Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第343話

 「じゃあ、取り敢えず戦い方を見たいから模擬戦――は性能差が出過ぎるな」
 
 一先ず動いている所を見たいなと思っているとシニフィエはいつの間にかウインドウを開き、リストのような物を呼び出すとふわわに見せる。

 「何これ?」
 「お買い物リストです。 支払いよろしく」
 「えぇ!? ウチが払うの!?」 
 「当たり前じゃないですか。 姉さん以外、誰が払うんですか?」
 「まぁ、いいけど……」
 
 ふわわは嫌そうにポチポチとウインドウを操作して購入手続きを済ませる。

 「私の実力を見たいという事のようですのでランク戦をするのでそこで評価して頂けますか? えーっと、お義兄さん」
 「……いや、普通に名前で呼んでくれると助かるんだけど……」
 
 シニフィエは無視してランク戦のエントリーを済ませる。
 
 「では、行ってきますお義兄さん」

 ――この野郎。 意地でもその呼び方で押し切る気だな。

 明らかに止める気がなさそうなので今はいいかと諦め、ウインドウを操作してシニフィエの試合が映し出された。 最低ランクの試合なので相手の機体も初期のⅠ型。
 装備は突撃銃とサイドアームに短機関銃というオーソドックスな構成だった。

 対するシニフィエの機体はこちらもⅠ型。 機体名は『アッシュ・ダスト』
 武装は肩に散弾銃がマウントされているだけ。
 その代わり腕と足にやや装甲が盛られていた。 特に拳は顕著でナックルダスターという打撃力を上げる代物がくっついている。 装備構成を見れば大体の戦い方は見えてくるが、流石はふわわの妹と言うべきか……。 ヨシナリは敵がどうなるのかを想像して僅かに同情した。

 試合開始。 フィールドは遮蔽物のない荒野。
 圧倒的不利かと思われたが、開始と同時にシニフィエの機体が推進装置を全開にしてブースト。
 両腕をこめかみ近くまで立て、胸から上を守るガード。 腕の装甲を盛ったのはこの為のようだ。

 そのまま突っ切るのかと思ったが、シニフィエは機体を左右に振って回避。
 上手い。 敵の集弾が安定しないのを即座に理解して被弾を最小に収めている。
 射程に入ったら散弾銃を使うかとも思ったが、そのまま肉薄。 敵機はこんな状況に慣れていないのか、焦りでリロードに手間取っている。 シニフィエは目の前だ。

 敵機はようやくリロードを諦めて腰のブレードに手をかけたが、もう遅かった。
 
 「うわ、トルーパーでアレをやるのか……」

 思わずヨシナリは呟く。 敵機からすればシニフィエの機体が急に消えたように見えたかもしれない。 それほどまでに彼女の動きは秀逸だった。 敵機がブレードを意識した瞬間にシニフィエの機体は前転。 視界から消える。 それにより敵機は一瞬、彼女の姿を見失うがそれが致命的。

 次の瞬間、回転を利用して高く上げた足が敵機の顔面を捉えた。
 ぐしゃりと敵機の頭部がひしゃげる。 所謂、胴回し回転蹴りだ。
 敵機からすれば見失ったと思ったらいきなり目の前に蹴りが来たように見えただろう。

 シニフィエの動きはまだ終わらない。 転がってそのまま敵機の背後に移動し、敵機の腰を両腕で掴む。

 「……マジかよ」

 そのまま敵機を地面から引き抜くように抱え、上半身を大きく仰け反らせてひしゃげた頭部を地面に叩きつけた。 プロレスでよく見るバックドロップだ。
 結構な勢いで地面に叩きつけられた敵機は頭部どころか上半身にも深刻な損傷を受けたらしく動かない。 シニフィエは敵機を蹴り転がすと慣れた手付きで持っていた散弾銃を構えて一発。

 試合終了となった。 
 


 「どうですかお義兄さん? 一応、勝ちましたが?」
 
 流石にあそこまで一方的な勝利を見せつけられたら文句のつけようがない。
 ふわわと別のベクトルで近接に特化した戦い方。 ふわわが斬撃に寄っているのに対し、シニフィエは打撃や投げ技を得意としているようだ。 手に打撃を補助する装備を付けている点からも明らかだった。 道場やっているという話だったが、どんな場所なんだ?
 
 彼女達の実家に少しだけ興味が湧いたが、重要なのはシニフィエのやる気と能力だ。
 格闘戦に関するセンスは突出している。 Ⅰ型であの動きをしている時点で凄まじい。
 技量に関しては分かったが、どの程度本気なのかを見て良さそうと判断できたなら早い段階でⅡ型を与えてもいいかもしれない。 

 「いや、お見事。 チュートリアル終わって直ぐであれだけ動けるのなら心配は要らないな」
 「ま、姉さん程ではありませんが、お役に立てると思いますのでよろしくお願いしますね?」
 「あ、うん。 よろしく?」

 ヨシナリは念の為、良いのかとふわわの方を見ると彼女は大きく肩を落とし、顔を手で覆っていた。

 「もう好きにして……」

 そんな話をしていると慣らしが一段落したのかマルメルが上機嫌で戻って来た。

 「いやぁ、最高だな最高! ――ってあれ? どちらさん?」
 

 シニフィエの紹介を行ったのだが、マルメルは戦力が増えた事が嬉しいのか歓迎と喜んでいた。
 
 「これでお義兄さんとマルメルさんには紹介いただきましたが、後はグロウモスさんとユウヤさんという方ですね」
 「グロウモスさんはその内来るかと思うけど、ユウヤは幽霊部員みたいなものなので機会があればかな?」
 
 マルメルは小さく首を傾げるとヨシナリとシニフィエを見比べる。

 「ところで何で兄さん?」
 「あぁ、お気になさらず。 そうなって頂ければいいなと言った願望を込めてですので」
 「何じゃそりゃ?」
 「いえ、我が家の――」
 「あー! 急に模擬戦をしたくなったわー! マルメル君、新しい機体を試したいしちょっと戦ろっか?」
 「は? いきなり何です? ちょっと、掴まないでください――」

 ふわわはマルメルを掴むと無理矢理トレーニングルームへと移動した。
 シニフィエは小さく笑う。 それを見てヨシナリは小さく嘆息。

 「……止めろとは言わないけど、からかうのは程々にしてくれないか?」
 「バレました?」
 「悪いんだけど俺は君との距離感を測りかねている。 君は俺がマジでふわわさんの彼氏候補だとでも思ってるのか?」

 ふわわの見た事のない反応に驚きはしたが、シニフィエの意図に関しては徐々に見えてきた。
 恐らくだが、ヨシナリに様々な方法でアプローチをして反応させ、人となりを見定めようとしているのだろう。 仲良くなりましょうと近寄ってきていきなりこれは流石に眉を顰めたくなる。

 ヨシナリはちらりと可視化したウインドウを見るとふわわのとマルメルが模擬戦を始めていた。
 これならしばらくは邪魔が入らないだろう。 
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