Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第298話

 ――そしてイベント当日。

 「なぁ、本当にこれ持って行くのか?」 
 「あぁ、最悪、シャトルに置いていけばいいから邪魔にはならないと思う」
 
 マルメルはヨシナリに持たされた荷物について質問していたが、使わないならシャトルに置いていけばいい。 
 まず、最初の注意点はシャトルを乗り捨てずに着陸まで乗り続ける事。
 そうする事で着陸後はシャトルを操作可能になるので比較的、安全な場所に隠す事ができる。
 
 「さて、そろそろ始まりますが、全員準備はいいですか?」

 ヨシナリがそう尋ねると――

 「おう! 今回は勝とうぜ!」
 「そうやね! 頑張っていこう!」
 「が、がんばります」

 いつものマルメル、元気いっぱいのふわわ、そして控えめながらやる気を主張するグロウモス。
 モチベーションには問題ない。 

 「行こう」

 ウインドウを操作。 全員の参加を確認した後、イベント戦への参戦する。
 全員のアバターがユニオンホームから消失し、イベントマップへ。
 初期配置は前回と同じく、シャトルに固定された状態からのスタートだ。

 降下している最中でガタガタとシャトル全体が激しく揺れる。
 
 「現在地ってどの辺だ?」
 「待ってろ、確認する」

 ヨシナリがマップを開いて現在地を確認。 
 惑星に入ると吹雪と風、通信施設などによる妨害でセンサー類のパフォーマンスが大きく低下するので、確認するなら宇宙にいる間が最も望ましい。

 「前回よりはかなり南に降りる事になりそうだ」
 「『豹変』やら『栄光』は?」
 「――あー、結構、遠いな。 着陸地点からだと『豹変』はかなり西、『栄光』は北になる」
 「遠いん? 合流どうするん?」
 「ぶっちゃけると数百キロレベルの距離なので結構かかりますね」

 どちらもかなり遠い。 
 一応、事前の取り決めでは合流が難しい場合は近くに居るユニオンと合流する事を推奨される。 
 
 「誰か知り合いはいんのか?」
 「ヴルトムの『大渦』は比較的ではあるけど近いから合流できそう」

 ただ、Aランクが居ないので、戦力的には少し厳しい。
 ヨシナリはフレンドリストを開いてベリアルと助っ人依頼したプレイヤーの位置を確認すると、両方ともそこまで離れていない。
 彼等に関しては行動を縛るつもりはないのでほどほどに期待しておこう。
 
 来たら来たで面倒事にはなるのだが……。 
 ヨシナリがそれを呑めば助けてはくれるだろうが、代償が重いのでどうしたものかと内心で小さく頭を抱える。 シャトルが一際大きく揺れた。

 シャトルが惑星の影響範囲に入ったようだ。 レーダーやセンサー類の機能に制限が入る。
 現在地を事前に『思金神』から支給された地図と照らし合わせるが――
 
 「これ、ヤベぇな」
 「どうした?」
 「降下地点から数十キロの場所に例の全部乗せの基地がある」

 生産、通信の両方を兼ねている上、ジンベエザメ型とメガロドン型が駐屯している地獄のような場所だ。

 「うわ、勘弁してくれよ」
 「どうするの? ウチはどっちでもいいけど?」
 「この戦力じゃ無理ですからヴルトムと合流して北上します。 北に通信施設があったので『豹変』か『栄光』のどっちかが来てくれる事を祈りましょう。 後、近すぎるのでシャトルは諦めるしかありません」

 シャトルは動かすとどうしても目立つ。 その結果、メガロドン型にでも捕捉されたら目も当てられない。

 「いきなり予定が狂ったなぁ。 って事は荷物は全部持っていく事になるな」

 マルメルが小さくぼやくがヨシナリも全く同じ気持ちだった。 もうちょっと安全な場所に降りたかったと思っていたが、決まった以上は仕方がない。
 そうこうしている内に着陸。 シャトルのハッチを解放して全員の機体が固定を外して外へ。
 
 「ふわわさんとマルメルは周囲の警戒。 グロウモスさんは通信機の準備、俺は見つかり難いようにシャトルの動力を落とします」

 マルメルとふわわは事前に打ち合わせしたので、特に迷う事もなくシャトルから少し離れた位置に移動。

 「二人とも離れすぎるとこっちから状況をモニターし辛くなるから離れないように。 後、フグ型は見つけても手を出すのは厳禁で」
 「了解だ。 ちゃんと見張ってるぜ」
 「大丈夫やよー」
 
 話している間にグロウモスが持ち込んだ通信機を起動。 
 箱型のデバイスで、設置するとアンテナのような物が付き出し起動している事を示すように点滅する。 
  
 「さて、どの程度の効果があるか……」
 
 一応は通信妨害下でもある程度の距離でも通信できるようにしてくれる代物なのだが、期待値としてはあまり高くなかった。 通信を試みる相手は一番近いヴルトムからだ。
 基本的にこのゲームの通信は三種類存在し、一つは範囲内なら誰でも聞き取れるオープン回線、二つ目はユニオン専用の回線でメンバー全員、個別と細かく設定できるので中々に便利だ。

 最後がフレンド用の回線。 その名の通り、フレンド登録した相手と話す為の回線だ。 
 その為、フレンドリストに名前があれば通信を行う事が可能となる。
 通信先をヴルトムに設定して通信回線を開く。

 「ヴルトム。 聞こえるか?」
 「――――ヨシナリか!? お、おぉ、聞こえ辛いけど聞こえるぞ!」
 
 ノイズも多く、若干のタイムラグもあるがしっかりと通じている。
 どうやら使えるようだ。 これなら連絡手段は問題ないなと内心でほっと胸を撫で下ろす。
 
 「できれば合流したいんだが、構わないか?」
 「――あ、あぁ、大丈夫だ。 位置は――あぁ、クソ、降りた途端にマップが参照できなくなった。 このフィールド徹底的にセンサー系を殺しに来るの何なんだ!?」
 「はは、まぁ、今回で終わりにする為に頑張ろうぜ。 そっちの降下地点はこっちで把握しているから、動かなければこっちから迎えに行くけどどうする?」
 「――来てくれるのか? だったら助かるぜ、こっちは待ってればいいのか?」
 「あぁ、ただこっちは例の全部乗せの基地が近いからシャトルを動かすのは止めとこうと思ってる」
 「――分かった。 どれぐらいで着く?」
 「何もなければ一時間と少しぐらいで行けそうだ。 ただ、二時間経って合流できなかったら俺達に何かあったと判断してくれ」
 「――おいおい、怖い事言うなよ」
 「それだけヤバいんだって。 取り敢えずそっちはあまり動かないでくれ、こっちは降下地点へ向かうから離れられると見つけ辛くなる」
 「――オッケーだ。 いい子で待ってるぜ」

 通信終了。 
 ヨシナリは小さく息を吐く。 長いイベントの始まりだ。
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