Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第321話

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 ――しくじった。

 ヨシナリは目の前の事象に内心で小さく舌打ちする。
 何かあるのは読めていたので、動かれる前に破壊してしまいたかったが、未知のシチュエーションに警戒していた事もあって反応が僅かに遅れてしまった。

 ユウヤの散弾砲が反応炉へ向けて火を噴くが、エネルギーフィールドに近い防御力場に阻まれて通らない。 

 「だったらこっちはどうだ!?」

 マルメルがハンドレールキャノンを発射。 
 彼の発射した弾体が反応炉の展開したフィールドに阻まれて停止するが、弾体は赤熱しながらその勢いが止まらない。 最終的には貫通こそしなかったが、大きく強度を落とす事に成功した。
 
 同時に着地したユウヤがハンマーを叩きつけてフィールドを破壊。
 同期したふわわが野太刀を一閃。 覆っていた装置を切り裂き、内部の本体に届きはしたが、両断には至っていない。

 「硬いなぁ。 芯まで届かんかった」

 畳みかけるようにヨシナリとグロウモスが銃撃を繰り返し、アルフレッドが榴弾を撃ち込むが、そこまでだった。 反応炉が床に沈み込み。 周囲のゲートが全て開放され、あちこちから水が入って来る。 

 「どうなった!?」
 「反応炉はとんでもないスピードで潜行中。 外に――いや、シャフトか何かが突き出てるのか? ヤバい事になりましたね」

 さっきからシックスセンスから観測されるエネルギー流動が滅茶苦茶だ。
 大半が反応炉を追う形で下へと向かっている。 そしてその向かう先にはとんでもないサイズの動体反応。 

 ――これはやってしまったかもしれない。

 恐らくこれから現れるのはこのイベント最大にして最後の敵。
 トリガーは反応炉への攻撃といった所だろう。 スキャニングした限り、反応炉を追跡する手段はない。 反応炉が沈んだ箇所もゲートのような物で閉鎖されており、物理的に侵入できる場所がないのだ。

 「お、おい、ヨシナリ。 どうするんだ?」
 「――ああなってしまった以上、出てくるのを待つしかない。 一度地上へ戻ろう」
 「出るって言ってもどこから――」
 「正規ルートのゲートが開いてるだろ? そこから出よう」

 水中用の装備は全て捨ててきたので水に浸かるのは不味い。 最低限の情けなのか、地上への道は開いているのでそこから出ればいい。 

 撃破できなかったのは痛いが、ある程度の手傷は与えたのだ。 ここはこれで良しとしよう。
 ただ、出し抜かれたと知った他のプレイヤーの反応を想像すると少しだけ気が重い。
 ヨシナリは近くのゲートに飛び込み、他のメンバーにも来るように促す。

 グロウモス、マルメル、アルフレッドがゲートに飛び込み、僅かに遅れてふわわとユウヤも合流。
 全員が出た事を確認してヨシナリもその背を追うように加速。
 急がないと通路まで浸水するのでさっさと出る必要がある。 向かうと突き当りに巨大な縦穴。

 エレベーターのようだが、動力の反応炉が地下に行ったので動いていない。
 
 「げ、これそのまま上るのか? きっついなぁ……」
 「急げ、水が来るぞ!」

 全機、急上昇。 背後からは水が迫っているであろう事を示す音と振動。 
 位置的に充分に登れる距離のはずなので、逃げるところまでは問題はない。 
 本当の問題は反応炉をどう処分するかなのだが――
 

 地下での異変は当然のように地上に伝わっていた。
 何故なら巨大な地震が発生し、あちこちにある拠点の機能がダウンしたからだ。 
 エネルギーの供給が途切れ、生産設備の機能が制限。 幸いにもメンテナンス用のハンガーはそのまま扱えるが、装備品の生産速度が大きく落ちたのだ。
 
 通常のプレイではまずお目にかかれない派手な爆発を眺めていたポンポンもその変化にいち早く気が付いた一人だ。 基地のエネルギー供給が大きく減少し、地下に巨大なエネルギー反応。
 基地を破壊し続けた事で変化が起こったかと思ったが、発生源は地下だ。

 やや違和感がある。 
 地下に関しては水路がある事ぐらいしか分かっていなかったが、そう言えばと思い出した事があった。 少し前に地下を調べたいからと姿を消した連中がいた事だ。
 
 「ヨシナリの奴、何かしたのか?」

 フレンドリストを確認してヨシナリのステータスを確認すると現在地は不明だが、生きてはいるようだ。 通信は不通だったが、不意に可能になった。
 ポンポンは即座に連絡。 同時に位置も特定可能になった。
 
 地下で現在、ポンポンの居る生産拠点から少し離れた位置――というよりさっき消し飛ばした拠点の真下だった。
 
 「ヨシナリ! 無事だったか!」
 『はは、何とか無事です』
 「さて、あたしが何を聞きたいか分かるよナぁ?」
 『あー、ははは』 
 
 笑ってごまかす態度から何か知っているのは明らかだ。
 カマをかけたのだが、ヨシナリは余裕がないのか見事に引っかかった。
 
 「怒らないから正直に言ってみろ」
 『……本当に怒りませんか?』
 「いいから」
 『あー、実はですね。 地下を調べてたら反応炉らしき物を見つけまして……』
 
 ――思った以上に凄い事を言い出したナ!?

 「……そ、そうか。 で、察するに破壊にしくじったって所か?」
 
 努めて平静を装ってそう返したが、経過時間を考えるとかなり早い。
 恐らくは最初から当たりを付けてたなと思い、何で自分を誘わないんだよ少しだけ腹が立った。
 巨大な兵器を生産してはぶっ放すだけの暇な時間を過ごすより、他のプレイヤー達を出し抜いて反応炉撃破。 そちらの方が比べ物にならないほどに面白そうだった。
 
 『はい、多少のダメージは与えたんですけど逃げられまして』
 「逃げた?」 
 『恐らくなんですが、あの反応炉は敵に接近されると下に逃げて正体を現す仕組みになっていたようで……』
 「おい、正体ってまさか」
 『はい、この地震は恐らく反応炉内蔵のボスエネミーが出現する前兆かと』
 「いきなりクライマックスかぁ、あたしら完全に置いてけぼりだナ」
 『ははは』
 
 もう笑うしかないのかヨシナリは乾いた笑い声をあげる。
 ポンポンはふうと小さく息を吐く。 やってしまったものは仕方がない。 
 
 「分かった。 取り敢えずこっちに合流しろ。 後、今の話は他にするな。 何かあったら吊るし上げられるからナ。 知らん顔をしておけ」
 『いいんですかね?』
 「負けた時、戦犯扱いされたいなら好きにしろ。 ただ、おねーたまにだけは報告させてくれ」
 『そこはお任せします』
 「あぁ、心配するな。 お前には助けてもらった借りもあるし、悪いようにはしないからナ!」
 『助かります。 すぐに合流できると思うので詳しくはその時にでも』
 
 ポンポンは気を付けて戻って来いよとだけ言って通信終了。
 ボス戦に関しては楽しみだが、ツェツィーリエにどう説明したものか。
 うーんと頭を悩ませた。
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