Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第359話

 醜い争いから目を逸らしていると三回戦が始まった。
 移動先は市街地。 新しい武器はまんまるは使い捨てのパイルバンカー。
 ヨシナリは大口径リボルバー。 ホーコートはトルーパーサイズのチェーンソー。

 「今回は俺が後衛をやります。 狙撃銃を借りても?」
 「お願いしますぅ」
 
 話している間にホーコートは舌打ちしてさっさと移動を開始。 
 この時点でヨシナリはホーコートを見限った。 動きから正面から行かずに回り込むようにしている点からもどこかに隠れて美味しい所を掻っ攫おうと狙うつもりなのが透けて見える。

 ――それならそれで構わない。
 
 ヨシナリはホーコートの移動先を意識の片隅に置きつつ、装備を見直す。
 大半が近~中距離装備なのでまんまるに持たせ、ヨシナリは狙撃銃とリボルバーだけでいい。
 ただ、まんまるは荷物になるのでパイルバンカーは要らないとの事。 その為、一応はヨシナリが預かり、近くのビルの陰に隠しておいた。
 
 「どう動けばいいですかぁ?」
 「何をするにも情報が欲しいです。 幸いにも市街地ステージなので、ビルに身を隠しつつ慎重に進みましょう。 流石に三回戦まで残っている連中です。 簡単にはやらせてくれないと思うので、確実に一機ずつ叩きましょう」
 「はいぃ、お任せしますぅ」

 まんまんが移動を開始したと同時にヨシナリは狙撃に適した場所を探す。 
 このコンクリートジャングルには高所がいくらでもあるが、下手に目立つ位置に陣取ると逆に的にされるので慎重に選ばなければならない。

 マップを呼び出すとヨシナリ達は西側に配置されているので、素直に考えるなら相手は東側だろう。
 まんまるは真っ直ぐに東へと移動。 ホーコートは南から大きく回り込む形で東を目指している。
 ヨシナリとしては南に移動し、ホーコートの行動を監視しつつ、狙撃で敵を反応させて敵を擦り付ける事を視野に入れた位置取りが望ましい。

 ――ブースターも高精度のセンサーシステムもないのでやり難くて仕方がないな。
 
 小さくぼやきながら背の低いビルに飛び乗り、順番に高い建物を登って高所へ移動。
 ふうと深呼吸。 仲間と連携を取って戦うのは嫌いではないが、こうして一人で集中するのも悪くない。 仲間を頼る事は良い事だとも思うが、度が過ぎると依存になる。

 だから、適度に一人で戦う時間も必要だった。 決してこの辛い環境から目を逸らしたいからではない。 狙撃銃を構え、付属のスコープを覗きこむ。 まんまるの姿が見える。 接敵はまだのようだ。
 そのまま銃口を移動させ、彼女の移動先を見る。 敵の姿は見えない。

 そろそろフィールドの中央だが、敵の姿がないのは少し不自然だった。
 
 ――何か企んでるな。

 狙撃手で固めた極端な編成? いや、そう都合よく同系統の武器を振り分けられるか?
 引き込んで様子を見ている? 現状、一番怪しいが、敵の情報がない以上は危険を冒してでも前に出るべきだ。 

 ――まぁ、だったら他人にやらせるなって話だけどな。

 小さく苦笑してまんまるの周囲に意識を張り巡らせていると――敵がいると思われる東側から何かが撃ちあがった。 ミサイル。
 軌道から垂直に上がって直上から突っ込むタイプ。 ヨシナリは内心で眉を顰める。

 だが、碌なセンサーシステムを積めない以上、誘導は難しい。 
 炙り出す事が目的? いや、ミサイル自体がかなり大型な事を踏まえると恐らくは多弾頭ミサイルだ。 空中で散らばって派手にばら撒くタイプ。 攻撃範囲がかなり広いのでまんまるが危ない。

 「俺なんて拳銃しか貰えないのにこの格差は何なんだよ!?」

 即座に照準を上に向ける。 狙うのはばらける直前。
 この安物狙撃銃でやれるか? いや、やるしかない。
 ミサイルが放物線を描き、落下軌道に入る。 狙いはフィールドの中央。
 
 集中。 ミサイルの表面が剥がれる。 ばらける直前だ。 
 
 ――今。

 発射。 ヨシナリの放ったライフル弾は剥き出しになったミサイルの一つを捉えた。
 そして爆発し、他を巻き込む形で誘爆。 空中で無数の爆発が発生する。

 「よし。 当たっ――」

 同時にヨシナリの機体の肩にライフル弾が食い込んだ。
 それにより大きく仰け反り、ビルから転落しそうになった。
 
 「クソ、やられた」

 咄嗟にビルに手をかけて落下は防いだが、思考は敵の狙いを読み取る事に傾いていた。
 さっきの多弾頭ミサイルはどちらでもよかったのだ。
 通るなら敵を炙り出す事ができる。 仮に防がれたとしても防いだ奴を炙り出せる。

 どちらに転んでも敵からすれば損はない。 いや、防いでくれた方が都合がいいのか?
 何故ならそんな高精度の狙撃を決める事ができる奴は邪魔だからだ。 なら次にするのは何か?
 
 「……ですよねー」

 二発目の多弾頭ミサイルがヨシナリ目掛けて飛んできた。
 

 「ふーむ? 当たったかな?」

 そう言ってロケットランチャーを投げ捨てたのは、フィールドの東側に陣取るチームのリーダー『タヂカラオ』だ。 多弾頭ミサイルを早々に引き当てた幸運に恵まれた彼はこれを用いた戦術を組み立てて実行に移していた。 結果として楽にここまで上がって来れたのだ。

 二発しかないので使い所は選ぶ必要はあるが、選択を間違えなければ楽に勝てる。
 タヂカラオはそろそろ敵も手強くなってくると判断し、早々に切る事にしたのだ。
 ヨシナリの見立て通り、敵が中央に来るタイミングで一発目。 炙り出しに使うつもりだったが、空中で撃墜された。 想定はしていたが、実際に目にすると驚きに目を見開く。

 Ⅰ型のセンサーシステムでは大したアシストを得られない。 
 そんな中でミサイルが弾ける瞬間を撃ち抜いたのだ。 ここは手放しに敵を褒める所だろう。
 だが、それは悪手でもある。 何故ならそんな強敵が自分はここですと自己主張しているのだ。

 狙わない手はないだろう。 
 仲間の狙撃手に狙わせたのだが、距離があった所為で仕留める事はできなかったが、それで動きを止められればそれで充分。 タヂカラオは何の躊躇もなく二発目のミサイルを撃ち込んだ。

 今回はばら撒くつもりはないので垂直に飛ばさずに丸ごとプレゼントするべく真っすぐに飛ばした。
 ミサイルは最短ルートで標的へと飛んでいき――爆発。

 「やりましたね! タヂカラオさん!」

 味方がそんな事を言って来るがタヂカラオは力なく首を振る。
 
 「いや、失敗だ。 あのタイミングで二発目も落とすなんて大したものだよ」

 爆発のタイミングが早い。 恐らくは手前で撃ち落としたのだ。
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