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第348話
「お疲れです。 どうでした?」
「勝負自体は勝ったからええねんけど、剣はもうちょっと練習要るなぁ」
ふわわは剣を振るような素振りを見せて首を傾げる。
「いや、四つ当てられただけでも充分ですよ」
「うーん。 何処に当てるかで一瞬、迷うからかなぁ。 三つは確実に当てられるけど、四つ以上はどうも安定しないわー」
三つは当てられるのかよとヨシナリは内心で震える。
ふわわは面白いと小さく笑う。 それを見て、あぁこの人は最終的には全部当てられるようになるんだろうなと根拠もなくそう思った。
「さて、グロウモスさんは戻って来ないし、次は俺の番――」
ヨシナリがウインドウを操作しようとした所でグロウモスが戻って来た。
「あ、おかえりなさい。 どうでした?」
グロウモスはヨシナリを一瞥し、「ク、クヒヒ」と不気味な笑みを漏らす。
「い、いい感じ。 使い方は大体わかった。 い、行ける、と、思う」
ヨシナリは自分に向けられる湿度というよりは水分と評した方がいい物を多分に含んだ視線を努めて気にせずに頷いて見せる。
「そうですか。 ならランク戦、行っときますか?」
「う、うん。 やってみる」
グロウモスは素早い動作でウインドウを操作してマッチングを完了させ、ランク戦へ参加。
早々に相手が決まったようで彼女のアバターが移動した。
フィールドは山岳地帯。
敵機はⅡ型、大型ブースターを搭載している所を見ると機動力重視のようだ。
装備はエネルギーライフルとサイドアームに短機関銃。
対するグロウモスの機体は外套ですっぽりと覆われているのでかなり異様な見た目に見える。
「外套? 機体をすっぽり覆うのは珍しいなぁ」
「ステルスコートって言うんですけど、隠密性を高めてくれる代物です。 前に使ってたマントだと風で捲れるんで」
「ってか、キマイラパンテラなんだろ? 変形の時とか大丈夫なのか?」
「あぁ、そこは問題ない。 良く伸びる素材だし、構造上、干渉しないようにできてる」
試合開始。 敵機は急上昇。 索敵を始めた。
グロウモスは光学迷彩と静音フィールドの併用で姿を消す。
「うわ、全く見えねぇ。 ってか音すらしない」
「ジェネレーター出力がかなり上がったからあんな真似しても全然平気なんだ」
変形して無音で移動。 目的地は高所――狙撃に都合がいいポイントだ。
「あ、服着てる猫ちゃんみたいで可愛いなぁ」
「ってかすっと移動するなぁ。 これ音じゃわかんねぇだろ」
「走破性が高いのは四つ足の強みだからな」
人型に戻りながら光学迷彩を解除。
座射の姿勢で背の狙撃銃『スコーピオン・アンタレス』を構える。
同時に腰の部分から何かが伸びて地面に突き刺さった。
「なぁ、ヨシナリ君。 あれ何?」
「アウトリガーって分かります? 重機とかに付いてる奴で転倒とかを防ぐ奴です」
「あぁ、反動を抑えるのに使うんやね」
敵機はグロウモスの位置に気付いていない。 その間にゆっくりと狙いを付ける。
微かに彷徨うように揺れていた銃口がピタリと止まり、発射。
彼女の放ったライフル弾は敵機の胴体を綺麗に撃ち抜いた。 大口径なので向こうが見えそうなほどの風穴が開き、僅かな間が開いて爆散。 試合終了となった。
「はっや、一撃じゃん」
マルメルの言う通り、本当に一撃で終わった。
狙撃に最適な位置へと移動して狙いを付けて一発。 実質、一分もかかってない。
相手の移動経路を読んでのポジショニングも秀逸だ。 やはり、彼女の狙撃に対する技量は非常に高く、小口径の連射より大口径での一発を狙わせる方が強みを活かせる。
グロウモスはややほっとした様子で戻って来た。
「お見事。 いや、綺麗に胴体を撃ち抜きましたね! 流石です」
「そ、そうかなあ? ウ、ウヒヒ、へ、へへへへ」
嬉しそうに笑い出した彼女からヨシナリはそっと視線を外す。
これで一通りは見たのでそろそろ連携を試してみよう。
「全員、いい感じだったな。 よし、なら次はユニオン戦を――」
「おいおい、ヨシナリぃ。 お前が残ってるだろ?」
「ん? あぁ、そうだったな。 ならちょっといい所を見せる為にも頑張りますか」
「いよっ! 頼むぜリーダー!」
「やめろって」
マルメルに苦笑で返し、ヨシナリはランク戦へ参加。
相手は直ぐに見つかったのでそのまま移動。 残った全員はウインドウを注視。
「まぁ、心配はしてないけど、どんな感じに仕上げてきたのかは気になるな」
「そうやねー。 次に戦る時の参考にしたいし、楽しみやわぁ」
