Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第370話

 「えっとホーコートさんでしたね。 よろしく」
 「よろしく!」
 「――うーん?」

 準備を済ませた二人は声をかけ合うが、ホーコートの態度にシニフィエは何故か首を傾げて移動。 
 僅かに遅れてホーコートもトレーニングルームへと移動した。

 「なぁ、ヨシナリ。 どっちが勝つと思う?」
 「何とも言えないな。 シニフィエはⅡ型に慣れてないし、ホーコートは本来の機体で戦うの初めて見るから判断材料が足りない」

 フィールドはいつもの市街地。 フィールドに二機のトルーパーが出現する。
 片方はシニフィエの機体。 両肩に大型のブースターと各所に内蔵されたスラスターが少し目立つ以外はオーソドックスな機体構成だ。 武装は両方の拳にナックルダスター、腰にスタンロッドとダガー、腕や足が膨らんでいるので何か仕込んでいるようだが、今の所は何とも言えない。

 「あれ? 飛び道具は無しか」
 「まぁ、ふわわさんの妹だし、格闘戦が主体でいくのかな?」 
 
 対するホーコートは――機体を見てヨシナリは思わず眉を顰めた。
 Ⅱ型ではなくソルジャー+だったからだ。 Gランクで+フレーム?
 早いなと思いながらも機体のパーツ構成を見る。 装甲は少し盛っている様で、やや重厚な印象を受けるが背中に付いている二機のエネルギーウイングが目を引く。

 武装はロングマガジンの突撃銃と散弾銃。 
 邪魔にならないように両肩のハードポイントに吊ってある。 腰には大振りのマチェットが刺さっており、腰裏には自動拳銃。 派手さはないがバランスも良く、武装も一通り揃っている印象だが、果たしてエネルギーウイングを使いこなせるのだろうか?

 入手経路は気になるが、使いこなせるかのお手並み拝見と行こう。

 「お、始まるみたいだぞ」

 マルメルが可視化したウインドウを注視、ヨシナリが視線を向けると試合が開始された。
 開始と同時にホーコートはエネルギーウイングを全開にして一気にフィールドを横断。
 即座にシニフィエへと肉薄。 接近を察知したシニフィエは即座に建物を縫うように移動する。

 直線的な動きをさせない為の立ち回り。 
 エネルギーウイングの特性をある程度理解していないとできない動きだ。
 だからと言ってそれで制限できるのかは少し怪しい。 何故ならあの装備を一定以上使いこなしているプレイヤーは障害物が密集した場所であってもその機動性を発揮する事ができる。

 果たしてホーコートは装備を使いこなせているのか――
 
 「うわ、マジかよ。 ちゃんとエネルギーウイング使いこなしてるなぁ」

 マルメルが思わず呟く。 これにはヨシナリも少し驚いた。
 ホーコートは急加速でシニフィエの真上まで移動し、急停止。 同時に散弾銃を撃ち込む。
 シニフィエは凄まじい反応で回避。 近くのビルの陰に身を隠す。

 ――何だあの戦い方は?

 明らかにエネルギーウイングを使いこなしているが、挙動に違和感を感じる。
 固さと言うよりは、変に嵌まった型と言うかどこかで見たような――
 
 「おいおい、これシニフィエの奴、やばいんじゃねぇか?」
 「確かにかなり厳しいな」

 シニフィエはどうにか接近したいのだろうが、相手がエネルギーウイング装備なので近寄れない。
 だからと言って諦めている様子はない。 逃げ回りながら相手の動きをじっと観察している。 

 ホーコートは上手くシニフィエの回避先に先回りして、彼女から選択肢を奪うような立ち回りを意識しているようだ。 

 ――機動性に差がありすぎるな。

 ヨシナリはホーコートに対して何故か違和感しか感じなかった。
 上位のフレームに不自然に高い技量。 

 ――不自然に高い技量?

 不意に思考が着地した。 そうだ。
 何がおかしいのかと思っていたが、ホーコートの動きは最適化されているのだ。
 基本的にトルーパーはプレイヤーのプレイスタイルに合わせてパーツの組み換えなどを行い、独自の進化を続ける。 その為、乗り手に合わせてその姿を変えていく。

 ヨシナリのホロスコープもマルメルのアウグストもそうだ。
 だが、ホーコートの機体から感じる印象は全くの逆だった。 
 まるでホーコート自身が機体に合わせて最適化されていると感じていたのだ。

 エネルギーウイングの使い方、間合いの取り方、攻撃のタイミング。
 その全てが機体の性能を引き出す為に作られたように見えるのだ。
 
 「うは、あのランクでエネルギーウイングをあそこまで使えるのって凄げぇな。 でも、なんか違和感があるなぁ……」

 マルメルは何だろうと首を捻る。
 ヨシナリは内心で良い着眼点だと相棒の観察眼を褒めていた。
 実際、ホーコートの動きは洗練されてはいたが、繋ぎに違和感がある。

 シニフィエが躱しきれずに大通りに飛び出すとホーコートがそれを追う。
 散弾銃を構えて発射。 シニフィエは背のブースターを全開で噴かして上空へ逃れて躱す。
 
 「合理性と言うよりも最適化? こうして見るとだんだん見えてくるな」
 「何が?」
 「動きのパターン」

 見ながらヨシナリはホーコートの動きを注視。 
 癖ではなくパターンと形容したのは無意識だったが、外していないと何となく思っていた。
 まだ飛行に慣れていないシニフィエは空中戦は不利と判断したのか、即座に降下。

 ビルの隙間へ入る。 同時にホーコートが突撃銃を連射。
 
 「次はエネルギーウイングの推進力を利用して先回りかな」

 ヨシナリがそう呟くとホーコートが退路を潰しに先回り。 

 「回避が難しい難しいタイミングで散弾銃」 

 ホーコートが即座に散弾銃を構える。 
 ヨシナリの呟きを聞いていたマルメルが驚いたかのように僅かに仰け反った。

 「おいおい、予知にでも目覚めたのか?」
 「似たような物かもな。 そろそろ仕留めに行くぞ。 さっきのでシニフィエが空中戦に慣れてないって判断したからエネルギーウイングの旋回性能を活かして至近距離で散弾銃だな」
 「いや、マジで? シニフィエが上に逃げない可能性は――」
 「多分、シニフィエも理解してると思う。 だからこそ上に逃げる」

 ヨシナリがそう言ったと同時にシニフィエが急上昇。
 ホーコートはそれを追う。 流れとしては突撃銃で回避コースを制限してエネルギーウイングで瞬間加速し、死角に回ってとどめだ。 
 
 「仕掛けるならそこだな」

 ホーコートは突撃銃をばら撒くように連射し、降下させないように下から追い立てる。
 シニフィエは上昇せざるを得ない。 そのまま近くの雲に入る。
 
 ――ここだ。
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