Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第372話

 「はい、という訳で。 新しく入ったホーコート君です。 仲良くしてあげてください」
 「ホーコートっす。 よろしくおなしゃす!」

 メンバーはパチパチと拍手する。 
 気になる点は多いが、ヨシナリとしてもホーコートの参加はありがたかったからだ。
 シニフィエは前衛、ホーコートは中衛なのでそれぞれふわわ、マルメルと組ませる事で安定感が増すだろう。 シニフィエに関してはあまり心配していないが、機体のスペック差で置いて行かれる事もあったⅡ型のパーツはそのまま譲渡という形になった。

 後は二人がこのユニオンの空気に合うかだが、こればかりは様子を見ないと何とも言えない。
 ヨシナリとしてはそろそろ摩擦が生まれそうな人数だなと思っているのでなるべく人間関係には気を配ろうと意識していた。 

 「で、リーダー。 面子も増えたし、今後の方針的なものを頼むぜ!」
 
 マルメルがそんな事を言い出したのでヨシナリは少し考える。

 「取り敢えずはランク戦をやりつつユニオン間の連携を磨いていこうかと思う。 特にシニフィエとホーコートは入ったばかりだから安定して機能するまで少し練習をしておきたい感じかな。 次のイベントのアナウンスはまだなんで時間はあるから少し大き目の所と模擬戦を組みたいと思ってる」
 「先輩! 練習って具体的に何をするんすか?」
 「あー、新入り二人は連携を磨く事になるんだけど、シニフィエはふわわさんに任せるとして、お前は後でちょっとトレーニングルームに来てくれ。 動きを見たい」
 「うっす、了解です」
 
 ホーコートはやる気満々のようで即座に立ち上がる。 
 やるならさっさと始めようと言わんばかりだ。 そう言う事なら今すぐ始めよう。
 
 「じゃあウチは妹をしごけばええんやね?」
 「えー、まぁいいですけど。 指導は具体的にお願いしますよ?」
 
 空気を読んだのかふわわがシニフィエを掴んで立ち上がる。
 
 「なぁ、ヨシナリ。 俺とグロウモスは何かやる事あるか?」
 「あぁ、マルメルは俺と、グロウモスさんはふわわさんについて貰っていいですか?」

 シニフィエは明らかに飛び道具に対する対応力に欠けていた。 
 彼女に必要なのは場数だろう。 状況に対する対応力は高いので連携に関してはあまり心配していなかった。

 ――問題はこっちだな。

 「取り敢えず移動しようか?」

 ホーコート達を伴ってトレーニングルームへ移動。 
 フィールドにヨシナリのトルーパーが出現。 続いてマルメル、ホーコートの機体が現れた。
 ヨシナリは改めてホーコートの機体を観察する。 ソルジャー+にエネルギーウイング装備。

 ジェネレーターやコンデンサーもかなり良い物を使っている。 
 
 ――どうやってこの機体を手に入れたんだ?

 そんな疑問が喉まで上がって来たが、これまでの反応からヨシナリの求めている答えが返ってくる可能性は低い。 
 本音を言えば気にはなるが、今考えるべきはホーコートという戦力を最大限活かす方法。
 
 「マルメル。 取り敢えず、お前は見てるだけでいい」
 「あぁ、何かあるのは察してるからお前に任せるよ」

 ヨシナリさてとホーコートを振り返る。

 「まずは自覚してないっぽいからそこから始めよう」
 「自覚っすか? 何の?」
 「まずは俺が攻撃を仕掛けるからそれを躱して見せてくれ」
 「はぁ、分かりました」 

 ホーコートは何を目的としているか理解していないが何をやるべきかは分かっているようで、そのままエネルギーウイングを噴かして上昇。

 「俺が合図したら開始なー!」
 「うーっす」

 ヨシナリはアシンメトリーを構えた後、ホーコートに合図を送った。
 

 ホーコートの機体の胴体に吸い込まれるようにエネルギー弾が命中し、機体が爆散した。

 「だぁ、クソ! またやられた!」

 これで十回目だ。 一回目は二分。 二回目は一分三十秒。
 三回目は一分二十秒。 四回目以降五秒から三秒単位で徐々に削れて行き、十回目はもう一分もかからなくなった。

 「おいおい、これマジか?」

 後ろで見ていたマルメルが思わずといった様子で呟く。
 録画もしていたので教材は充分だと判断したヨシナリは戻ろうと二人を促してホームへ。
 二人を椅子に座らせた後、ウインドウを可視化させてさっきの様子を映す。

 「――さて、ホーコート。 何であんなにあっさり落とされたと思う?」
 
 最後は捉えるまで四十秒切っていた。
 ヨシナリの質問にホーコートは首を傾げる。

 「いや、分かんねっす。 躱したつもりなんスけど、気が付いたら落とされてました」
 「……マルメル。 お前はどうだ?」
 「いや、これ映像見直しゃ一目瞭然だぞ。 だってお前、躱す時の挙動が全く同じじゃねぇか」
 
 マルメルはほらこれと言いながら映像の一部を再生する。
 ヨシナリの狙撃に対してホーコートはエネルギーウイングを噴かして右に旋回して回避。
 そのモーション自体は問題はない。 問題は同じ方向から来る類似した攻撃に対して全く同じ挙動で回避するのだ。 そこを見切れたならヨシナリからすればホーコートは微妙に動く的でしかなかった。

 二連射。 ホーコートは右に回避し、回避先に跳んできたエネルギー弾の直撃を喰らって大破。
 これの繰り返しだ。 驚くべき事に十回やって七回がこのパターンで撃墜されている。
 結果と過程を一通り見てしまえばマルメルでなくても震えてしまうだろう。

 「ここは俺が言うよりもほぼ初見のマルメルの意見の方が参考になるかもな。 マルメル、感想を頼む」
 「一つ一つの動きは良いのにバリエーションが極端に少ないから、動きを見切られた時点で終わる」

 実に分かり易く的確な回答だった。 

 「確か雰囲気でやってるだったかな?」
 「そっす」

 さっきまでの会話の意味を理解しているのかいないのか即答。
 ヨシナリは内心で頭を抱えたくなったが、努めて表に出さない。

 「うん。 それを止める所から始めようか」
 「あー? どういう事ですか?」
 「考えろとまでは言わないけど、自分がどう動くのかを意識した方がいい」
 「すんません。 意味分かんないです」
 「まぁ、やってみた方が早い。 もっかい移動するぞ」

 ヨシナリの想像が正しければ使い物になるまで時間がかかりそうだった。
 そのまま再度、トレーニングルームへ。 ホーコートに指示を出して訓練開始。

 「ゆっくりでいい。 思考してから動くんだ」
 「うっす。 やってみます」

 ヨシナリは装備を弾速の遅いロケットランチャーに変えて上空のホーコートを狙う。
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