Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第340話

 「うーっす」

 マルメルが声をかけながらログインするとヨシナリが傍目にも分かるぐらいに上機嫌にウインドウを操作している姿が目に入った。

 「お、おっすマルメル!」
 「うっす、どした? 機嫌良さそうじゃん?」
 「聞いてくれよ。 例のイベント戦の報酬が結構な額で装備やらを新調したんだよ」 

 それを聞いてマルメルはあぁと納得した。
 先日のイベント戦で反応炉を破壊し、最後の一撃を決めたのだ。
 特別報酬を貰えてもおかしくはない。 

 「マジかよ。 やったじゃねーか! いいなぁ、俺にもなんか買ってくれよ」

 マルメル自身もそこそこ貰っていたが、フレームを買えるほどではない。
 その為、冗談半分だったのだが――
 
 「いいぞ。 ソルジャー+のフレームと装備一式でいいか?」
 
 ヨシナリはさらっとそう返したのを聞いて思わず固まった。
 
 「え? いや、マジで言ってんのか?」 
 「あぁ、結構な額だったからお前とふわわさん、グロウモスさんの三人にフレームと装備を買うつもりだった」

 雰囲気的に冗談を言っている様子はない。 

 「いや、そりゃありがたいけどマジでいいのか?」
 「あぁ、そもそも一人で仕留めたと思ってないし、イベントのローテーション的に次は恐らくサーバー対抗戦だ。 それまでに戦力の拡充をしておきたい」
 
 もしまたアメリカ第三と当たったら少なくともあのバイク野郎は見かけたら潰す。
 未だにやられた事を根に持っていたヨシナリは必ず潰すと拳を握る。 

 「そんな訳でお前にも強くなって貰う」
 「お、おう、そうか。 ってかそれだったらキマイラ+とかは……」
 「パーツの構成次第でスペック面ではそこまで大きな差は出ない。 それでもキマイラ+の方がいいか?」
 
 そう返されてマルメルは黙る。 
 ヨシナリの口振りから別に高いから駄目だと言っている感じではない。
 恐らくはマルメルにはソルジャー+が最適だと思っているようだ。

 「あー、もしかして俺には可変機は早いって思われてる?」
 「ちょっと思ってるが、主な理由は戦闘スタイルだな。 お前の強みは足を止めた状態での中距離戦だ。 その為、求められるのは機動性よりも安定した火力だと俺は思っている」

 ヨシナリは言いながらウインドウを可視化。 
 指を軽く振るとウインドウがマルメルの前に移動した。 
 何だと覗き込むとそこには『俺の考えた最強のマルメル』と書かれたファイルタイトルに機体の構成図が詳細に書かれていた。 

 「……何これ?」
 「いや、金があると色々考えられて夢が広がるよな」
 「これはあれか? 俺に使わせたら面白そうな機体構成を考えて作ったと?」
 「あぁ! 騙されたと思って是非試してくれないか!? 当然、費用は全部俺持ちだ」
 
 アバター越しで分かり辛いが目がキラキラしてそうだった。
 マルメルはこいつは子供とかできたらやたらと服を買い与えて着せ替え人形にするタイプだなと思ったが、図を見てみるとなるほどと思える内容だ。

 センサー系は煙幕などの視界不良に強い、動体、熱源に比重を置いた物を。
 動力は高出力のジェネレーターと大容量のコンデンサーに加え、外装に『スパルトイ』と同系統の追加装甲にエネルギーフィールド発生装置。 推進装置はなんと大型のエネルギーウイングだ。 

 背中にはやや小さ目の箱型のバックパック。 
 内部には弾帯とケーブルが伸びており、腰に接続された突撃銃に繋がっている。
 何だこれはとステータスを確認すると実弾とエネルギー弾を撃ち分ける事ができる複合銃だ。

 背のバックパックは上半分が銃弾の製造装置で下半分がエネルギー供給用の小型ジェネレーター。
 両腕にはハンドレールキャノン。 今まで使っていた奴の上位モデルで、発射間隔が短く、命中精度が向上している。 肘から先に銃身があるのだが、肘から上には弾体の製造装置があるので持ち歩く不便さが解消されている。

 携行火器に関してはピックアップしたであろう候補がいくつか並んでいた。
 
 「てか、滅茶苦茶重そうだな」
 「それを補う為のエネルギーウイングだ」
 「あぁ、これで動きの重たさを相殺するのか、ならエネルギー消費――」

 言いかけて口を噤む。 予備のジェネレーターはそれも兼ねてるのかと察したからだ。
 
 「腕の可動域が狭くね?」
 
 代わりに別の面での指摘を入れる。
 腕が太くなっている所為でやや腕の動作に難があると思ったのだが――

 「これまでのお前の戦闘スタイルから可動域はそれだけあれば充分だと思ってる。 お前はエイムする時、体全体を向ける傾向にあるし、そもそも変な体勢であんまり撃たないだろ?」
 
 ――即座に説明が入る。 

 まさにその通りだった。 
 ただでさえ、ばら撒くような撃ち方をするので安定して命中しない。
 それを補う形で今のスタイルを確立したのだが、意図までしっかりと汲み取ってくれているようだ。
 
 徹底的に研究されている事に少し怖いなと思いつつ、数値でスペックを見ると高級パーツを多用しているだけあってキマイラどころかエンジェルタイプとも充分以上に戦えるレベルだった。
 
 「携行火器は使用感もあるだろうから手頃なのをリストアップしてみた。 ついでに肩に接続用のアタッチメントを積んでるので銃床部分に付けとくと普段は落としても大丈夫だし、普段は肩にマウントできるから邪魔にもならないぞ!」
 「お、おう」

 ヨシナリはややテンション高めに何と二挺持っても邪魔にならないと付け加える。
 俺は何の話をしているのだろうかとマルメルは少しだけ遠い目をしたが、折角の厚意だ。
 ここは素直に甘えておこう。 リストを眺めているとふと気になっている銃がある事を思い出した。

 「じゃあリストにないけどこれくれよ」
 「ん? これがいいのか? まぁ、いいけど。 ――よし、後はトレーニングルームで細かく調整していこう。 実はもう買って組んだんだ。 送るから早速受け取ってくれ」
 「おいおいマジかよ」

 ヨシナリの事は信頼しているが話が美味すぎてちょっと怖いなと思いつつ受け取る。
 見せられた図面通りの機体が送られてきたので早速搭乗。 
 トレーニングルーム行こうぜとキラキラした視線を向けるヨシナリを見て、大丈夫かよと思いつつウインドウを操作して移動した。

 

 「――ふぅおおおおおおおおおお!! さいっこぉぉぉぉ!!」

 気が付けばマルメルは声を上げていた。
 生まれ変わったヨシナリプロデュースの新生アウグストはトレーニング用のフィールドを高速で駆け抜ける。 これまで重武装から重たい挙動しかできず、足の遅さがネックだったのだが、エネルギーウイングを使用する事で欠点が解消された。 特に直線加速が素晴らしい。
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