Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第292話

 ラーガストは何も言わない。 だが、言外に正解だと言っているようなものだった。
 ヨシナリは思考を回す。 仮にこの話が本当なら攻略のハードルがかなり下がる。
 あの惑星には急所が存在し、そこを潰せば惑星の機能自体が死ぬ。 施設をちまちまと破壊する必要すらない。 だが問題は場所、どこにあるかだ。

 怪しい場所ならいくつか心当たりがある。 だが、現状の戦力で突破できるか?
 これは時間をかけて検討したい内容だった。

 「ありがとうございます。 参考になりました」

 ヨシナリは頭を下げるがラーガストは無反応。 
 それを見て少しだけ迷うが、これを逃すと機会がなさそうなので可能な限り質問をぶつけてみようと話を続ける。

 「次のイベント戦。 ラーガストさんは出ないんですか?
 「出ない。 出る必要がないからな」
 
 必要がない?
 
 「それはどういうことですか? なら何で前の防衛イベントには?」
 「……今回はオペレーターの参戦がないからだ」
 「オペレーター?」
 
 ラーガストが答えない。 だが、それが何を指すのかは心当たりがあった。
 少し前の緊急ミッションで見かけた謎の機体。 圧倒的な強さを誇る運営側のプレイヤー。
 アレと戦う為にラーガストは参戦していたのか? そう考えると納得がいく点も多い。

 侵攻イベントに参加しなかった理由も同様にだ。 
 問題は何故、彼がここまで知っているかになるが、恐らくは――

 ――Sランクは何らかの優遇措置を受けている。

 ヨシナリはそう結論付けていた。 
 このゲームは実力至上主義だ。 強者には全てが与えられる。
 大量のPとそれに付随する様々な物。 特にPという特殊通貨はリアルで非常に高値で取引される。
 
 このゲームに人が増え続けている要因の中で特に大きいものだろう。
 Pを安定して入手できるのなら文字通り生活が成り立つのだ。 どうやってたかがゲーム内通貨にそこまでの付加価値を付けたのかはさっぱり分からないが、売れている以上はヨシナリには理解できない何かがあるのだろう。 付け加えるならSランクの収入にも不自然な点が多い。

 ランク報酬は一週間に一度の合計四回と月末に特別報酬が支給される。
 後者はランクと一か月の間に行った戦闘回数によって決まる。 要は最低限の試合数しかこなしていないのであれば小遣い程度しかもらえない。 中、長期的に資金を得るにはランクを上げるのが近道ではあるのだろうが、ヨシナリは自己を高める事を優先していたのでそちらはややおざなりになっていた。 

 Sランクともなればその報酬も莫大な物だろうが、あのエイコサテトラを成立させるにはそれでも足りないと思っていた。 
 これはポンポンから聞いた話なのだが、ジェネシスフレームはプレイヤー個人に合わせたワンオフ機だ。 その為、通常のパーツとは規格が一切合わない。 

 ならどうやって強化するのかと言うと、強化プランというシステムだ。
 相当量のPを投入する事でシステムが最適な強化プランを提案し、実行する。
 それによりジェネシスフレームは無限に進化していく。 仕組みが分かれば単純な話で、ジェネシスフレームはPを投入すればするほどに強化されていくのだ。 

 ――つまりPはいくらあっても足りない。

 支払額は強化内容で変わるとの事だが、ツェツィーリエですらたったの三回強化プランを実行しただけで資産が枯渇したとの事。 何かで入用になるかもしれないので一定額は確保しなければならない。
 そう考えるとAランクプレイヤーは常にPが足りていないようだ。 

 ――反面、Gは使わなくなるから有り余っているらしい。

 ラーガストやユウヤが簡単に自分の報酬を置いていく訳だと納得する。
 要はラーガストは通常とは違う形でこのICpwをプレイしているのだ。
 恐らくは舞台裏についてもかなり深い部分で知っているのだろう。 そうなるとこれだけ事情に通じている理由にも納得がいく。 そしてもう一点、見えてくるものがある。

 ラーガストはオペレーターとやらの存在をはっきりと口にした。
 場合によっては規約違反とも取れる発言だ。 それを一向に気にしていないという事は、恐らくだが規約内容すらも変わっている可能性が高い。

 ――何で色々知っているんですか?はNGだな。

 ラーガストは喋れてもヨシナリはそんな優遇は受けていない以上、深追いは危険すぎる。
 なら、抵触しなさそうな話に絞って質問するべきだ。 詳細を話さずに情報を活かすのは手間がかかるなと思いつつも質問は止めない。

 「では、あの惑星に居るエネミーについてですが――」
 
 まるで地雷原を歩いているようだと思いながらヨシナリは油断なく、ラーガストへの問いを続けた。


 「――ふぅ」

 グロウモスはランク戦を数度こなし、一息入れる為にユニオンホームに戻ってきたのだが、そこではヨシナリはが疲れた様子でぐったりとしていた。
 
 「ん? あぁ、グロウモスさんですか。 おつかれです」
 「ど、どうしかしたの?」
 「……まぁ、ちょっと気を遣う相手と一緒だったので疲れただけなんでお気になさらず」

 よく分からなかったがさっきまで誰かと一緒だったようだ。
 沈黙。 普段ならヨシナリが何かを言って来る流れだが、消耗している今の彼には少し難しいようだ。 グロウモスは二人きりかと考える。 彼女の中ではヨシナリは自分に気があるのだ。 
 
 そう認識している以上、嫌でも意識してしまう。
 こ、ここは私が何か話を振るべきなのでは!?

 ――べ、べつにぃ、意識とかしてないけどぉ? 悪い気はしないし? 偶には私から話を振ってあげてもいいかなって気持ちになってるだけだし?

 もごもごと内心でそんな言い訳を並べながらどんな話を振るべきかと話題を探す。
 一番無難なのはゲームの話題。 イベント戦の話やランク戦での立ち回りの話をだろう。
 それとも少し踏み込んだ話をするべきだろうか? 何歳?とか、何処住み?とかだ。

 ――そ、そろそろいいよね? だ、だってこいつ私の事好きなんだから構って貰えてうれしいはず! よし、聞くぞ! さぁ、聞くぞ! 今、聞くぞ!

 「あ、あの――」
 「ランク戦の調子はどうですか? あ、すいません。 何か言いかけてましたね。 何ですか?」
 「え? あ、大した事ないからいいの。 それよりもランク戦?」 
 「はい、最近の戦いぶりを見せて貰っていますが、俺としては初見の相手ならそう負ける事はないと思ってます。 本人的にどうなのかなと思いまして」
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