善したのかな?」
 「……うん。 レガースを使ってる」
 「レガース? あぁ、本当だ。 足になんかついてる」
 
 レガースというのは所謂、脛当てなのだがヨシナリの付けている物はそんな優しい代物ではなかった。 何故なら蹴りを喰らって敵機が爆散したからだ。 蹴りが命中した部分から千切れて、敵機が二つになっていた。
  
 「おいおい、即死したぞ。 何やったんだ?」
 「あのレガースやね。 当たった場所が爆発しとった」
 「多分だけど指向性の爆弾か何かだと思う……」

 蓋を開けてみればあっさりと試合は終了。 危なげなく勝利したヨシナリはそのまま戻ってくる。

 「おつかれー、どしたん? いきなり格闘戦しだしてびっくりしたわ」
 「どもっす。 元々、接近戦用の戦い方は確立しないとって思ってたんで色々と考えてたんですよ」

 マルメルはさっきの試合のリプレイ映像を呼び出し、敵機を仕留めた蹴りの部分で止めた。

 「なぁなぁ、これって何をやったんだ?」
 「あぁ、足に付けたレガースだな。 指向性の爆弾――クレイモアみたいな物がくっついてて、蹴りを入れたと同時に起爆してゼロ距離で喰らわせるって代物だ。 威力は見ての通りだな」
 「すっげぇな。 相手、粉々だぞ」
 「威力は凄いんだけど最大限に効果を発揮したいなら蹴りを当てる必要があるから安定して使えるようになるにはもうちょっと練習が要るかなって思ってる」
 「前のイベント?」

 ふわわの指摘にヨシナリは苦笑。

 「あぁ、気付かれてましたか。 元々、足の推力偏向ノズルを利用した蹴りを攻撃に組み込もうって考えはあったんで試しはしたんですけど、そこそこ頑丈な奴だとあんまり効果がなくてですね。 しかも前のイベントの時は掴まれてそのまま撃破とかいう格好の悪い結果だったんで改善しようと考えた結果ですね」
 
 キマイラの足は推進力を担っている重要なパーツなので破壊されると非常に不味い事になる。
 それを攻撃に利用するという発想は中々に思い切った事だとマルメルは小さく唸った。
 
 「へぇ、次に戦る時はヨシナリ君と殴り合いができるって期待してもええのかな?」
 「勘弁してください。 俺の反射神経じゃあっさり返り討ちなんで、適度に距離は取らせて貰いますよ」
 「……あの、今回は足を使いたいから真っすぐに行ったの?」
 「あぁ、それもありますが、ソルジャー+にエネルギーウイング装備。 エンジェルタイプの下位互換で、最初に撃ち合った段階で明らかに機体の操作に慣れてなかったんで行けるかなって思ったからですね」
 「こ、根拠は?」
 「うーん。 さっきも言いましたが最初の撃ち合いですね。 皆、ご存じだとは思いますがエネルギーウイングの強みは急旋回、急加速、急停止――要は瞬間的に素早く動く事にあります。 エンジェルタイプ使いはその辺をよく理解しているので攻撃、回避に高い頻度で使用して相手のタイミングを外すように立ち回るのはもはや基本と言っていい動きなんですよ」

 そう言ってヨシナリは身近な例として『豹変』のポンポンとニャーコの二人を挙げた。
 
 「ポンポンさんは射撃前、回避のタイミングで使用して想定外の挙動を取るように意識して相手の反応を遅らせる動きをしています。 ニャーコさんは仕掛けるタイミングで噴かしてるから、前知識がないと攻撃が手元ですっげー伸びるように見えるんですよ。 だから躱したと思ったのに喰らったなんてザラにあります」

 ヨシナリはウインドウに視線を向ける。

 「で、今回の相手にはそれが一切なかった。 隠している可能性もありましたが、ソルジャー+が実装されてそう経っていない事を踏まえるとエネルギーウイングを碌に使いこなしていないって結論になったって事ですね。 強みを活かせずに出力の高い推進装置としてしか扱えないレベルなら通るかなって考えてあんな感じになりました。 付け加えるならキマイラで打撃はあんまり褒められた事ではないので意表を突けるって考えも勿論ありましたよ」

 ふわわは「へー、考えてんねんなー」と感心したように頷き。
 グロウモスも納得したのか頷く。 マルメルは理解はしたが、部分的に真似できるかなと考える。
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