Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第367話

 まんまる達が撃てずにいる時、ヨシナリは位置を変えながら冷静に狙いを定める。 
 100も離れていない以上、当てるのはそう難しくない。 射線が通ったと同時に撃つ。
 ライフル弾はホーコートの突撃銃を射抜き、完全に破壊。 

 その隙にイワモトが散弾銃構え撃つ――直前に銃口が蹴り上げられる。

 「その中から四つの形が現れ、彼等は人の姿を持っていた!」

 ホーコートは破壊された突撃銃を投げ捨てながら腰のブレードを居合のように抜き打ち。 
 ふわわほどではないが、素人とは思えない鋭い動き。 イワモトは咄嗟に身を捻るが胴体部分に大きな切り傷が刻まれる。 僅かに離れた瞬間を見逃さずにヨシナリは拳銃を抜いて連射。

 ホーコートはバックステップで回避するが、離れた事でまんまる達の射線が通る。 
 半包囲するようにポジショニングし、同期して連射。 

 「各々四つの顔を持ち、四枚の翼があった!」

 ホーコートは身を低くしながらイワモトが捨てた盾を拾って銃弾を防御。
 まんまる達が撃ち尽くしたタイミングで近くの一機に肉薄する。

 「その足は真っ直ぐ、その足裏は子牛のようであり、磨いた青銅のように輝いていた!」

 手近に居た一機に飛び乗り、頭頂部からブレードを突き立てた。
 コックピット部分まで貫通しているので即死だ。 

 「その四方、翼の下に人の手があった!」

 ホーコートは変わらず訳の分からない何かを口走り、一機仕留めた事に喜んでいるのか哄笑を上げる。 
  
 ――何が起こっている?

 狂った言動とは裏腹にホーコートの動きは凄まじく合理的だった。
 少数である事を最大限に活かした立ち回り、こちらの連携の穴を突くような動き。
 射撃、格闘技能は完全に別人と言っていい。 だが、その挙動に見覚えがあった。

 ヨシナリはホーコートの変化と言動に動揺したが、冷静さを取り戻すと見えてくるものがある。
 確かに合理的な動きだ。 無駄を削ぎ落し、最大効率を目指しているといった姿勢が見えるが、アクションの繋ぎに違和感がある。 まるで予め決められたモーションパターンをなぞっているような――型のような物が見えるのだ。

 そしてヨシナリはそんな動きをする機体に見覚えがあった。
 前回の侵攻イベントで現れた敵性トルーパーだ。 あの連中の薄っぺらな挙動にそっくりだった。
 だったらやりようはいくらでもある。 まんまる達がリロードを終えて連射。

 「四つの者は皆、顔と翼持ち、翼は互いに連なり、行く時は回らず、顔の向かう所に真っ直ぐ進んだ!」

 撃破した機体を盾にまんまるに突っ込むが二人は左右に回り込んで挟撃。
 ホーコートは片方に機体を投げつけ、いつの間にか奪った突撃銃をまんまるに向ける。 
 
 ――ここだ。

 常に動き回って捉えさせない立ち回りをしていたが、挙動はⅠ型の域を出ない上、攻撃態勢に入る瞬間だけは動きが僅かに止まる。 ヨシナリは小さく息を吐き、吸って止めた。 同時に発射。
 ライフル弾は吸い込まれるようにコックピット部分に命中し、そのまま貫通した。

 「か、顔の形は、各々、その前方に――」
 「もういいから黙れ」

 致命傷を負った事で崩れ落ち、なおも何かを垂れ流しているホーコートにヨシナリはそう言い捨ててゆっくりと近づくと拳銃でとどめを刺した。 

 「な、なんだったんですぅ?」

 まんまるの声は動揺で震えていた。 明らかにランク相応の腕しかなかったホーコートがあれだけの動きをしたのだ。 驚くなというのが無理な話だった。 
 ヨシナリも同じ気持ちだったが、そんな事よりも考えるべき事がある。 
 他のチームがどうなったかをだ。 これだけ派手にやって出てこない以上、様子を窺っているか、そもそも地上に居ないか――ちらりと転がっているホーコートの機体を見る。

 ――こう・・なっているかだろう。

 訳が分からない。 そもそもこいつは本当にホーコートなのだろうか?
 ホラー演出の為に撃破したプレイヤーの偽物を用意したと考える方が自然だが、声が本人そのものだったので違うと否定もしきれない。 内心で首を振って余計な考えを追い払う。

 他に考えるべき事があるからだ。 ここに来ているのは四チーム十二機。 
 ホーコートともう一機がやられてしまったのでこちらは四機だが、残りの六機がどうなったのかが不明だ。 

 「……これは行く前に確認しといた方がいいかもなぁ……」

 思わず呟く。 明らかに正気ではなかったが、ホーコートはどうなったのだろうか?
 どちらにせよログアウトできない以上、運営に質問する事は難しいだろう。
 一先ずはクリアを目指すべきだ。 
 
 「ヨシナリ君、どうする? 進むかね?」
 「いえ、あのレベルに複数で来られると厄介です。 まずは他のプレイヤーを探しましょう」

 ドームに入ったのはいいが、後ろから襲われても敵わない。
 協力できるなら最良だが、そうでなくても所在ぐらいは掴んでおきたかった。
 
 「探すという意見には賛成だが、当てはあるのかい?」
 「これだけ派手にやって出てこない以上、地下でしょうね。 恐らくはマーカーに従って進んでいるものかと思います」

 隠れて見ている可能性もなくはないが、あれを見て尚も隠れる選択をするのであれば協力的である可能性はあまり高くないので無視してもいいかもしれない。

 「なるほど、なら我々も地下に降りてマーカーを目指せば他のプレイヤーと遭遇できるという事だね」 
 「はい、本音を言えば地下は避けたい所ですが、このまま進む方が不味そうです。 それで見つからないのであれば俺達だけでそのままドームに入りましょう」
 
 何があってああなったのかが不明なので時間をかけるのもあまり良くない。
 本音を言えば自分がああなる事が怖いのでさっさと片付けてしまいたいのだ。
 他のメンバーも似たような事を考えているのか、まんまるは露骨に口数が減り、イワモトの仲間も怯えているのか腰がやや引けている。

 何をするにしても動かなければ始まらない。 ヨシナリは行きましょうと促して歩き出した。


 位置的にヨシナリ達の出てきた出入口が近かったのでそちらから地下へと戻る。
 通路は相変わらずの静かさで、何の物音もしない。 フォーメーションは最初と同様にイワモトが先頭でまんまると一機、最後尾がヨシナリだ。

 先行しているであろう他のプレイヤーに追いつく必要があるのでやや急いで移動する。
 マーカーに従って移動するので方角を間違える事はなく、分岐等で奇襲の警戒をしながら進む。
 急いだ事もあって早々にホーコートをロストした場所を抜け、更に奥へ。

 移動している間にヨシナリは考える事はホーコートの事だ。
 声は何らかの効果なのかノイズ塗れで偽物だと言われればそうかもしれないと思ってしまうが、このゲームのリアリティが本物かもしれないといった先入観に近い物を植えつけてくる。 

 本人と判断した材料は識別信号だったのだが――

 ――駄目だ。 思考がループしている。

 思った以上に動揺していたようだ。 思考が纏まらない。 
 そうこうしている内に目的地が近づいている。 
 切り替えないと不味いと意識して余計な考えを頭から追い出した。
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