Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第311話

 それ以上に凄まじいのはプルガトリオの機動性。 
 推進力ではなく、機動性なのだ。 とにかく挙動が軽快で速い。
 一歩で通常のトルーパー数歩分の間合いを詰めるので、対峙した相手からすれば気が付けば目の前なのだ。 そうなってしまえばどうにもならない。

 あの剣でズタズタにされるかハンマーで叩き潰されるかの二択となる。
 ベリアルも大概だったが、ユウヤも負けていない。 得意レンジが広い分、やり難さでは上だ。
 
 「オラオラぁ! 道を開けろぉ!」

 追い付いてきたマルメルが銃弾をばら撒き、ふわわが敵を斬り倒す。
 そしてヨシナリに攻撃しようとした敵機が次々と何処からか飛んできた銃弾に射抜かれる。
 グロウモスの援護だ。 彼女の機体は屋内戦に向いていないのでアルフレッドと外で突入の援護とその後は敵の排除を行う。 

 「さっさと行くぞ」

 ユウヤが先頭で施設内に突入。 
 ヨシナリ達がそれに続き、少し離れた位置からヴルトムや他の機体が追いかけてきていた。
 どの施設も構造は同じなので道は頭に入っている。 それはユウヤも同様なので後ろを気にせずに単騎で突き進む。

 ――突っ込みすぎだ。

 「前に出過ぎだ! 少し緩めろ!」
 「だったらさっさと追いついて来い」

 ヨシナリが制止を呼びかけるがユウヤは気にせずに進む。 
 お陰でヨシナリ達もスピードを上げざるを得ない。 

 「えらいせっかちやなぁ」
 「一応、言っときますけどふわわさんも最初の頃は大概でしたよ」
 「え~そう?」

 ふわわはいつもの様子でマルメルはやや呆れ気味だ。
 ヨシナリは仕方がないとシックスセンスの感度を上げる。 本来ならもう少し慎重に進みたかったのだが、こうなってしまった以上は合わせるしかない。

 地下への通路へ飛び込み。 更に進む。

 「なんつー速さだ」 

 思わず呟く。 
 戦闘機形態ではないので最高速度は出ないが推進装置はトルーパーの平均以上のはずだが、追いつけない。 どんどん離されていく。
 速度を上げられなくもないが、これ以上はマルメル達を引き離してしまう。

 嘆息。 ヨシナリは諦めて速度を緩めた。
 それにより更に引き離されたが、マルメル達が追い付いてくる。 
 背後ではユウヤが雑に処理した事で残った敵との交戦が行われており、隊列が伸びきってしまうと不必要な損耗が発生するだろう。 

 「おいおい、良いのか? 行っちまうぞ?」
 「言っても聞かない以上は好きにさせるさ。 ヴルトム達が追い付いてくるまで待とう」

 マルメルは小さく鼻を鳴らしてユウヤが消えていった方を一瞥。

 「まぁ、お前がいいって言うんならいいか」
 「あぁ、いいんだよ」

 これまでの付き合いでユウヤという人間が、束縛される事を非常に嫌う事は良く分かっていた。
 ――というよりはカナタを嫌っている最も大きな要因がそれだろう。
 その為、注意の類は逆効果になる可能性が高い。 問題がないかと聞かれれば実の所、そこまで大きな問題ではなかった。 

 理由としてはユウヤは明確に足を引っ張らないからだ。 
 寧ろ、全体がある程度見えている事もあって行動に迷いがない。
 加えて、独りで突出しても生き残る実力がある。 その為、足並みを揃えてくれない事に不満こそあるが、邪魔にならない以上は好きにさせればいいといった結論に落ち着くのだ。

 元々、ユウヤのユニオン参加は限定的な物だ。 
 彼がヨシナリに出した条件は『所属だけ』となる。 つまり、幽霊部員のような物だ。
 ただ、メンバーである以上、参加要請はしやすくなるので縁を強くできただけでいいかと割り切ったのだ。 ただ、代償にカナタからの心証はどん底まで落ちたが。

 これでツガル達への相談を怠っていたのなら彼等からの信用も失っていたのかもしれないと考えると少し割に合わないと思っていたが、そうはならなかったのでユウヤに関しては最悪、今回限りと割り切る事もできる。 

 マルメルはあまり面白いと感じていないのか、やや不機嫌そうだがこの様子だと呑み込んでくれそうだ。 ふわわはいつも通りなので問題ないだろう。
 振り返るとヴルトム達が追い付いてきたので合流。 

 「すまん。 待たせちまったか?」
 「いや、大丈夫。 ユウヤが露払いをしてくれているので残敵を片付けつつ奥へ行こう」
 
 進むにつれて叩き潰されたエネミーやトルーパーの残骸があちこちに転がっている。
 こうして通った後を見ると凄まじい光景だ。 胸部が大きく陥没しているのはまだまだ可愛い物で、酷い場合は壁に張り付いて押し花のようになっている機体まである。

 加えて破壊のされ方もバラエティに富んでおり、チェーンソーで切り刻まれた機体、散弾砲で風穴を開けられた機体、電磁鞭で焼かれた機体と知らなければこれを生産した人数を誤認したかもしれない。
 
 「うわ、流石にランカー様はやる事が違うな。 ってか、お前よく仲間にできたな?」
 
 その光景を見てヴルトムが声を漏らすが、ヨシナリは乾いた笑いで返す。
 少し進むと戦闘の音と思われる物が聞こえてくる。 道中、敵と出くわさなかったのはユウヤなりに考えて敵を全滅させたからなのかもしれない。

 前回はふわわが似たような感じで制圧したので若干の既視感を覚えながら最奥へと辿り着いたのだが、もう終わりそうだった。
 あちこちに敵性トルーパーの残骸が転がっており、最後の一機である白黒ツートンが片腕が抉れた状態でユウヤと対峙している。 恐らくは散弾砲を貰ったのだろう。

 内部機構が剥き出しになっているので、損傷は深刻だ。 
 敵機はエネルギーウイングを噴かして急旋回。 ユウヤの背後を取ろうとしたが、それに合わせて大剣をフルスイング。 完璧にその胴体を捉え、敵機がくの字に折れ曲がり、同時に大剣のギミックが展開。 回転刃が飛び出し、機体を両断。 衝撃で敵機の上半身が回転しながら飛んでいき、近くの壁に激突。 ぐしゃりと嫌な音がした。 

 「遅かったな。 終わったぞ」

 ヨシナリ達に気付いたユウヤはそう言って、さっさと奥のハンガーに機体を収めてメンテナンスを始めてしまった。 念の為にヨシナリはシックスセンスで索敵を行ったが問題はなさそうだ。
 生産設備の方を確認すると上はまだ手こずっているのか、制圧は完了していなかった。

 「よし、敵機の反応はなし。 機体の損耗が激しい人からハンガーを使ってください!」

 あんまり出番なかったなと思いながら敵機が居ない事を確認したヨシナリは順番に整備と補給を行うように促す。
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