Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第294話

 これに関してはメインのブースターが足ならではだ。
 一応、背に付ければ直立姿勢でも速度を上げる事も可能だが、今のヨシナリにそんな金はなかった。
 
 「やっぱりキマイラになるとソルジャータイプとは勝手が全然違うのでここまで乗れるようになるまで結構、時間かかりましたよ」

 言っている事は分からなくもなかったが、どんな練習をすればあんな挙動が可能になるのだろうか?

 「練習ってどんな感じの事をしてるの?」
 「――え? 練習内容ですか? ビルの隙間にターゲットを配置してランダムに動かすんですよ。 で、それをトップスピードに乗った状態で変形から拳銃を抜いて射撃っていうさっきの動きまんまの練習ですね。 最初はこんな曲芸じみた真似できるのかとちょっと不安になりましたが、シックスセンスがあるので敵の動きはある程度先読みできます。 後は隙間と敵が重なるタイミング後は慣れがあればなんとかなります」

 グロウモスは練習風景を想像する。 
 あの射撃練習をひたすらに繰り返すヨシナリの姿が浮かび、自分に真似できるだろうかと首を傾げた。
 
 ――難しい。

 無理とは言わなかったのは彼女なりのプライドだったのかもしれない。
 静止した状態で止まっている的を撃ち抜く。 楽勝だ。
 静止した状態で動いている的を撃ち抜く。 特に問題はない。
 
 注視していれば大抵の物には当てられる自信はあった。 
 ただ、動いている状態でとなると話は変わって来る。 基本的にグロウモスは射撃体勢に入ってからエイムまでの時間はかなり短いが、自分が止まっているという前提姿勢が必要なのだ。

 その為、自分には真似できないスタイルだなと思ったが、今後のランク戦を勝ち上がっていくには個人技を磨く必要がある。 
 あんな曲芸じみた真似は不可能ではあるが、少しグレードを落として移動しながらの狙撃はどうだろうか? 

 ――まだ、現実的かもしれない。

 負けた悔しさはあるが、それ以上に試してみたいといった気持ちが強かった。
 
 「うん。 ありがとう、参考になったからちょっと練習してくる」
 「え? あぁ、はい。 お疲れです」

 善は急げと言わんばかりにグロウモスはウインドウを操作してトレーニングルームへと消えていった。
 

 ――行ってしまった。

 「何だったんだ?」

 何か思う所があったのかさっさと消えたグロウモスにヨシナリは首を傾げた。
 よく分からないが、メンバーのモチベーションが上がるのはいい事だと特に気にしない事にして自分はどうするかなと悩んでいると――

 「あれ? ヨシナリ君だ。 やっほー」

 ふわわが現れた。 
 グロウモスが消えて直ぐだったので凄いタイミングだなと思ってしまう。

 「あ、どうもお疲れです。 調子はどうですか?」
 「うーん。 ぼちぼちかなー?」
 
 何故かふわわは周囲をきょろきょろと見回す。 
 彼女にしては珍しく周りを気にしているようだ。 何か探し物か?

 「何かありました?」
 「――えーっとやね。 ちょーっと聞きたい事があるんやけどいいかな?」
 「はぁ、何でしょうか?」

 こうして改まって何かを相談されるのは珍しい事だった。 
 ヨシナリは何だろうと首を捻っているとふわわはやや躊躇いがちに口を開く。

 「あんな。 ウチって妹がいるんやけど」
 「はい、妹さんですか」
 「うん。 その妹がな、このゲームやりたいって言うてんねん」
 「はぁ、良い事なのでは? ――あぁ、もしかしてユニオンに入れて面倒見たいとかそんな感じの話ですか?」
 「えっと、まぁ、ユニオンに入れたいのはそうなんやけど、ちょっと変な事を言い出すかもしれへんねん」
 
 ――何を言ってるんだ?

 要領を得ないな。 ふわわにしては歯切れがかなり悪い。
 察するにその妹とやらには何らかの問題があるといった所だろうか?
 正直、面倒事を持ち込むなら勘弁して欲しいというのはヨシナリの率直な意見だったが、ふわわには普段からお世話になっているので可能な限り頼みは聞いておきたい。

 ――まぁ、いいか。 ふわわが連れてくる以上、何か問題があれば彼女に投げればいい。

 「よく分かりませんが、俺は構いませんよ。 それとも妹さんは何か問題を起こし易い性格なんですか?」
 「そう言う訳ではなんやけど……」
 「取り敢えず連れてきてください。 話はそれからにしましょう」

 どちらにしてもこれ以上の事は聞き出せそうになさそうだ。
 後は実物を見て判断した方がいい。 そう判断したヨシナリはやや強引ではあるが話を進める。

 「それで? いつごろに始める予定なんですか?」
 「うん。 色々と落ち着いてからになると思うから、次のイベントの後ぐらいになりそう」
 
 タイミング的にも悪くない。 初心者にあの惑星の環境は過酷すぎる。
 下手に連れて行って気にして撃墜されるような事になっても面白くない。
 最低ランクからのスタートなのだ。 徐々に慣らす所からだろう。

 話が纏まるとふわわは用事があると言ってログアウトした。
 どうやらこの話をする為だけにログインして来たらしい。 
 何とも慌ただしい話だった。 ヨシナリは小さく息を吐くと、どうしようかとウインドウ開くとおやと少し首を傾げる。

 理由はメールを受信していたからだ。 差出人はツガル。
 何だと内容を見てみると次のイベント戦に備えてのユニオン会議があるらしく、良かったら参加しませんかといったお誘いだ。 どうも大手ユニオンはあの地獄のような惑星とは次回で決着を着けたいと考えている様で意地でも次で勝ちたいらしい。 その為にユニオン間での連携を密にしたいとの事。

 ――で、その場に混ざらないかという話か。

 行っていいなら行きたいが俺が行ったら場違いじゃないかと少し思ってしまう。
 どうしようかなと悩んでいると今度はポンポンからメールが来た。
 何となく理由を察してはいたが、開くとユニオン会議をやるからお前も来いと書いてあった。

 来るか?ではなく来いだ。 

 「……はぁ、まあいいか」

 何時頃だと確認すると一時間後らしい。 
 
 ――一時間後!?

 「せめて前日ぐらいに声をかけてくれませんかね……」
 
 小さく溜息を吐いて二人に了解と返事を送る。 
 取り敢えずさっさと移動するか。 それにしても――

 「次から次へと今日は妙に忙しいな」

 入れ替わりに次から次へと謎の来客や用事が入って来る。
 妙な一日だなぁと呟きながらヨシナリはウインドウを操作して指定された場所へと移動した。
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