「姉さん、敵に回す前提なのはどうかと思いますけど……」
グロウモスはふんふんと鼻息を荒くしてウインドウを無言で見つめる。
フィールドは平原。 何もないまっさらなステージだ。
相手はキマイラタイプ。 アタッチメントで二挺の突撃銃がマウントされている。
「あ、キマイラだ。 ヨシナリ以外にも持ってる奴いるんだなぁ」
「多分やけど、+が出回り始めたから使わなくなったお下がり貰ったんと違う?」
「あー、それはあるかも」
対するヨシナリの機体はキマイラ+。
見た目は大きく変わってはいないが、腰の後ろにエネルギーウイングが付いており機動性が大きく向上しているのは明らかだった。 加えて新しいメイン武装として装備しているアノマリーの上位に当たるであろう武装が少し目を引く。
「そう言えばアノマリーはマルメル君にあげたんやったね」
「貰っちゃいました。 いやー、使ってみるとかなり便利ですよ!」
何故かグロウモスがマルメルをじっと見ていたが、なんだか怖かったので努めて気にしないようにした。 やがてグロウモスはギギギと軋むような動きで視線をウインドウへと戻した。
――こ、怖い。
そんなやり取りをしている間に試合が開始。 敵機は即座に変形して突っ込む。
恐らくはドッグファイトに誘っている。 ヨシナリは応じるように変形して加速。
「お、誘いに乗るのか」
敵機は変形した事で機体の背に乗っている突撃銃と内蔵された機銃を連射。
ヨシナリは綺麗なバレルロールで回避し、そのまま斜めに降下。
敵機が通り過ぎたと同時にブースターを噴かして加速し相手の後ろを取りに行く。
基本スペックに差があるので瞬く間に追いつかれる。
焦った敵機は、状況を好転させる為に縦旋回。 インメルマンターンだ。
そのままヨシナリの後ろを取ろうとしたのだが――
「うわ、マジかよ」
ヨシナリのホロスコープも敵機にぴったりと張り付く形で同じように縦旋回。
だったらとさっきのヨシナリのようにバレルロールで強引に振り切ろうとするが、僅かに減速したのがよくなかった。 ヨシナリが背に積んでいる銃――アシンメトリーを一撃。
エネルギー弾は吸い込まれるように敵機の推力偏向ノズルに命中し、破壊する。
片足を失った機体はふらふらとバランスを崩し、やがて誘爆を起こして爆散した。
試合終了。 こちらも直ぐに決着が着いた。
「勝負自体は勝ったからええねんけど、剣はもうちょっと練習要るなぁ」
ふわわは剣を振るような素振りを見せて首を傾げる。
「いや、四つ当てられただけでも充分ですよ」
「うーん。 何処に当てるかで一瞬、迷うからかなぁ。 三つは確実に当てられるけど、四つ以上はどうも安定しないわー」
三つは当てられるのかよとヨシナリは内心で震える。
ふわわは面白いと小さく笑う。 それを見て、あぁこの人は最終的には全部当てられるようになるんだろうなと根拠もなくそう思った。
「さて、グロウモスさんは戻って来ないし、次は俺の番――」
ヨシナリがウインドウを操作しようとした所でグロウモスが戻って来た。
「あ、おかえりなさい。 どうでした?」
グロウモスはヨシナリを一瞥し、「ク、クヒヒ」と不気味な笑みを漏らす。
「い、いい感じ。 使い方は大体わかった。 い、行ける、と、思う」
ヨシナリは自分に向けられる湿度というよりは水分と評した方がいい物を多分に含んだ視線を努めて気にせずに頷いて見せる。
「そうですか。 ならランク戦、行っときますか?」
「う、うん。 やってみる」
グロウモスは素早い動作でウインドウを操作してマッチングを完了させ、ランク戦へ参加。
早々に相手が決まったようで彼女のアバターが移動した。
フィールドは山岳地帯。
敵機はⅡ型、大型ブースターを搭載している所を見ると機動力重視のようだ。
装備はエネルギーライフルとサイドアームに短機関銃。
対するグロウモスの機体は外套ですっぽりと覆われているのでかなり異様な見た目に見える。
「外套? 機体をすっぽり覆うのは珍しいなぁ」
「ステルスコートって言うんですけど、隠密性を高めてくれる代物です。 前に使ってたマントだと風で捲れるんで」
「ってか、キマイラパンテラなんだろ? 変形の時とか大丈夫なのか?」
「あぁ、そこは問題ない。 良く伸びる素材だし、構造上、干渉しないようにできてる」
試合開始。 敵機は急上昇。 索敵を始めた。
グロウモスは光学迷彩と静音フィールドの併用で姿を消す。
「うわ、全く見えねぇ。 ってか音すらしない」
「ジェネレーター出力がかなり上がったからあんな真似しても全然平気なんだ」
変形して無音で移動。 目的地は高所――狙撃に都合がいいポイントだ。
