Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第313話

 運営の温情なのか生産設備の利用はプレイヤーのウインドウで実行できるので、順番待ちをする必要はなかった。
 その為、必要な装備を入力するだけでシステムが勝手に用意してくれる。
 幸いにもこの先に必要な装備は全てユウヤが持っていたので全員分の製造を依頼。
 
 ユウヤが嫌そうにウインドウを操作している間にヨシナリ達は作戦会議だ。
 
 「まず用意する装備は水中用の推進システム。 スラスターじゃなくてスクリューで進むタイプだな。 ぶっちゃけると地上よりかなり機体が重たくなるだろうから注意が必要だ」
 「って事は全員メインのブースターを外す感じか?」
 「いや、何があるか分からない以上、地上用の装備を持っていかないのは危険すぎる。 だから、ユウヤに用意して貰ってるのはリュックみたいに背負うタイプだな」

 ヨシナリがウインドウを操作して画像を見せる。
 そこには箱のような装備が映し出されており、スクロールすると装着方法が表示された。
 機体の背中に張り付けるとベルトのような物が機体に巻き付いて固定される。

 「ただ、固定具がベルトだけなので攻撃が掠ったり必要以上の負荷がかかると外れる可能性もあるから気を付けるように」
 「なぁ、ヨシナリ君。 ちょっと聞きたいんやけど?」
 「はい何でしょう?」
 「こんな半端な装備でええの? 移動するだけやったら問題ないけど戦闘となると邪魔やない?」
 「でしょうね。 俺の見立てではずっと水中を移動する訳じゃないと思ってるので移動力を重視した装備になっています」
 「とういうと?」
 「……もしかしてヨシナリは何かしらの施設があるって考えてる?」
 「はい、グロウモスさん正解。 根拠としては例の全部乗せの施設です」

 ヨシナリがウインドウを操作して基地の画像を呼び出す。

 「見れば見るほどにえぐい戦力だな」
 「妙なシールドで守られてる事もあって、ここだけは自力で陥落させたいって運営側の意図が見えます」
 「それで?」
 「敵としても、戦力を集中している以上は何があってもここだけは陥落させたくないんですよ。 つまりこの施設の下には反応炉への直通通路があると俺は考えています」
 「ははぁ、読めたぞ。 つまり非正規ルートである水中からその施設とやらに取り付くつもりだな」
 「その通りだ」
 
 危険ではあるが、例のイカが出てきた穴を通れば向かう事は可能なはずだった。
 そうでもなければ他のサーバーが初見でクリアなんて真似ができるとは思えない。
 
 「でもよ、あの穴の先ってイカで埋め尽くされてんじゃないか?」
 「間違いなく死ぬほど居ると思う。 一応は効きそうな武器の当てはある」
 「それを今、用意させてるって感じか?」
 
 マルメルがちらりとユウヤの方を見ると彼の周りには武器や装備が詰まったコンテナが山になっている。 

 「グロウモスさん」
 「は、はい!?」
 「今回の水中での移動、あなたの腕にかかっていると言っても過言ではありません。 期待してますよ!」
 「ふぁ!? が、がんばりましゅ」

 急に話を振られて挙動不審になったグロウモスが慌てていたが、ヨシナリは構わずに話を続ける。

 「で、イカに対しての対処なんだが――」
 
 
 「うぅ、ヨシナリ君。 酷いわぁ……」

 ふわわが少しだけ泣きそうな声を出して肩を落とす。
 何故なら彼女の機体は背中には巨大なウエポンコンテナ、腰には弾丸格納用のボックスが連なっており、肩には複数の銃をストラップで引っ掛けている。 明らかに荷物持ちと言った様子だった。

 「すいません。 少しだけ我慢してください。 向こうに着いたら全部下ろしていいですから」
 
 他の機体も軒並み水中戦を意識した装備に切り替わっており、ヨシナリのホロスコープも背中に水中用の推進装置を背負っている。 ただ、この装備の問題は機体の挙動に干渉するので変形ができなくなる事なのだが、水中では変形した所で碌な推進力を確保できないので仕方がなかった。

 カナタ達には地下を調べたいとだけ言っておいた。 

 ――直接は気まずかったのでツガル経由だが。

 全体の方針としては地下はイカの処理が面倒という事もあって優先度は低い。
 それよりも大量破壊兵器を使って基地を潰して回った方が効率的と思っているからだろう。
 お陰で許可はあっさり下り、『星座盤』のメンバーだけで地下に降りる事となった。

 フォーメーションとしてはユウヤを先頭に左右をヨシナリとマルメル。
 少し後ろに荷物持ちのふわわとアルフレッド。 最後方にグロウモスとなる。
 アルフレッドとふわわが肩に乗せたライトで前を照らしながら前進。

 一応、シックスセンスを用いたセンサーシステムリンクは行っているので何かを検知したら全員に伝わるようになっている。
 地下だけあって外のうるさいぐらいの風が奏でる轟音は聞こえてこない。
 代わりに水が流れる音だけが響いていた。

 「な、なんか、静かすぎると落ち着かないなぁ」

 進んでいると沈黙に耐えかねたマルメルがそんな事を呟く。
 ヨシナリは索敵を行いつつ、異常がないと判断した後に苦笑。
 
 「まぁ、そうだな。 俺なんて前回、外を一人で移動したんだが、風の音しかしないしシックスセンスを買う前だったから碌に視えないしで、散々だったぜ」
 「へぇ、ヨシナリ君でもそんな一人は寂しかったん?」
 「そこは否定しませんよ。 ただ、あんな環境に一人で放り込まれたらどうしたって人恋しくなりますって。 いや、マジで心細くって拠点に戻った時、すっげー安心したのを覚えてますよ。 ――まぁ、壊滅してて心が折れかかりましたが」

 そんな話をしているとユウヤが足を止める。 同時にシックスセンスのセンサーに反応。 
 先に何か動くものが居る。 大きさから明らかにトルーパーではない。
 間違いなくイカだ。 先の広場で待ち構えているとみていい。

 グロウモスが銃を構えかけたが、ユウヤが手で制する。 
 
 「先に俺が試す。 しくじったらフォローを任せる」

 それだけ言ってユウヤがやや早足に先行。 
 スピードが出ないのは足元の水量が多く、流れが強からだ。
 センサーシステムで確認できている感じでは向こうはまだこちらに気付いていない。

 ユウヤもそれを理解しているのか、一定の距離までは早足だったが途中で足を止めた。
 腕の散弾砲を確認した後、一つ呼吸して走り出す。 ヨシナリ達もブースターを噴かして加速。
 弾かれたようにイカが反応。 気づいて戦闘態勢に入るが、ユウヤが広場に飛び出し散弾砲を向ける方が早かった。
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