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第382話
どんな物にも簡単にこなせてしまう天才という人種は存在する。
それはこのゲームでも例外ではなく、タヂカラオの認識ではラーガストなどがそれに該当すると思っていた。 Sランクプレイヤーは文字通り次元が違う。
その為、タヂカラオには彼等の事は分からなかったが、感覚でやれてしまう者に共通する事があった。
ムラがある事だ。 個々人によって振れ幅があるが、才能に頼っている者は何故、自分が上手くできるかを理解していないケースが多々ある。 そういった者はちょっとした事で調子を大きく崩すのだ。
タヂカラオはその手のプレイヤーを何人も見てきた事もあって的は射ていると思っていた。
だからこそ付け入る隙はあると思っていたが、逆に時間をかけて基礎から積んでいた者にはそれがないとは言わないが、彼等は自分が何故、それができるのかを深く理解しているので常に安定したパフォーマンスを発揮する。 彼がヨシナリを警戒し、傘下に収めたいと思った最も大きな理由だった。
恐らくはタカミムスビも似たような事を考えているのだろう。
こうして撃ち合えば撃ち合うだけ、あのイベント戦での敗北がまぐれではないと分かる。
屈辱を感じているのは事実だが、それ以上にタヂカラオはヨシナリを高く評価していた。
武器の差を理解して隙を作らない為に拳銃に切り替えた判断も上手い。
それとリングを決して潜らない点からも慎重な性格である事が窺える。
トガクシの唯一の武装にして推進装置「サンゼンボウ」の特性にも気が付いていると見ていい。
手足に装着されている三つでワンセットの特殊リングだ。 それが四セット、十二個装備されている。
超小型のジェネレーターを内蔵しており、動力の一つとして機能するだけでなく、エネルギーリングの発生装置でありながら重力制御装置でもある。 トガクシが飛行できている理由でもあった。
三つのリングを用いる事で細かな出力調整を行えるので、見た目以上に攻撃範囲が広い。
この攻撃の目玉はリングの内側にある。 エネルギーリングの内側には重力異常が発生しており、潜った機体は変化した重力によって飛行に悪影響を及ぼす。 何度か検証を行ったが、大抵の機体は真っ直ぐ飛べなくなるので、大きな隙を晒す事となるのだ。
潜らせる事に成功すれば勝ちは決まったようなものだが、ヨシナリは察しているのか上手く躱す。
エネルギーリングは飛距離に応じて広がる仕様なので、距離を取ると自然と潜って躱すようになっているのだが近すぎず遠すぎずの距離を維持して潜らずに抜ける。
最初は警戒していると疑っていたが、この様子だと完全に理解しているとみて間違いない。
――同時に自分がそろそろ詰むという事も、だ。
タヂカラオはヨシナリの事を非常に高く評価したが、その上で勝てると確信した。
確かにホロスコープはキマイラのプラスフレームに最高級のパーツを惜しみなくつぎ込み、性能を可能な限り向上させている。 スペックだけで見るならジェネシスフレームと戦えるレベルだろう。
だが、それは勝負として成立するレベルであって、圧倒できる程ではない。
これまでの攻防でホロスコープの推進力、ヨシナリの回避の癖は一通り見た。
そしてヨシナリもタヂカラオの技量とトガクシの性能を見ているはずだ。
ならば性能の差は歴然。 最終的には長期戦は不利と判断するはずだ。
つまりそろそろ勝負に出る。 トガクシは腕に付いているリング――サンゼンボウにより攻守共に隙の無い機体だ。 それをどうにか突破しようとするはず。
リングを潜らずに躱す関係で距離を取れない以上、選択肢は接近戦。
可変して掻い潜る? それとも――リングの弱点を突くか?
ヨシナリを料理する算段は整っている。 どちらを選択したとしてもなんの問題もない。
エネルギーリングをばら撒くように連射。 同時に仕込みを行う。
――さぁ、餌は撒いたぞ。 喰らいつけ。
タヂカラオはアバターの向こうで僅かに目を細める。
ヨシナリは戦闘機形態へと変形し、直線加速とバレルロールの組み合わせでリングを躱しながら突っ込んで来た。 だが、そのやり方では全てを躱す事は不可能。
ならばどうするか?