「あ、服着てる猫ちゃんみたいで可愛いなぁ」
「ってかすっと移動するなぁ。 これ音じゃわかんねぇだろ」
「走破性が高いのは四つ足の強みだからな」
人型に戻りながら光学迷彩を解除。
座射の姿勢で背の狙撃銃『スコーピオン・アンタレス』を構える。
同時に腰の部分から何かが伸びて地面に突き刺さった。
「なぁ、ヨシナリ君。 あれ何?」
「アウトリガーって分かります? 重機とかに付いてる奴で転倒とかを防ぐ奴です」
「あぁ、反動を抑えるのに使うんやね」
敵機はグロウモスの位置に気付いていない。 その間にゆっくりと狙いを付ける。
微かに彷徨うように揺れていた銃口がピタリと止まり、発射。
彼女の放ったライフル弾は敵機の胴体を綺麗に撃ち抜いた。 大口径なので向こうが見えそうなほどの風穴が開き、僅かな間が開いて爆散。 試合終了となった。
「はっや、一撃じゃん」
マルメルの言う通り、本当に一撃で終わった。
狙撃に最適な位置へと移動して狙いを付けて一発。 実質、一分もかかってない。
相手の移動経路を読んでのポジショニングも秀逸だ。 やはり、彼女の狙撃に対する技量は非常に高く、小口径の連射より大口径での一発を狙わせる方が強みを活かせる。
グロウモスはややほっとした様子で戻って来た。
「お見事。 いや、綺麗に胴体を撃ち抜きましたね! 流石です」
「そ、そうかなあ? ウ、ウヒヒ、へ、へへへへ」
嬉しそうに笑い出した彼女からヨシナリはそっと視線を外す。
これで一通りは見たのでそろそろ連携を試してみよう。
「全員、いい感じだったな。 よし、なら次はユニオン戦を――」
「おいおい、ヨシナリぃ。 お前が残ってるだろ?」
「ん? あぁ、そうだったな。 ならちょっといい所を見せる為にも頑張りますか」
「いよっ! 頼むぜリーダー!」
「やめろって」
マルメルに苦笑で返し、ヨシナリはランク戦へ参加。
相手は直ぐに見つかったのでそのまま移動。 残った全員はウインドウを注視。
「まぁ、心配はしてないけど、どんな感じに仕上げてきたのかは気になるな」
「そうやねー。 次に戦る時の参考にしたいし、楽しみやわぁ」
「姉さん、敵に回す前提なのはどうかと思いますけど……」
グロウモスはふんふんと鼻息を荒くしてウインドウを無言で見つめる。
フィールドは平原。 何もないまっさらなステージだ。
相手はキマイラタイプ。 アタッチメントで二挺の突撃銃がマウントされている。
「あ、キマイラだ。 ヨシナリ以外にも持ってる奴いるんだなぁ」
「多分やけど、+が出回り始めたから使わなくなったお下がり貰ったんと違う?」
「あー、それはあるかも」
対するヨシナリの機体はキマイラ+。
見た目は大きく変わってはいないが、腰の後ろにエネルギーウイングが付いており機動性が大きく向上しているのは明らかだった。 加えて新しいメイン武装として装備しているアノマリーの上位に当たるであろう武装が少し目を引く。
「そう言えばアノマリーはマルメル君にあげたんやったね」
「貰っちゃいました。 いやー、使ってみるとかなり便利ですよ!」
何故かグロウモスがマルメルをじっと見ていたが、なんだか怖かったので努めて気にしないようにした。 やがてグロウモスはギギギと軋むような動きで視線をウインドウへと戻した。
――こ、怖い。
そんなやり取りをしている間に試合が開始。 敵機は即座に変形して突っ込む。
恐らくはドッグファイトに誘っている。 ヨシナリは応じるように変形して加速。
「お、誘いに乗るのか」
敵機は変形した事で機体の背に乗っている突撃銃と内蔵された機銃を連射。
ヨシナリは綺麗なバレルロールで回避し、そのまま斜めに降下。
敵機が通り過ぎたと同時にブースターを噴かして加速し相手の後ろを取りに行く。
基本スペックに差があるので瞬く間に追いつかれる。
焦った敵機は、状況を好転させる為に縦旋回。 インメルマンターンだ。
そのままヨシナリの後ろを取ろうとしたのだが――
「うわ、マジかよ」
ヨシナリのホロスコープも敵機にぴったりと張り付く形で同じように縦旋回。
だったらとさっきのヨシナリのようにバレルロールで強引に振り切ろうとするが、僅かに減速したのがよくなかった。 ヨシナリが背に積んでいる銃――アシンメトリーを一撃。
エネルギー弾は吸い込まれるように敵機の推力偏向ノズルに命中し、破壊する。
片足を失った機体はふらふらとバランスを崩し、やがて誘爆を起こして爆散した。
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