Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
335 / 865

第335話

 空間の変動はセンサー系のリンクによって共有されているので、全員が攻撃範囲が見えていた。
 加えてヨシナリの警告も早く、全員が素早く攻撃範囲から逃れる事が出来たのだが――
 
 ――これやると次は直線攻撃が飛んでくるんだよなぁ……。

 次の攻撃に対する警告を行おうとしたが、それよりも早く壁があちこちで大きく陥没する。 
 ヨシナリはそれを見てさっと背筋が冷えた。 何故なら今の攻撃であちこちの壁が限界を迎えたようだ。 ここは地底で施設の周囲は水で覆われている。 つまり壁が壊れる事は外の水が中に入り込んで来る事と同義だ。 そして水中用の装備を全て放棄したヨシナリ達に水中戦は難しい。

 機動力が大きく落ちるので敵のサイコキネシスを躱せなくなる。
 そうなるとやる事は一つだ。 どちらにせよこんな限定された空間ではいつまでも逃げ切れない上、人数が減らされて火力が落ちるのは目に見えている。 可能であればここで決着を着けたいが仕方がない。
 
 「ここが保たない! 一度、外に出ましょう!」
 
 ヨシナリの言葉に真っ先に反応したのはユウヤだ。 
 凄まじい勢いで上がって来る水を見て即座に彼の機体は早々に来たゲートへ飛び込む。
 
 「賛成だ! ってか、下の方から水漏れしてんぞ!」

 マルメルがそれに続き、ふわわ、グロウモスが飛び込む。
 ヨシナリとポンポンはその間に味方の援護の為に銃撃。 肉塊が砲を撃とうとしていたので味方を射線に収めようとしている顔に喰らわせて発射を妨害する。

 ツェツィーリエがゲートに入った事を確認した後、互いに頷いてゲートへ。 僅かに遅れてあちこちが崩れる音がして水が流れ込む轟音。 発射された指向性を持った衝撃が四方八方に撒き散らされ、壁が限界を迎えたようだ。 背後から水が上がってくる気配。 

 「急げ! 水が来てるゾ!」
 「分かってますって!」

 ヨシナリは機体を変形させて加速。 
 全速で飛んでエレベーターシャフトへと突き当たった所で急上昇。
 上がっている途中に先行した面子に追いついた。 ユウヤの姿はなかったがふわわが全力でブースターを噴かして上昇し、ツェツィーリエがマルメルとグロウモスの機体を掴んで強引に引っ張っている。

 徐々に浸水から遠ざかり、地上が近づいてきたのか戦闘の音と思われる物が断続的に聞こえてきた。

 「そう言えば聞きそびれたんだが、上の様子ってどうなってるんだ?」
 「最悪だぞ。 お前らが突破した後、例のエネミーが無限湧き始めてな、控えめに言って地獄だった」
 「よく下まで来れたな」
 「――いきなりベリアルが現れて、敵の防衛線に穴を開けたんだ」
 
 マルメルの話ではベリアルが敵の猛攻を被弾しながらも突破して穴を開けたとの事。
 お陰で敵の防衛線が崩れてマルメル達も突破が比較的容易になったようだ。
 ヨシナリは小さく目を閉じる。 無理をしてでも助けに来てくれたベリアルには感謝しかなかった。
 
 恐らく彼はずっと近くに居たのだろう。 何かあれば助けに入る為に。
 思えばヨシナリ達が乗って来たシャトルが無傷だった事も彼の仕業かもしれない。
 少しだけ共闘した仲だったにもかかわらず、ここまでしてくれるのは素直に嬉しかった。

 エレベーターシャフトを登りきるとそこでは残りのメンバーが数を減らしながらも敵のエネミーをかなりの数撃破していたが、戦況は優勢――というよりはもう決着が着きそうだった。 

 何故なら敵のリポップが止まっていたからだ。
 ヴルトム達が最後の一機を集中砲火でハチの巣にして戦闘が終了した。

 「あ、戻って来た。 下はどうなってるんだ?」
 「一先ず外に出ましょう。 多分、ボスが地上に出てきます」
 「あ、あぁ、なんかヤバそうな感じだな」

 ヴルトムはちらりとエレベーターシャフトを見たが提案自体には賛成なのか移動には素直に同意した。 『豹変』のメンバーはツェツィーリエが指示を出したので更に話が早く、生き残ったメンバーはそのまま施設の外へと向かう。

 移動中にヨシナリはヴルトムにこれまでにあった事を簡潔に語った。
 反応炉がクリーチャー化し、水を変化させて襲い掛かって来た事、後は敵の攻撃パターン等。
 通常のセンサーに引っかからないので攻撃の兆候を見逃さない事などだ。

 ヨシナリがセンサーリンクでフォローできるのならいいが、リソースが無限ではないので全員はカバーできないのだ。 恩恵を受ける為にはヨシナリと一定の距離を維持しなければならない。
 その為、得意レンジが被らないプレイヤーは恩恵を受けられず、変にくっつこうとすれば隙を晒す結果になる。 少人数であるなら問題ないが、この乱戦となると難しい。
 
 「なるほど。 それにしても運営も手を変え品を変え、色々と出してきやがるな」
 「まったくですよ。 偶には楽に勝たせて欲しいものです」
 
 外に出ると分かり易く変化していた。 
 反応炉が地上に露出しているイカの胴体部分に移動しており、そこを中心に変異が始まっている。
 
 「うわ、マジかよ。 ってかキモいな。 何だよあれ……」
 
 水の塊がグロテスクな肉塊に変わっているのだ。 
 そんな感想が出てくるのも無理はない。 ヨシナリとしては見た目の醜悪さに気を取られたが、運営の意図に関しては概ね察していた。 水の状態では碌に攻撃が通らなかった事を考えるとあの状態のイカは仕留める事が出来ないが、あの肉塊には攻撃が通った事を考えると反応炉を移動させる事で敵も次のフェーズに進んだという事だろう。 

 恐らく敵の攻撃パターンも変わる。 
 水の状態では接近した機体を無差別に襲うだけだったが、変異する事によって積極的に殺しに行くスタイルに変わったはずだ。 つまり、現在進行形で増殖している顔という砲台をから放たれるサイコキネシスを捌きながら本体を処理するのがこの状況の攻略法。

 ――まぁ、見れば分かるか。

 その証拠にあちこちから無数のトルーパーが攻撃を仕掛け始めていた。
 僅かに遅れて無数の爆発が空を照らす。 

 「ちょっとでいいから休ませてくれよ……」

 ヨシナリは小さくそう呟く。 他も同意見だったようで、既に移動を開始した者達も多い。
 仕留めなければ終わらない上、変異はまだ途中だ。 例の水の触手はこの惑星全域に存在するのだ。
 それが全てあの気味の悪い顔で埋め尽くされる事を考えると急いだ方がいい。

 触手であるうちはまだ比較的、無害なのだ。
 つまり時間経過で敵は手数が増える。 それを何とかする意味でも早めに処理する事は正しい判断だ。 
 
 ――要はさっさと仕掛けないと手に負えなくなるって事なんだよなぁ……。
感想 0

あなたにおすすめの小説

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。