Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第381話

 ――こんなの無理だ。

 ホーコートは既に追いつめられていた。
 敵はエンジェルタイプ。 それも上位機種のアークエンジェルだ。
 自分の機体はカスタムしているとはいえ、ソルジャータイプ。
 
 地力の時点で勝負にならない。 敵の突撃銃の連射を右旋回で回避。
 先輩――ヨシナリからは得意な挙動はギリギリまで使うなと言われていたが、早々にそんな余裕はなくなってしまった。 左に躱していたら間違いなくやられてしまう。

 あの敵に対抗する為には得意な挙動によるコンビネーションしかない。
 右旋回からの上移動からの散弾銃。 それで決める。
 敵機が急加速。 

 ――ここだ。 
 
 ホーコートは右旋回で回避――先に既に敵がいた。 

 「――っ!?」

 動こうとするが想定外の動きに思考が真っ白になる。
 それが致命的だった。 敵機がエネルギーブレードを抜いて一閃。
 ホーコートはそのまま両断されて脱落となった。


 バレルロールでの回避からインメルマンターン。
 ヨシナリはタヂカラオの放つリング状のエネルギー弾を回避しながら敵機の分析を続けていた。
 まず攻撃手段。 手足のリングがジェネレーターと兵装を兼ねた代物であるらしく、発光と同時に射撃。 タイムラグはコンマ数秒なのでほぼノータイムだ。

 見た目に依らずにかなりの連射が利く。 機体本体と手足に巻き付いた格三つ――十二のリングで動力を賄っているらしく、エネルギー流動を見れば発生源が複数である事がよく分かる。
 次にリングについてだ。 エネルギー弾を発射する事も可能ではあるだろうが絶えず流動させる事も可能のようなので恐らくはブレードも展開可能だろう。
 
 変形しながらアトルムを抜いてバースト射撃。 タヂカラオの機体は無駄なく躱す。
 妙にすっきりとしたデザインなのは目立った推進装置が存在しないからだろう。 
 ならどうやって飛んでいるのかと言うとあのリングだ。 恐らくは前回の侵攻イベントの敵性トルーパーと同様に重力に干渉して推力を得るタイプの装備だろう。
 
 その為、足のリングは常にエネルギーを放出し続けている。
 通常飛行には一つ、加速の際は二つ、急旋回等のエネルギーウイングに似た使い方をするときは三つを使用。 エネルギーウイングとの違いは噴かす必要がないので加速と減速のタイミングが掴み辛い点だ。 シックスセンスがあるのでヨシナリはどうにか対応できているが、あの挙動を初見で見切れるのはふわわぐらいのものだろう。 

 次にエネルギー弾について。 
 リング状で微妙に誘導性能があるようで飛んでくる際に僅かに軌道を変えた。
 正直、誤差レベルではあるが、ギリギリの場面ではかなり効いてくるので余裕をもって躱す必要がある。 次に性質だが、広がりながら飛ぶので下がる躱し方はNGだ。

 広がり切る前に前に出る形での回避がベスト。 
 わざわざ前に出るのではなく、リング状なのだから輪を潜ればいのではないかと思うが、それは罠だ。 恐らくだがあの輪を潜れば何らかの悪影響が機体に及ぼされる。

 ――それでなくても潜れと言わんばかりの形状だからなぁ……。

 バースト射撃は命中した際の破壊力が跳ね上がる分、弾丸の消耗が激しい。
 ロングマガジンを使用しているが、直ぐに弾が切れる。
 タヂカラオが反撃に入る前にクルックスを抜いて更に射撃。 回避に入ったと同時にマガジンを遠隔排出し、予備を射出しレーザー誘導でリロード。 

 アシンメトリーではなくアトルムとクルックスで対応してるのは相手の動きが速く、下手に長物を使うと隙を晒してしまいかねないからだ。 
 流石はジェネシスフレーム。 可能な限りのスペックアップを図ったホロスコープでも性能差は顕著だ。 正直、かなり厳しいと言わざる得なかった。

 機動性、旋回性能はエンジェルタイプと同等以上。 
 総合的な機動性に関しては上回っているとさえ言える。
 加えてタヂカラオ自体の技量も高いので中々、攻められない。 
 
 一通り見たので次は検証だ。 
 タヂカラオのリングは発射前に発光するので、タイミングは比較的ではあるが取り易い。
 一つ光れば単発、二つ光れば高威力の単発か連射。 三つはまだ見ていないが、恐らくは大出力の光線だろう。 

 機体側で操作を行い、アトルムとクルックスの発射弾を実弾からエネルギーに切り替える。
 タヂカラオのリングが発光。 タイミング的に連射だ。
 来た。 左右、五連射の合計十発。 迎え撃つべく、単発に切り替えて連射しつつ回避運動。

 ヨシナリの撃ち込んだエネルギー弾はタヂカラオの放ったリングに命中する。
 相殺はできず、ヨシナリの放ったエネルギー弾はリングを僅かに欠けさせただけだった。

 「――なるほど」

 小さく呟く。 僅かながら突破口が見えたからだ。
 後はどうにかチャンスを作る必要がある。 タヂカラオの連射を変形して回避。
 ホロスコープのスペックを把握し始めているのか、徐々に躱し辛くなってきた。

 ――露骨に嫌な位置に連射してくるな。 
 直線的な動きをすれば回避先を狙って来る上、下手に距離を取るとリングが広がるので回避が困難になる。 
 ヨシナリがタヂカラオを分析しているようにタヂカラオもヨシナリを分析しているようで、そろそろ逃げ切るのが難しくなってきた。 もっと余裕があるのならマルメル達の決着を待ちたい所だが、それは許してくれなさそうだ。 博打になりそうだが、勝ち目はある。

 ――一発勝負だ。 

 ヨシナリは決着を着けるべく機体を加速させた。 
 
  
 勝てる。 タヂカラオは勝利をほぼ確信していた。
 確かにヨシナリは優れたプレイヤーだ。 あのランクでキマイラ+を扱っている事も驚きではあるが、機体のポテンシャルをあそこまで引き出す事は素直に評価に値する。
 
 彼の動きを切り取って見れば突出している点は見当たらない。
 ――にも関わらず、タヂカラオの機体――『トガクシ』と対峙してここまで生き残っているのは何故か? 

 それは動きの連結にある。 攻撃からの回避、回避からの攻撃。
 動作に入る際の出が恐ろしく早い。 恐らくだが、膨大な戦闘機動を無意識に行えるレベルまで反復練習を行って体に染み込ませているのだろう。

 勤勉。 ヨシナリというプレイヤーを一言で表すならこれだろう。
 センスはある。 人を動かすのも上手い。 それ以上に努力を苦としない事が最大の強みと言える。
 タヂカラオはこういった人種が一番厄介だと思っていた。 
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