ヨシナリは戦闘機形態の状態で背面に積んだ大型の複合銃でエネルギー弾を発射。
リングに当てて一部を欠けさせ、そのまま輪の中へ飛び込む。
――やはり気が付いていたか。
エネルギーリングには弱点がある。
リング内に潜った機体の周囲に重力異常を起こさせる力場を発生させるのだが、欠けると維持できなくなるのでリングの形状を崩せば無傷ですり抜けられるのだ。
ギリギリまで回避し、直撃するリングだけを正確に撃ち抜く技量は流石だった。
そのまま一気に肉薄。 直線加速に限るのならキマイラ+はジェネシスフレームと同等以上の性能を発揮する。 機体が通れるギリギリの大きさを見極め、弾幕を突き抜けた。
そのまま攻撃に入る為に変形。
合わせてタヂカラオはリングを回転させエネルギーによって円錐状の槍を形成し刺突を繰り出す。
ヨシナリは紙一重で回避。 反対側の腕にも同様に槍を形成してもう一突き。
今度は機体を横に傾けて躱しながら、推力偏向ノズルを噴かして蹴りによるカウンター。
上手い。 回避と攻撃を同時に行っている。
――だが、想定内だ。
ヨシナリは気付いているだろうか? トガクシのリングが減っている事に。
左右の腕に一つずつ。 さて、それは何処に行ったのだろうか?
答えはヨシナリの真下だ。 サンゼンボウは武装と推進装置を兼ねた武装。
推進装置である以上、単独で自立飛行が可能。 そして遠隔で操作できる機能も内蔵している。
つまり、攻撃ドローンとして扱う事が可能なのだ。 蹴りを繰り出した事により、回避はまず不可能。 恐らくヨシナリは気付いているが、リングの攻撃範囲から殴り合いの距離なら撃ち難いとでも思ったのだろう。
だが、ここでリングしか使っていなかった事が活きる。
全体を発光させる事でリング状のエネルギー弾だが、一部のみを機能させる事で精密な射撃も可能なのだ。 これで終わり――不意にリングが撃ち抜かれて砕け散る。
――は??
何故だと地上に意識を向けると一機のトルーパーが大型の狙撃銃をこちらに向けていた。
撃ち落とした? 二基のリングだけを? 正確に?
それにより僅かに思考に空白ができるが、タヂカラオはAランカー。
Sを除けばこのゲームの最高峰。 立て直すのも早かった。
ヨシナリの蹴りを迎撃する為に彼も蹴りを放ち、両者の足が交差し――
それはこのゲームでも例外ではなく、タヂカラオの認識ではラーガストなどがそれに該当すると思っていた。 Sランクプレイヤーは文字通り次元が違う。
その為、タヂカラオには彼等の事は分からなかったが、感覚でやれてしまう者に共通する事があった。
ムラがある事だ。 個々人によって振れ幅があるが、才能に頼っている者は何故、自分が上手くできるかを理解していないケースが多々ある。 そういった者はちょっとした事で調子を大きく崩すのだ。
タヂカラオはその手のプレイヤーを何人も見てきた事もあって的は射ていると思っていた。
だからこそ付け入る隙はあると思っていたが、逆に時間をかけて基礎から積んでいた者にはそれがないとは言わないが、彼等は自分が何故、それができるのかを深く理解しているので常に安定したパフォーマンスを発揮する。 彼がヨシナリを警戒し、傘下に収めたいと思った最も大きな理由だった。
恐らくはタカミムスビも似たような事を考えているのだろう。
こうして撃ち合えば撃ち合うだけ、あのイベント戦での敗北がまぐれではないと分かる。
屈辱を感じているのは事実だが、それ以上にタヂカラオはヨシナリを高く評価していた。
武器の差を理解して隙を作らない為に拳銃に切り替えた判断も上手い。
それとリングを決して潜らない点からも慎重な性格である事が窺える。
トガクシの唯一の武装にして推進装置「サンゼンボウ」の特性にも気が付いていると見ていい。
手足に装着されている三つでワンセットの特殊リングだ。 それが四セット、十二個装備されている。
超小型のジェネレーターを内蔵しており、動力の一つとして機能するだけでなく、エネルギーリングの発生装置でありながら重力制御装置でもある。 トガクシが飛行できている理由でもあった。
三つのリングを用いる事で細かな出力調整を行えるので、見た目以上に攻撃範囲が広い。
この攻撃の目玉はリングの内側にある。 エネルギーリングの内側には重力異常が発生しており、潜った機体は変化した重力によって飛行に悪影響を及ぼす。 何度か検証を行ったが、大抵の機体は真っ直ぐ飛べなくなるので、大きな隙を晒す事となるのだ。
