Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第369話

 ――目標地点へのプレイヤーの到達及び、被験体の全滅を確認。

 ミッションコンプリート。 
 リザルトと残存プレイヤーの総合評価開始――完了。
 総合評価による報酬額の計算――完了。

 個人評価の詳細は別ファイルにて記載。 
 記憶の改竄作業、差し替え用のデータをロード――実行中。
 
 被験体の適正値からのボランティア職員としての徴用及び処分作業――停止。 
 上位権限による割り込みを確認。
 チーフ、ミツォノロプロフによる提案――『フォーマット』、『インストール』後の時間経過による技能向上、社会性の変化に対する検証。 

 審議中――完了。 提案を限定的に受諾、各タスク一名のみ適応。
 検証の為、要観察対象はユニオンへ誘導。
 記憶の改竄内容の変更作業を開始――完了。 整合性のチェック――完了。
 タスク終了。 お疲れさまでした。 


 ――何も起こらないな。 
 
 ヨシナリはイワモト、まんまると周囲を警戒していたが何も起こらない。
 目標地点は足元。 これはどうすればいいのだろうか?
 そんな事を考えるとウインドウがポップアップ。 

 内容は「イベント終了。 お疲れ様でした」とだけ記されている。

 「何だこりゃ?」

 思わず呟くと同時に首を傾げるとぐにゃりと空間が歪む。 
 視覚の大きな乱れによって大きくバランスが崩れる。 
 倒れると思った瞬間、意識がぷっつりと途切れた。


 「――あれ?」

 気が付いたらヨシナリはユニオンホームに居て、パイプ椅子に座っていた。
 
 「えっと、何だったかな?」

 一瞬前までの事が思い出せない。 
 自分が何故パイプ椅子に座っているのかが理解できなかった。 ヨシナリは記憶を手繰る。 
 確かイベント戦に出て、まんまるとホーコートって奴と組んで三対三を三回戦ってその後に妙なステージに出て――妙なステージ? どう妙だったか――

 「先輩!」

 不意に声をかけられる。 何だと顔を上げるとそこには初期状態のアバターが居た。
 同年代の男の声。 誰だっけこいつ? 記憶を探ると一気に記憶が蘇る。
 そうだ。 ホーコートだ。 イベント戦を一緒に戦った奴だった。

 なんで忘れてたんだ? 立ち眩み? ゲーム内でもこんな事ってあるんだなぁ。

 「へへ、イベントお疲れっす先輩。 で? どっすかね? 俺は合格っすか?」

 ホーコートは少し得意げにそんな事を言う。 合格?
 あー、段々と思い出してきた。 ヨシナリが思い返すと芋づる式に記憶が脳裏に瞬く。
 そう、ホーコートは星座盤の活躍を見て、いきなり憧れているんですと言い出したんだ。

 どうも少数にもかかわらずイベント戦で大手ユニオンを出し抜いて反応炉を破壊した事が琴線に触れたらしく、自分もあんな感じで活躍したいらしい。

 ――で、いきなり俺もユニオンに入れてくれって言いだしたんだったな。 

 やる気はありそうだったのでお試し期間を設けさせてくれと提案しイベント戦を戦ったのだ。
 ホーコートは動きに荒さはあるが、しっかりと戦ってくれた。
 動きに関してはランク相応といった所だが、使い方次第だろう。 何よりもこちらの指示をよく聞いてくれたのは評価できる点だった。

 三戦を通しで見た感想としては大丈夫だろうとヨシナリは判断。
 不和を撒くタイプにも見えないのでそういった面でも問題ないだろう。

 「分かった。 一応、俺の一存では決められないから他のメンバーに紹介した後に最終的な判断をする事になるけど俺は君を推す事にするよ」
 「マジっすか!? あざっす先輩! 推されたからには役に立って見せますぜ!」

 ヨシナリは苦笑しつつ、ユニオンメンバーのステータスを確認。
 マルメル、シニフィエはトレーニングルームで模擬戦中。 
 ふわわ、グロウモスはイベント戦が終わっていない。 見れるかなと確認するとイベント戦は観戦不可能らしく弾かれた。 マルメル達は一段落ついている感じだったので声をかけても良さそうだ。

 「マルメル。 悪いんだけど、ちょっと戻ってきてくれるか? 話したい事がある」
 『お、イベント終わったのか? お疲れー、シニフィエと一緒だけどどうする?』
 「一緒に来てくれ。 新メンバー候補の紹介をしたい」
 『マジかよ!? 行く行く!』

 即座に戻って来た。 

 「おー! ウチに入りたいって!? いやぁ、お目が高い!」

 マルメルがホーコートを見て喜びの声を上げる。 当人は大きく頷いて応えた。

 「どもホーコートでっす! 星座盤の活躍見てここは将来的に伸びるって思って今の内にいい席取ろうと参加希望してまっす! よろしくおなしゃす!」
 「お、なんか元気のいい奴だな! 俺はマルメルだ。 よろしくな!」
 「シニフィエです。 どうも」

 マルメルは新メンバーに好意的でシニフィエは反応に困っているのかやや事務的だ。
 
 「どっから連れて来たんだ?」
 「イベント戦だよ。 一緒に組んだ」
 「あー、チームメンバーかぁ。 どっち?」
 「へへ、直ぐに沈んだ方です」
 
 それを聞いてマルメルは納得したかのように頷いた。 
  
 「あー、顔出して撃たれた奴かぁ。 運がなかったなぁ」
 「いやぁ、恥ずかしい所を見られちまいましたねぇ」

 ホーコートはへへへと笑う。 
 何故か一瞬、気を悪くするんじゃないかと思ったが、ホーコートは失敗しちまいましたと気にしている様子はない。 

 「――取り敢えず、ふわわさんとグロウモスさんが戻ったら紹介するつもりだけど、二人はどう思う?」 
 「ヨシナリはいいと思ってるんだろ? だったら俺としては言う事はないな。 まぁ、どんな感じなのか腕は見せて欲しいから後でトレーニングルーム行こうぜ!」
 「私も新参者なので特に意見はありません。 マルメルさんと同じで腕を見ておきたいぐらいです」

 それを聞いてホーコートはやる気を出したのか拳を握って見せる。

 「よし、だったら模擬戦をやりましょう。 Ⅰ型の時はあんまりいい所を見せられなかったので、ここらでちょっと俺の実力をお見せしますよ!」

 ヨシナリはいい機会だと思ったのでやろうと思ったのだが、ヨシナリとマルメルでは機体のスペック的に釣り合いが取れないので、選択肢はシニフィエになるのだが彼女はほぼ初期装備のⅠ型なので釣り合わない。
 
 ――どうしたものか。

 ちょっと考えたが、案は一つしか思いつかなかった。

 「悪いんだけどシニフィエ、お願いしてもいいかな?」
 「お義兄さんの頼みなら喜んで!」

 即答。 どこまで本気か分からないが、やる気はありそうなので問題はないだろう。

 「なら、俺のⅡ型のパーツを貸すから使ってくれ」
 「え!? やだ、お義兄さん姉だけでなく私も狙ってるんですか!?」

 シニフィエが驚いたように仰け反る。

 「要らないならⅠ型でやる?」
 「やだなぁ、冗談ですよ。 ありがたくお借りします」
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