Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第307話

 その為、キマイラやエンジェルタイプのような高機動機であるなら逃げ回る程度の事は可能となる。
 ただ、足の遅いソルジャータイプが狙われるのを防ぐ為に攻撃範囲に居座り続けなければならないという制約はあるが。 

 ――こうして見てみるととんでもないな。

 シックスセンスでメガロドンを視る。 どんなジェネレーターを使っているのか出力が桁違いだ。
 あれだけの攻撃を繰り返して衰える気配がない。 だが、所詮は中身のないエネミー。
 攻撃範囲に居座る事でひたすらに目の前の機体に向けて攻撃を繰り出し続けていた。

 動きは単調で、決して勝てない相手ではない事は前回の時点で分かってはいたが、本当に勝てるのかはまた別の話だ。 ヨシナリは機体を急上昇させて上から俯瞰。
 メガロドン型の全貌を確認する。 頭の横に付いている高出力のレーザー砲は正面固定なので頭と同じ方向にしか飛んで来ない。 要は頭部を正面に捉えなければまず喰らわないとみていいだろう。

 実弾の巨大なガトリング砲も同様に基本的に正面のみだ。 多少は動くか正面に向けて円を描くような可動範囲なのでこちらも真正面に立たなければ脅威度は激減する。
 真の脅威は脇腹のミサイルだろう。 大小、様々なミサイルが次々と飛んでくる。
 
 誘導性能は高く、ロックされた場合は下手に躱すよりは撃ち落とした方が早い。
 こちらは全方位にばら撒くので上手に躱さないと下手をすれば正面まで引っ張り出されてそのままメイン火力の餌食となる可能性も充分にあるので周囲を意識しながらの回避が求められる。

 ヨシナリがこのエネミーを倒せない敵ではないと判断したのは分かり易い死角が存在する事にあった。 問題は安全地帯を確保できたとしても撃墜が難しい事だ。
 エネルギー流動を見るとメガロドンを覆っているエネルギーフィールドの密度は非常に高い。

 一応は命中した個所は脆くなっているが、かなり撃ち込まないと穴を開けるのは厳しい。
 そしてそんな悠長な事をしているとミサイルの餌食になってしまう。
 エネルギー兵器に関しては無敵の盾と言っていいが、穴がない事はなかった。

 正面だ。 派手にレーザー砲やらを撃ちまくっている関係で正面にはフィールドを展開できない。
 その為、正面からの撃ち合いならエネルギー兵器が十全に威力を発揮するが、あの化け物火力と正面から殴り合うのは自殺行為に等しい。 結局、散発的に攻撃する事でこの場に留める事しかできないのだ。

 ちらりと地上を視る。 マルメルとヴルトムは背後からひたすらに実弾をばら撒いていた。
 当たってはいたが、明らかに装甲の表面で弾かれているので碌にダメージが入っていない。
 ハンドレールキャノンを狙っているようだが、何処に当てるべきかを悩んでいるようだ。

 グロウモスは離れた位置からひたすらに狙撃を繰り返していたが、こちらも効果がない。
 気を引く事すらできないのでどう動くべきかと悩んでいるようだ。
 ふわわはどうにか取り付こうとしているが、ミサイルに阻まれて近づけない。
 
 ヨシナリもどうにか攻撃の切れ目を狙ってフィールドが展開されていない正面からの攻撃を狙っていたが、上手く近寄れない状態だ。 ツガルも似たような事を考えているのか、ヨシナリと似た挙動を取っていたが、諦めて後退を繰り返している。

 凌げてはいるが完全ではない。 
 敵のミサイル攻撃に一機、また一機と撃墜されているので状況は悪化はするが好転はしなかった。
 本音を言えば下がって立て直したいがそれをやると基地まで来るので、そうなってしまえば味方に多大な被害が出てしまう。

 ――結局、Aランクが施設の制圧を終えて戻ってくるまで待たなければならないのか……。

 本音を言えば自力で仕留めたいが、現状では難しい。 
 せめてあの障壁を剥がす手段があれば――
 
 「――来てくれたのか……」

 不意にレーダー表示があるものを捉えた。 
 フレンド登録しているプレイヤーの反応。 真っすぐにこちらに向かっている。
 やや望み薄だったが、手を貸してくれる気になったようだ。 

 ――ただ――

 「あぁ、この後の事を考えると気が重いなぁ……」

 実力に関しては申し分なく、この状況で最も必要な人材とも言えるが出してきた条件が非常に重かった。 
 
 「まぁ、なるようになるか」

 ヨシナリは後の事は後で考えようと思考を放棄した。
 その甲斐あって唐突に嵐を突っ切って現れた機体が飛び上がり、持っていたハンマーを一撃。
 圧倒的な強度を誇ったメガロドン型のエネルギーフィールドが笑ってしまうほどにあっけなく砕け散った。

 それを成したのは黒に近い血のような赤い機体。 
 全身鎧のような印象を受けるその機体は一度見たら忘れる事などできないほどに個性的だ。
 プルガトリオ。 Aランクプレイヤー『ユウヤ』の駆る愛機だった。

 「ヨシナリ。 お前の提案、受けてやる。 その代わり、俺の出した条件は吞んでもらうぞ」
 「了解です。 よろしくお願いしますよ」

 イベント開始前に話は済んでいたのでヨシナリとユウヤの間で交わされるのは確認作業だ。
 
 「――指示を出せ。 従ってやる」
 「バリアの破壊を優先。 とにかく常に攻撃が通るように状況の維持を」
 
 ユウヤは応えずに駆け出す。 軽量機ではあるので動きが速いのは理解できるが、スラスターの噴射に合わせて走るので、一歩一歩のストライドが恐ろしく広い。
 傍から見れば走っているようにしか見えないので猶更、その異様さが際立つ。

 メガロドン型がフィールドを再展開。 同時にユウヤがハンマーを叩きつけて砕き散らす。
 彼の機体プルガトリオの装備群『ジ・アビス』の一つ。 『スペルビア』これは背の大剣をハンマーに変形させたもので非常に強力な打撃力を誇るが、それ以上に恐ろしいのはそのヘッド部分に搭載されているエネルギーの無効化兵装だ。 それによりエネルギー系の防御兵装は彼の前ではほぼ効果がなくなる。 それはあのメガロドン型と言えど例外ではない。

 ヨシナリとしては多少の中和が出来れば上出来だと思っていたが、完全に破壊してしまうとは思っていなかった。 メガロドン型は大量のエネルギーを使用してフィールドの再展開。
 ヨシナリはその様子を冷静に眺めつつ、脳裏で数を数える。 再展開が完了。

 五秒。 メガロドン型のフィールド再展開までの所要時間だ。
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