Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
314 / 865

第314話

 イカを射程内に捉えたと同時にユウヤは散弾砲を発射。 
 一粒弾はイカの表面を貫通して内部へ。 そして――爆ぜた。
 だが撒き散らしたのは熱と弾丸ではなく冷気だ。 冷凍弾、火薬の代わりに液体窒素を撒き散らして対象を凍結させる代物で、トルーパー相手は自前の発熱で溶かす事が可能なので対人戦ではあまり使えない装備だった。

 だが、大半が液体のイカならどうなるのか? 効果は覿面だった。
 イカはギクシャクと動きを鈍らせ、完全に停止。 
 ヨシナリは油断せずに索敵を続けつつ、動きを止めたイカ型エネミーをスキャニング。
 
 完全に動きが止まっている。 
 自力で破る可能性もなくはないが、ここの気温は氷点下を軽く下回っているので、自然解凍は望めない。 
 
 「一応、熱量自体はあるから潰しといた方が無難か」

 ヨシナリはすっと拳銃を構えて発砲。 イカの核を撃ち抜き、機能を完全停止させる。
 
 「前の時はあんなに苦戦したのに一発かよ」
 「まぁ、手品みたいなもので種が割れれば案外簡単なものって事だ」
 
 このイカ型エネミーは強酸性の液体のボディを内部に浮かんでいる本体が操るといった構造をしているので内部に冷凍弾を撃ち込んで本体を凍らせ液体との接触を断てば操る事が出来なくなると考えたのだが、結果は大当たりだ。 

 内部の本体である球体を凍らせてしまえば完全に行動不能となる。 
 構造さえ把握してしまえば対策はそう難しくはなかった。 
 ヨシナリはマルメルとそんな会話をしながら屈んで地下をスキャニング。

 「どうだ?」
 「当たりだ。 地下にはかなり広い空間が広がっている。 降りられそうだ」

 ヨシナリは装備をチェック。 ステータスに異常がない事を確認。

 「取り敢えず、俺とユウヤで先行する。 安全を確認したら連絡するから追いかけて来てくれ」
 「二人で大丈夫か?」
 「大丈夫かは微妙だが、こうしておけばしくじっても全滅は免れるからな」
 
 ユウヤは特に返事をせずに何の躊躇もなく穴へとダイブ。 

 「あぁもう、さっさと行きやがって。 マルメル、ここを頼む。 五分以内に連絡する。 行けそうならそのまま追いかけて来てくれ。 無理そうなら施設に戻ってカナタかツェツィーリエの指揮下に入ってくれればいい」 
 「分かった」
 「じゃあ、ちょっと行って来る」

 ヨシナリはホロスコープを水中に沈め、地下へと潜る。
 縦穴を下へ下へと潜る。 ライトは変に目立ちそうなので切ってはいるが、シックスセンスが周囲の状況を正確に伝えてくれる。 音はあまりしない。 するとすれば水中でよく耳にするごぼごぼと言った水の音だけだ。 下降しながらホロスコープのステータスを確認。

 行動自体は問題ない上、背負った推進装置も機能している。 
 だが、スピードは地上の六割弱といったところだろう。 加えて纏わりつくような感覚が機体を重く感じさせる。

 ――思った以上に厄介だな。

 ユウヤの反応は随分と先に行っていたので置いて行かれないように加速。
 しばらく進むと広い空間に出た。 真っ暗で視界は完全にゼロだが、形は分かる。
 広い。 とにかく広大な空間だった。 よくよく考えるとこの惑星の中心に近いのだ。

 広くて当たり前かと考えながら周囲の形状を確認し、ユウヤの機体にデータを送信。
 確かに広大な空間ではあるが、何もない訳ではない。 まずは無数に蠢く動体反応。
 イカ共だ。 大半はこちらに気付いていないが一部が侵入者を検知して接近してくる。

 「俺が相手をする。 お前は目当ての物を探せ」
 
 ユウヤはそう言って向かって来るイカ型に突っ込んでいく。 
 探せと言ってもそう難しいものではなかった。 何故なら最初から当たりは付けていたからだ。
 壁面には無数の縦穴。 そして伸びる巨大な筒――恐らくはエレベーターシャフトか何かだろう。
 
 例の全部乗せの拠点から反応炉への直通通路だ。 
 それさえ見つければ後は楽で、それを辿れば目当ての代物が――

 「――あった」
 
 巨大な球体状の何かをシックスセンスが捉える。
 エネルギーの反応がどころか内部の様子が全く分からない所を見ると厳重に守られているとみていい。 アレを破壊すればクリアできるのかは微妙だが、大きく前進するのは間違いないだろう。

 そして他にプレイヤーが居ない点からも完全に出し抜いた形になった。
 ユウヤにデータを共有しながら、反応炉の周辺を視る。 
 イカだらけ以外の感想が出てこない。 一応、備えはしてきたのだが、突破できるのかは非常に怪しかった。

 「まぁ、やるだけやるさ」
 
 そう呟いてマルメル達に連絡。 

 「当たりだ。 反応炉っぽい物を見つけた」
 「マジかよ! 今すぐ行く!」
 「大丈夫だとは思うが気を付けろよ」

 後は待つだけか。 気が付けばユウヤが向かってきた敵を全て潰し終えてこちらに来ていた。

 「お疲れです」
 「――アレが反応炉って奴か。 地上ならどうにでもなるがこっちだと突破は骨だぞ」
 「ですね。 その為に水中戦装備と対イカ用の冷凍弾なんですけど、中々に厳しい事になりそうです」

 それなり以上の距離があるにも関わらず埋め尽くさんばかりに蠢いているのが分かる。
 突破させる気のない非正規ルートなのだ。 これぐらいは当然だろう。
 あのイカの群れを掻い潜って反応炉に接触。 内部への侵入方法を探ると。

 侵入方法はシックスセンスで調べればいいがそれまでの時間、イカに包囲された状態で耐えるのか。
 想像しただけで帰りたくなる。 振り返るとマルメル達が追い付いてきた。
 近くまで来たのでセンサーシステムのリンクを開始。 ややあって、全員が声を漏らす。

 「広っ! ってかイカ多いな! あれ突破すんのか!?」
 「ここやとウチは役立たずやから大人しくしてるわー」
  
 マルメルとふわわは相変わらずといった反応でグロウモスは無言で武器のチェック。
  
 「しつこいようですけど確認します。 俺達の当面の目的はあの反応炉らしき建造物に取り付いて中に入ります。 施設の体を成している以上は必ず入る方法があるはずなので、それを探している間の護衛を頼みます」

 このゲームはそういった点にこだわっているので、高い確率でメンテナンス用のハッチがあるはずだ。 そもそも何もないならこのイカ共を配置する意味がない。
 ギャンブルではあるが勝てる見込みは充分に存在する。

 「どれぐらいかかりそうなんだ?」
 「俺とアルフレッドでやるのでそこまでかからないはずだ。 出来れば一分以内に片を付けたいが、最悪二、三分は覚悟してくれ」 
 「うへ、あの中で三分生き残るのか。 無理ゲーじゃね?」

 マルメルはこの広い空間を回遊しているイカの群れを見てやや引き攣った声を漏らす。
 
 「俺もちょっとそう思っているが、適切な攻撃手段を用いればイカは簡単に処理できるから行けなくはないと思ってる」
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。