Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第351話

 イベント『制限戦』。 参加条件はAランク以下。
 自機、及びストレージ内の装備の使用禁止。 
 機体、装備はイベント開始時に支給される物を使用する事となる。

 ――サーバー対抗戦だと思っていたのだが、見慣れないイベントだったので小さく驚く。

 「何だこれ? 機体制限?」 
 「恐らくだが、全員が同じ機体を支給して純粋な技量で競えって事だろうな」

 ふわわとシニフィエはうーんとウインドウを眺めマルメルは首を傾げる。
 グロウモスは無言。 ヨシナリはふーむと考える。
 
 「なぁ、次ってサーバー対抗戦じゃなかったのか?」
 「俺もそう思ってたけど、多分他のサーバーはこっちと進捗が違うからその調整を兼ねてるんじゃないかと思う」

 言いながらヨシナリは詳細を確認。 機体はⅠ型で固定。
 武装はランダムで支給され、当日になるまで何が出るか分からないようだ。
 ヨシナリからすれば嫌な要素だった。 せめて選択式にしてくれよと思ったが、対応力も試されているのかもしれない。 

 読み進めると参加はユニオン単位ではなく個人単位。 
 完全に独力で勝ち進めという内容のようだ。 戦闘の詳細などは当日に知らせるとの事。
  
 「機体を新調したばっかりでこれかよ。 酷くねぇか?」
 「運営が俺達の都合なんか汲み取ってくれる訳がないだろう。 開催は来週らしいからそれまでの間にⅠ型に変えて訓練するか。 この様子だと武器も安物しか使わせてくれないぞ」
 「うへ、今の機体使った後にⅠ型とか死ぬほど乗り気しねぇ」
 「私の機体……」

 マルメルががっくりと肩を落としているのを尻目にヨシナリはウインドウを操作してⅠ型の機体を組む。 現状、使っている機体との性能比較の数値を見ると眩暈がするほどの落差だ。
 
 「取り敢えず、今の機体の感覚を抜くところから始めるか」
 「私は最初からⅠ型なので問題ありませんね!」

 全く影響のないシニフィエだけは元気そうだが、マルメルとグロウモスは渋々といった様子で機体を組み直していた。 
 
 「装備とかどうするよ?」
 「初期装備と同グレードの奴で縛ろう。 最初は得意武器でいいと思うけど、概要見ると装備も選ばせてくれなさそうだから一通り使って行く感じでやろう」
 「えぇ……。 ウチ、銃は全然あかんねんけど……」

 機体の組み直しに関しては文句はなかったが武器に制限がかかる事は嫌だったようでふわわも肩を落とす。 報酬は成績次第で最高500Pなので可能であるなら勝ちに行きたい所だった。

 ――ただ、優勝ではなく成績というのが少し気になったが。

 全員が機体を組み直し、トレーニングルームへ移動。 訓練を開始したのだが――


 「――まぁ、有り体にいって酷かったです」

 翌日。 場所は変わってタウン内の公園。 
 ベンチに座ったヨシナリはやや疲れた口調でそう呟く。 

 「こっちも似たようなものだナ。 今の機体に慣れ切っている状態だったから、感覚を戻すのに苦労してるゾ」

 隣に座っているポンポンがだらりとベンチにもたれかかる。
 訓練を行ったのだが、とにかく酷かった。 機体はⅠ型固定、武器はランダムという事なのでくじのような物を作って引いた武器を使って模擬戦を行ったのだが、マルメルは機体の推進力の感覚がおかしくなっており、何度も転倒や壁などに衝突を繰り返し、射撃武器ばかりを引いたふわわは凄まじいノーコン振りを披露した。 突撃銃で止まっている的に一発も掠りもしないのはある意味才能だろう。

 グロウモスは運悪く射程の短い武器を何度も引いて慣れない近~中距離戦を行ったのだが、ポジショニングに難ありでかなりもたついてしまっていた。 ヨシナリもキマイラの感覚で何度もできもしない飛行や変形を試そうとしてしまってしまい。 大きな隙を何度も晒してしまった。

 リプレイ映像はあまりにも酷く、シニフィエ以外のメンバー全員が思わず目を背けたほどだ。
 
 「いや、今の機体のありがたみを実感していますよ」
 「ケケケ、だろうナ。 あたしも久しぶりにⅠ型使ったけど、感覚を戻すのちょっとかかりそうだゾ」
 「って事はポンポンさんも出る感じですか?」
 「賞金美味しいし、折角のイベントだ。 参加しない訳がないだろ?」 
 「戦り合う事になったらお手柔らかに頼みますよ」
 「そりゃこっちのセリフだナ」
 
 何処も似たような状況らしく、ツガル達も出るつもりのようだが感覚の違いに戸惑っているようだ。
 メールでやり取りしたのだが、賞金目当てで出るがもっと安かったらバックレてたとの事。 
 
 「どう思います? 俺は次のサーバー対抗戦の為のスケジュール調整に開催されたイベントって認識してますけど」
 「あたしもほぼ同意見だ。 ちょい付け足すなら組み合わせの調整もやってるんじゃないかって思ってる」
 「組み合わせ? ――あぁ、実力が拮抗するようにですか?」

 実際、前回のアメリカ第三サーバーとの戦いは総合力としては完全に向こうが上だったが、勝利を収める事が出来たのはラーガストの存在が大きい。 事実として彼が居なければ確実に敗北していたからだ。 
 
 「あたしの勘としては次に当たる所はラーガストと同等以上の奴が居るか、Sランクが複数いるような大きなサーバーだと思ってる。 おねーたまの予想だとアメリカ、中国の第一か、インド、フランス辺りが候補として有力らしいゾ」
 「他のサーバーの情報がほとんど手に入らないのは結構、痛いですね」
 「あぁ、敵の情報がない状態で戦るのは何してくるか分からんから、あんまり心臓に良くないんだよなぁ……」
 
 それでも多少は得られる情報はあった。 
 ここ最近、少しずつだが公式が開示したサーバー対抗戦の試合結果を見ればどこが強いのかは何となくだが見えてくる。 ポンポンが名前を挙げたアメリカ、中国の第一サーバーは早い段階で対抗戦への参加チケットを手に入れていたので戦闘回数は最多。 そして双方ともに無敗。

 アメリカ第三はあんなに強かったにもかかわらず、第一に成す術もなく敗北したという。
 情報源はインタビュー記事だ。 第三サーバーのランカーがRMTで得た金銭で人生が変わったという話をしていたが、その際にサーバー対抗戦の話をしていた。

 第一のSランクは本物の怪物で我々は成す術もなく蹂躙されたと語っている。
 詳細は話せないのかどんな機体かなどは不明だ。
 
 「ま、何処が相手にしてもまずは目の前のイベントだナ。 お互いに頑張ろうぜ?」 
 「そうですね。 面白い話をどうもです」
 「対抗戦では味方だからナ。 そっちでは当てにしてるゾ?」
 
 ポンポンは立ち上がると手をひらひらと振ってその場を後にした。
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