潜らせる事に成功すれば勝ちは決まったようなものだが、ヨシナリは察しているのか上手く躱す。
エネルギーリングは飛距離に応じて広がる仕様なので、距離を取ると自然と潜って躱すようになっているのだが近すぎず遠すぎずの距離を維持して潜らずに抜ける。
最初は警戒していると疑っていたが、この様子だと完全に理解しているとみて間違いない。
――同時に自分がそろそろ詰むという事も、だ。
タヂカラオはヨシナリの事を非常に高く評価したが、その上で勝てると確信した。
確かにホロスコープはキマイラのプラスフレームに最高級のパーツを惜しみなくつぎ込み、性能を可能な限り向上させている。 スペックだけで見るならジェネシスフレームと戦えるレベルだろう。
だが、それは勝負として成立するレベルであって、圧倒できる程ではない。
これまでの攻防でホロスコープの推進力、ヨシナリの回避の癖は一通り見た。
そしてヨシナリもタヂカラオの技量とトガクシの性能を見ているはずだ。
ならば性能の差は歴然。 最終的には長期戦は不利と判断するはずだ。
つまりそろそろ勝負に出る。 トガクシは腕に付いているリング――サンゼンボウにより攻守共に隙の無い機体だ。 それをどうにか突破しようとするはず。
リングを潜らずに躱す関係で距離を取れない以上、選択肢は接近戦。
可変して掻い潜る? それとも――リングの弱点を突くか?
ヨシナリを料理する算段は整っている。 どちらを選択したとしてもなんの問題もない。
エネルギーリングをばら撒くように連射。 同時に仕込みを行う。
――さぁ、餌は撒いたぞ。 喰らいつけ。
タヂカラオはアバターの向こうで僅かに目を細める。
ヨシナリは戦闘機形態へと変形し、直線加速とバレルロールの組み合わせでリングを躱しながら突っ込んで来た。 だが、そのやり方では全てを躱す事は不可能。
ならばどうするか?
ヨシナリは戦闘機形態の状態で背面に積んだ大型の複合銃でエネルギー弾を発射。
リングに当てて一部を欠けさせ、そのまま輪の中へ飛び込む。
――やはり気が付いていたか。
エネルギーリングには弱点がある。
リング内に潜った機体の周囲に重力異常を起こさせる力場を発生させるのだが、欠けると維持できなくなるのでリングの形状を崩せば無傷ですり抜けられるのだ。
ギリギリまで回避し、直撃するリングだけを正確に撃ち抜く技量は流石だった。
そのまま一気に肉薄。 直線加速に限るのならキマイラ+はジェネシスフレームと同等以上の性能を発揮する。 機体が通れるギリギリの大きさを見極め、弾幕を突き抜けた。
そのまま攻撃に入る為に変形。
合わせてタヂカラオはリングを回転させエネルギーによって円錐状の槍を形成し刺突を繰り出す。
ヨシナリは紙一重で回避。 反対側の腕にも同様に槍を形成してもう一突き。
今度は機体を横に傾けて躱しながら、推力偏向ノズルを噴かして蹴りによるカウンター。
上手い。 回避と攻撃を同時に行っている。
――だが、想定内だ。
ヨシナリは気付いているだろうか? トガクシのリングが減っている事に。
左右の腕に一つずつ。 さて、それは何処に行ったのだろうか?
答えはヨシナリの真下だ。 サンゼンボウは武装と推進装置を兼ねた武装。
推進装置である以上、単独で自立飛行が可能。 そして遠隔で操作できる機能も内蔵している。
つまり、攻撃ドローンとして扱う事が可能なのだ。 蹴りを繰り出した事により、回避はまず不可能。 恐らくヨシナリは気付いているが、リングの攻撃範囲から殴り合いの距離なら撃ち難いとでも思ったのだろう。
だが、ここでリングしか使っていなかった事が活きる。
全体を発光させる事でリング状のエネルギー弾だが、一部のみを機能させる事で精密な射撃も可能なのだ。 これで終わり――不意にリングが撃ち抜かれて砕け散る。
――は??
何故だと地上に意識を向けると一機のトルーパーが大型の狙撃銃をこちらに向けていた。
撃ち落とした? 二基のリングだけを? 正確に?
それにより僅かに思考に空白ができるが、タヂカラオはAランカー。
Sを除けばこのゲームの最高峰。 立て直すのも早かった。
ヨシナリの蹴りを迎撃する為に彼も蹴りを放ち、両者の足が交差し――
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